↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
194/470

一撃


 アルトはゆっくりと息を整えた。


(武器じゃない。)


(術でもない。)


(ノアさんを見る。)


 赤い瞳。


 脱力した姿勢。


 細い身体。


 眠たげな表情。


(この人……。)


(全然動いてない。)


 ノアは相変わらず力の抜けた姿勢で立っている。


 だが、その重心だけは一切ぶれていない。


(右足に少しだけ体重が……。)


 アルトは《砕》を構えた。


「行きます!」


 一直線には飛び込まない。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 距離を詰める。


 ノアは動かない。


(まだ。)


 四歩。


 五歩。


 あと一歩。


 その瞬間。


 ノアの右肩が、僅かに動いた。


(来る!)


 アルトは振り下ろしかけた《砕》を止める。


 そのまま身体を回転させ、柄尻をノアの脇腹へ叩き込んだ。


 ゴッ!


 鈍い音が響く。


 ノアの身体が半歩だけ横へ流れた。


 訓練室に静寂が落ちる。


 アルトは目を見開いた。


「……当たった。」


 ノアも、自分の脇腹へ視線を落とす。


 そこには確かに制服へ残る打撃の跡。


「なるほど。」


 静かに呟く。


「初めて、私を見ましたね。」


 アルトは息を切らせながら笑った。


「はい!」


「肩が動いたから!」


「そこから来ると思いました!」


 ノアは数秒、アルトを見つめる。


「正解です。」


 アルトの表情が明るくなる。


「ですが。」


 ノアは人差し指を一本立てた。


「実戦なら。」


 次の瞬間。


 アルトの首筋へ《緋爪》が添えられていた。


「……え?」


 いつ動いたのか。


 全く見えなかった。


 ノアは眠たげなまま、小さくため息をつく。


「一撃当てて、安心しましたねぇ。」


「はい……。」


「戦闘で一番危険なのは、その瞬間です。」


 《緋爪》を下ろす。


「人は成功すると、必ず隙を作る。」


「だから私は待ちました。」


 アルトは悔しそうに頭を掻いた。


「あーっ!」


「やっぱりまだ全然だ!」


 その反応を見たノアは、ほんの僅かに口元を緩める。


(……素直ですね。)


(だから教えやすい。)


 だが、その表情はすぐに消えた。


「では。」


 《緋爪》を構え直す。


「次は私から行きます。」


 赤い瞳が細くなる。


「今度は、防いでみてください。」


 その声を合図に、ノアの姿が再び掻き消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。