勉強会②
医務室を出たログは、大きく一つ伸びをした。
「さて。」
辺りを見回しながら呟く。
「どこでやってんだ?」
隣を歩くヒルトが首を傾げた。
「え?」
「行くの?」
「場所は第三会議室だよ?」
ログは迷うことなく歩き出す。
「行くぞ。」
「えぇ……。」
ヒルトは露骨に嫌そうな顔をした。
「やだよ。」
「ミレイアさんいるもん。」
その言葉に、ログは口元を緩める。
「だから行くんだよ。」
ニヤリと笑うその顔を見て、ヒルトは嫌な予感しかしなかった。
「まさか……。」
「さっきの仕返しだ。」
ログはヒルトの腕を掴むと、そのまま廊下を歩き出す。
「ちょっ!」
「まっ!」
「謝るから!」
「ほんとにいやだぁー!」
ヒルトの悲鳴が兵舎へ響く。
そんな声など気にも留めず、ログは第三会議室の前までやって来た。
「……?」
ログは扉の前で足を止める。
「静かだな。」
部屋の中から話し声は聞こえる。
だが。
アルトの騒がしい声も。
フィリアの腹を抱えて笑う声も聞こえてこない。
その静けさに、ログは少しだけ違和感を覚えた。
一方で。
「いやだ……。」
「いやだいやだいやだ……。」
ヒルトは今にも逃げ出しそうな顔で小さく呟き続けている。
ログはそんなヒルトを横目に、何も言わず扉へ手を掛けた。
ゆっくりと開く。
そこでは、ミレイアが黒板へ文字を書きながら説明を続けていた。
「精霊術の基本構造は――」
黒板には、精霊術の基礎をはじめ、各国の術体系や英霊、星座について、びっしりと書き込まれている。
黒板のすぐ前では、アルトが驚くほど真剣な表情で話を聞いていた。
目を輝かせ、一言も聞き漏らすまいと黒板を見つめている。
一方、アルトから離れた扉の近くの席では、
フィリアが大きな欠伸をしていた。
頬杖をつきながら欠伸をするその姿は、授業に飽きた学生そのものだった。




