勉強会
医務室。
白い天井を見上げながら。
ログはゆっくりと目を開けた。
「……。」
身体を起こそうとする。
全身に少しだけ痛みが残っていた。
「あ?」
その時。
横から声が聞こえる。
「起きた?」
見ると。
椅子に座ったヒルトがいた。
ログは少しだけ目を細める。
「……ヒルトか。」
「うん。」
ヒルトは本を閉じる。
「おはよう。」
「おう……。」
ログは周囲を見渡す。
そして。
少し間を置いて呟いた。
「俺は……負けたのか?」
「うん。」
ヒルトは即答した。
「もう、気持ちいいくらいにね。」
「……。」
ログは少し黙る。
そして。
「そうか。」
苦笑した。
悔しさはある。
だが。
認めるしかない。
あの一撃。
あの動き。
自分は精霊術も使ったのに負けた。
自分の知らない強さだった。
「……。」
ヒルトはそんなログを見ながら、ふと思い出す。
倒れた時のことを。
ログに誰も駆け寄らなかったことを。
「そういえばさ。」
「ん?」
「ログが運ばれる時、誰も動かなかったよ。」
ヒルトは少し首を傾げる。
「見舞いに来たの、僕だけなんだけど。」
ログの眉が動く。
「……。」
「ログって。」
「意外と人望ない?」
「うるせぇ。」
軽く。
ログの手がヒルトの頭へ乗る。
「痛っ。」
「余計なこと言うな。」
「冗談じゃん。」
ヒルトは頭をさする。
でも。
少しだけ笑っていた。
こういうやり取りができるくらいには。
二人の間には長い付き合いがある。
「……。」
ログはふと気づく。
「あいつは。」
「アルトはどこだ。」
ヒルトは答える。
「ああ。」
「今はミーティングルーム。」
「フィリアと、ミレイアさんと一緒。」
「ミレイアさん?」
ログが眉をひそめる。
「精霊研究院の?」
「うん。」
「アルトと?」
「うん。」
ヒルトは頷く。
「なんか、お勉強会みたいになってる。」
「……。」
ログはしばらく黙る。
「お勉強会?」
「そう。」
ヒルトは真顔で答える。
「アルトが騒いで。」
「ミレイアさんが世界のことを教えて。」
「フィリアが横で爆笑してる。」
ログは想像する。
あのアルトが。
精霊について目を輝かせながら話を聞いている姿を。
「……。」
そして。
「なんだそれ。」
小さく呟いた。
戦った相手とは思えない。
けれど。
あの青年なら、あり得る気がした。




