教え甲斐がある!
バルガスは、机へ積み上げた資料を指先で軽く叩いた。
「まずは、何がよく分からねぇんだ?」
アルトは腕を組み、答案を見下ろしながら唸る。
「んー……」
しばらく考えたあと、精霊術史の資料を持ち上げた。
「史学は覚えるしかないから、なんとも言えないけど……」
今度は精霊術学の答案へ目を落とす。
「まず、魔力と魔素と霊素の関わりが、よく分からないです」
「魔素と霊素を交換するのは分かるけど……そもそも、なんでそんなことをするのかとか」
「なるほどな」
バルガスは腕を組み、少しだけ考え込んだ。
「魔力つーのは……そうだな」
近くにあった空のカップを手に取り、アルトの前へ置く。
「器みてぇなもんだな」
「器?」
「ああ、器だ」
続いて、水差しを手に取る。
「そんで、魔素は水だ」
カップへ水を注ぎながら続けた。
「器が大きけりゃ、水もたくさん入るだろ?」
「はい」
「よし。そこまではいいな?」
アルトは素直に頷いた。
バルガスは水差しを置くと、今度は指を一本立てる。
「あと、お前。外で飯食ったら金払うよな?」
「はい」
「魔素は、精霊に必要な栄養みてぇなもんだ」
バルガスは空中へ硬貨を渡すような仕草をする。
「人から魔素をもらった精霊が――ご馳走さん、はいお勘定って感じで、霊素を返してくれる」
「その霊素で人々は生活して、俺ら精霊術師は術を使うわけよ」
アルトは机の上のカップを見つめる。
「魔力っていう器に魔素が入っていて……」
「その魔素を精霊に渡すと、代わりに霊素をくれる」
「そういうことだ」
「なるほど!」
アルトの表情が一気に明るくなった。
先ほどまで何度読んでも理解できなかった文章が、ようやく一本へ繋がったらしい。
バルガスはそんなアルトを見て、口元を大きく吊り上げる。
「……やっぱお前、頭いいな!」
豪快に机を叩いた。
「教え甲斐がある!」




