曲者
◇
謁見室を出た瞬間。
「はぁぁぁぁ……」
アルトは大きく息を吐いた。
全身から一気に力が抜け、壁へ手をつく。
「こ、怖かった……」
「だから姿勢を崩すなと言っただろう」
隣を歩くガオンが、呆れたように眉をひそめる。
「もう国王の前じゃないだろ」
「王城の中だ」
「同じようなもんだ」
「全然違う」
アルトは苦笑しながら顔を上げた。
「でも、合格って言ってたよな」
「ああ」
「俺、認めてもらえたってことかな」
「少なくとも、処罰はしないという意味だろう」
「やった!」
アルトは思わず拳を握る。
その隣で、ガオンは少しだけ視線を落とした。
「私は、一度ルミナスへ戻ることになった」
アルトの笑顔が止まる。
「……そっか」
「ああ」
「父上へ直接説明しなければならん」
「殴られるの?」
「恐らくな」
「痛そうだな」
「他人事だと思っているだろう」
「ちょっとだけ」
「お前な……」
二人は顔を見合わせる。
そして、どちらからともなく笑った。
「でも、また来るんだろ?」
「留学が続けばな」
「じゃあまた飯食おうぜ」
「ああ」
ガオンは小さく頷く。
「約束だ」
アルトも笑って頷いた。
その時。
先ほどのカイゼルの言葉が頭をよぎる。
各隊長のところで揉まれてこい。
「隊長たちに教えてもらえるってことだよな」
「そうだろうな」
「なんか楽しみになってきた!」
ガオンは足を止め、アルトをじっと見る。
「……まぁ、俺の知ったことではないが」
「ここの隊長達は…なんというか…曲者ばかりだ」
「え?」
アルトがその意味を知るのは、少し後のことだった。




