謁見
ガイスト王城。
磨き上げられた白い石畳を、二人の青年が並んで歩いていた。
アルトとガオン。
普段より少しだけきちんとした服装に身を包んだアルトは、周囲を見回しながら小さく息を吐く。
「なんか落ち着かねぇな。」
ガオンは横目でアルトを見る。
「緊張しているのか?」
「少し。」
アルトは素直に頷いた。
「こういう場所、慣れてなくてさ。」
「そうだろうな。」
ガオンは苦笑する。
「王城へ来る機会など、普通はない。」
「だよなぁ。」
二人はそのまま王城の門へと歩みを進める。
門の前には二人の近衛兵。
ガオンの姿を認めると、同時に姿勢を正した。
「ガオン・レオニス王子殿下。」
二人は胸へ拳を当て、深く一礼する。
「お待ちしておりました。」
ガオンは静かに頷いた。
「ああ。」
続いて、衛兵の視線がアルトへ向く。
「アルト。」
「はい。」
「陛下がお待ちだ。」
「案内に従え。」
「はい。」
それだけだった。
ガオンへ向けられた礼も、歓迎の言葉もない。
アルトは特に気にした様子もなく、衛兵の後ろについて歩き出す。
長い廊下を進みながら、ガオンがぽつりと呟いた。
「俺は、怒られるかもしれんな。」
「え?」
「無断でヴォルグへ向かった。」
「技術留学を打ち切られても文句は言えんだろ。」
アルトは少し考え、小さく笑った。
「でも、お前も貢献したろ?」
「結果論だ。」
ガオンは首を横に振る。
「王族は結果だけでは済まされない。」
アルトは黙って前を向く。
しばらく歩いた後、ふっと口を開いた。
「じゃあさ。」
「帰る前に、もう一回飯でも食おうぜ。」
ガオンは思わず足を止めそうになる。
「……お前は。」
「今、その話をするか?」
「だって。」
アルトは照れくさそうに笑う。
「帰っちゃうかもしれないんだろ?」
「だったら、その前に一回くらいさ。」
ガオンは呆れたように息を吐き、口元を緩めた。
「…はっ!」
「本当に、お前という男は。」
その時、先を歩いていた衛兵が立ち止まる。
「こちらです。」
二人の前には、大きな両開きの扉があった。
衛兵は扉を三度叩く。
「陛下。」
「ガオン・レオニス王子殿下、並びにアルトをお連れしました。」
部屋の奥から、明るくよく通る声が返ってくる。
「おー! 入って入って!」
そのあまりにも気さくな声に、アルトは驚き、ガオンは苦笑する。
そして二人は、大きな扉の向こうへ足を踏み入れた。




