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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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もっと強くなります

もちろん。この後はリオネルが照れながらも本音を口にする流れが自然だね。



「なっ……!」


 リオネルの顔が一瞬で赤く染まった。


「あ、あれはですね……!」


 珍しく言葉に詰まる。


「その……。」


 何とか言い訳を探そうとするが、口から出てこない。


 レテはそんな様子を見て、また小さく笑った。


「ふふっ。」


「ごめんなさい。」


「でも、想像したら可笑しくて。」


「アンデッドみたいだったって聞いて……。」


「……。」


 リオネルは恥ずかしそうに目を逸らした。


 しかし。


 目の前で笑うレテを見た瞬間、その羞恥心は少しずつ薄れていく。


(レテ殿が……。)


(笑ってくださっている。)


(私のことを覚えていてくださった。)


(それだけで……。)


 胸の奥が温かく満たされていく。


 リオネルはゆっくりとレテを見つめた。


「……私。」


 静かに息を吸う。


「もっと強くなります。」


 その言葉にレテは笑うのをやめ、真っ直ぐリオネルを見る。


「乗り物酔いにも負けず。」


「レテ殿を守れるような騎士になります。」


 一瞬の静寂。


 そして。


「ふふっ。」


 レテはまた肩を震わせた。


「もう十分強いじゃないですか。」


「それに……。」


 口元を押さえながら続ける。


「乗り物酔いに負けないって……。」


「本当に面白い人ですね。」


 リオネルも思わず笑みを零した。


「お恥ずかしい限りです。」


(私は……。)


(今、なんて幸せなんだろう。)


(この時間が、ずっと続けばいい。)


 そんなことを思いながら、ふと壁の時計へ目を向ける。


 針は九時五十五分を指していた。


「……あっ。」


 リオネルの表情が凍りつく。


「しまった!」


「出発が十時なんです!」


「えぇ!」


 レテも時計を見て慌てて立ち上がる。


「あと五分しかないじゃないですか!」


「リオネルさん、早く行ってください!」


「ですが……。」


 名残惜しそうにレテを見つめる。


 もう少しだけ話していたい。


 そんな気持ちを押し込み、姿勢を正した。


「また参ります。」


「その時は、ぜひスパーナにもお越しください。」


 レテは大きく頷く。


「はい!」


 そして、いたずらっぽく微笑んだ。


「今度は乗り物酔いに気を付けてくださいね。」


「……はい。」


 リオネルは苦笑しながら頭を下げる。


「では、失礼いたします。」


 深く一礼すると、名残惜しそうに病室を後にした。


 廊下へ出たあとも、一度だけ足を止める。


 静かに病室の扉を見つめ、小さく笑った。


「……次は、もっと格好良いところをお見せします。」


 そう呟くと、リオネルはスパーナへ向かう馬車を目指し、足早に歩き出した。

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