霊器に至る
病室には静かな空気が流れる。
レテは花束を抱えたまま、不思議そうに首を傾げた。
「皆さん、どうしたのでしょう?」
「い、いえ。」
リオネルは咳払いを一つする。
「お気になさらず。」
話題を変えるように口を開いた。
「そ、そういえば……。」
「レテ殿の剣、《水凪》がなくなってしまったと聞きましたが……。」
「ああ、それは……。」
レテは右手をゆっくりと前へ差し出した。
淡い水色の霊素が掌へ集まり始める。
光は静かに形を成し、一振りの刀となってレテの手へ収まった。
現れたのは、美しい水色の鞘を持つ一振りの刀。
レテは静かに柄へ手を掛ける。
シュッ――。
ゆっくりと抜き放たれる。
そこには刀身はない。
だが、柄から離れた瞬間、水色の霊素が刃を描くように集まり、美しい刀身が姿を現した。
透き通る水面のように揺らめく刃。
静かな水をそのまま刀へ変えたかのようだった。
「これです。」
レテが軽く振ると、刀身は霧のようにほどけ、鞘へ納めると再び何事もなかったように静かな一振りの刀へ戻る。
リオネルは目を見開いた。
「それは……。」
静かに息を呑み、優しく微笑む。
「霊器に至ったのですね。」
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
レテは照れくさそうに笑った。
「でも、なんで霊器になれたのか、自分でもよく分からないんです。」
「……そうですか。」
リオネルは《水凪》を見つめ、小さく頷いた。
その時。
「それより……。」
レテが急に肩を震わせ始める。
「……?」
口元を押さえながら、くすくすと笑う。
「お話、聞きました。」
「私が気を失ったあと、馬車まで運ばれた時のお話です。」
リオネルは嫌な予感しかしなかった。
「乗り物酔いで、アンデッドみたいになりながらも……。」
レテは思い出したように笑う。
「それでも私たちのところへ来ようとしてくださったそうですね。」
「なっ……!」
リオネルの顔が一瞬で赤く染まった。




