衝突③
二人の拳が何度もぶつかる。
ログの攻撃は鋭い。
速く、重く、正確。
だが。
アルトはそれについてきていた。
周囲の兵士たちは、未だ信じられないという表情で見ている。
ログと互角。
それだけでも異常だった。
その時。
アルトがふと呟く。
「……そろそろ本気出すよ?」
「……は?」
ログが眉をひそめる。
意味を理解する前に。
アルトの姿が消えた。
「――っ!?」
次の瞬間。
目の前。
反応するより早く。
拳が叩き込まれる。
ドンッ!!
衝撃が訓練場に響いた。
ログの身体が浮く。
「……!」
誰も声を出せなかった。
ログが。
吹き飛ばされた。
地面を数度転がり、なんとか止まる。
あのログが。
真正面から。
周囲がざわめく。
「嘘だろ……。」
「ログが吹き飛ばされた……?」
フィリアも。
ヒルトも。
言葉を失っていた。
ログはゆっくりと立ち上がる。
だが。
表情には驚きが浮かんでいた。
今の一撃。
速さも。
重さも。
先ほどまでとは別物だった。
「……。」
ログは距離を取る。
近距離では危険だ。
ならば。
「精霊術で……。」
地面へ手を向ける。
「力を貸せ。」
大地が震える。
土の精霊の力が集まり、巨大な槍が形作られる。
「土槍。」
放たれる。
一直線にアルトへ迫る。
だが。
次の瞬間。
異変が起きた。
土槍が揺れる。
形が崩れる。
そして。
アルトへ届く前に。
砕け散った。
「……。」
ログは動きを止める。
理解できない。
術式は正常だった。
精霊も応えた。
なのに。
なぜ。
その一瞬。
アルトはすでに動いていた。
「……っ!」
ログが顔を上げる。
遅い。
距離が一瞬で消える。
拳が迫る。
ドンッ!!
衝撃。
視界が揺れる。
そして。
ログの意識は途切れた。




