衝突②
訓練場。
いつの間にか、多くの兵士たちが周囲を囲んでいた。
その中心にいるのは二人。
アルト。
そしてログ。
「まさかログとやるとはな。」
「相手、新人だろ?」
「大丈夫なのか?」
兵士たちの間にざわめきが広がる。
理由は単純だった。
ログは、この部隊でも近接戦闘において上位の実力者。
体術だけなら、ガオンに次ぐほどの腕を持っている。
真正面からの殴り合いで、ログとまともに渡り合える者は多くない。
「始まるぞ。」
誰かが呟いた。
次の瞬間。
ログが踏み込む。
速い。
地面を蹴った瞬間には、もうアルトの目の前だった。
拳が迫る。
だが。
アルトは腕を上げた。
ドンッ!
拳と腕がぶつかる。
「……。」
周囲が静まった。
受けた。
避けるのではなく。
ログの一撃を、真正面から受け止めた。
「今の、止めたのか?」
「ログの拳を?」
ざわめきが広がる。
しかし。
驚いているのは周囲だけではなかった。
ログ自身も。
(重い。)
受け止めたアルトの腕に、確かな衝撃が残っている。
だが。
崩れない。
「……なるほど。」
ログが呟く。
その瞬間。
今度はアルトが動いた。
拳が迫る。
ログは反射的に受け流す。
だが。
速い。
無駄がない。
ただ力任せに振っているわけではない。
ログの目が鋭くなる。
(こいつ。)
素人じゃない。
身体能力だけでは説明できない。
戦いの中で身につけた動きだ。
二人の拳が何度もぶつかる。
打撃音が訓練場に響く。
ログの攻撃をアルトがかわす。
アルトの攻撃をログが防ぐ。
互いに一歩も引かない。
「……嘘だろ。」
兵士の一人が呟いた。
「ログとやり合ってる。」
「しかも、押されてない。」
フィリアも驚いた表情で見ていた。
「アルト……。」
レテは黙って見つめる。
昨日、魔物と戦った時もそうだった。
彼の動きには迷いがない。
まるで身体が戦い方を覚えているようだった。
ログが距離を取る。
「お前。」
「一体、どこでそんな動きを覚えた。」
アルトは少し考える。
「さあ?」
そして笑う。
「家族に教わった。」
その答えに。
ログの表情が険しくなる。
理解できない。
だが。
目の前の青年がただの変わった人間ではないことだけは、もう認めざるを得なかった。




