↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
155/479

前へ崩れる

          ◇


 レテは、轟音の響いた方角へ歩を進めていた。


 床を伝う振動は、まだ収まっていない。


 遠くで何かが砕ける音。


 続いて、獣の咆哮にも似た叫び声が施設内へ響き渡る。


 傍らに浮かぶディーネは、今も小さな身体を震わせていた。


「ディーネ……」


 レテは足を止め、胸元へそっと手を添える。


「私の中へ」


 ディーネは一瞬だけ躊躇うようにレテを見つめた。


 だが、再び奥から轟音が響くと、その身体をさらに縮こまらせる。


 やがて淡い水色の光へ変わり、レテの胸元へ吸い込まれていった。


「大丈夫です」


 自分へ言い聞かせるように呟き、再び歩き始める。


 先へ進むほど、音は大きくなっていった。


 金属が弾ける音。


 壁が崩れ落ちる音。


 そして、その中に混じる誰かの叫び声。


「……?」


 レテの足が止まった。


 聞き覚えがある。


 何度も聞いた声。


 明るく、無鉄砲で。


 精霊のことになると、周りが見えなくなる彼の声。


「アルト君……?」


 直後。


「返せぇぇぇ!」


 遠くから、はっきりと叫び声が届いた。


「アルト君!」


 レテは走り出した。


 なぜ彼がここにいるのか。


 彼はガイストで軟禁されていたはずだ。


 どうしてヴォルグにいるのか。


 誰と来たのか。


 疑問はいくつも浮かんだ。


 だが、今はそんなことを考えている場合ではない。


 確かにアルトの声がした。


 それだけで十分だった。


「アルト君!」


 薄暗い通路を駆け抜ける。


 角を曲がる。


 その先には、無数のフェルギアの残骸が転がっていた。


 腕を失った機体。


 胸部を陥没させた機体。


 壁へめり込み、完全に動きを止めた機体。


 どれも力任せに叩き潰されたように壊れている。


「これを……アルト君が?」


 驚いている暇はない。


 残骸の間を縫い、さらに奥へ進む。


 大きく破壊された壁の向こう。


 そこには、広い空間があった。


 その中央に立つ、巨大なガラス容器。


 中には、精霊のような姿をした小さな存在が閉じ込められている。


「……精霊?」


 レテは一瞬だけ目を奪われた。


 見たことのない姿。


 けれど、間違いなく精霊に近い何か。


 その小さな存在は、必死にガラスへ手を押し当てていた。


 視線の先。


 血まみれの少年が立っていた。


 全身に傷を負い。


 服は裂け。


 手にしていた《砕》も、今にも落ちそうなほど力なく握られている。


「アルト君……」


 その瞬間。


 アルトの身体から力が抜けた。


 《砕》が床へ落ちる。


 膝が折れ、ゆっくりと前へ崩れていく。


「アルト君!」


 レテは全力で駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。