非力な姿
うん、ここはアルトがガレスにまるで歯が立たないくらいでいいと思う。
ガレスはヴォルグ軍少将で、《タイタン》は重装甲・大盾・大斧の専用機。
しかもアルトはエーテルを背にしているから、避ける方向まで制限される。
だから、
* アルトの攻撃はほとんど通らない
* 《タイタン》の一撃ごとに吹き飛ばされる
* 何度立っても叩き伏せられる
* それでもエーテルの前から退かない
という流れにすると、アルトの強さではなく執念と精霊への想いを見せられる。
続きはこんな感じが合う。
⸻
「その盾ごと、ぶっ壊す!」
アルトが床を蹴った。
「砕砲!」
《砕》の先端が、大盾の中心へ叩き込まれる。
轟音とともに衝撃が弾け、室内の機材が大きく揺れた。
だが。
《タイタン》は動かなかった。
「嘘だろ……」
『力は悪くない』
大盾がわずかに傾く。
『だが、軽い』
次の瞬間、盾が一気に押し出された。
「ぐっ!」
アルトの身体が《砕》ごと弾き飛ばされる。
床を何度も転がり、背中から壁へ叩きつけられた。
「がはっ……!」
肺から空気が抜ける。
視界が揺れ、指先から力が抜けそうになる。
「ギィ!」
容器の中から、エーテルの悲鳴が聞こえた。
アルトは床へ手をつき、無理やり身体を起こす。
「だい……じょうぶだ」
誰に言い聞かせるでもなく呟き、《砕》を拾い上げた。
「まだ、終わってねぇ」
《タイタン》がゆっくりと大盾を下ろす。
代わりに、右手の大斧が持ち上がった。
『退け』
「嫌だ」
『このまま続ければ死ぬぞ』
「だから何だよ」
アルトは《砕》を構える。
「この子を置いて逃げるくらいなら、そっちの方が嫌だ」
ガレスは何も答えなかった。
大斧が振り下ろされる。
「砕円!」
アルトは回転させた《砕》で受け流そうとする。
だが、重さが違いすぎた。
ガギィィン!
「うあっ!」
両腕が弾かれる。
大斧の腹がアルトの脇腹を捉え、その身体を横へ薙ぎ払った。
床を跳ねる。
一度。
二度。
三度。
最後は機材へ突っ込み、金属片が激しく散った。
「……っ」
声も出ない。
脇腹が焼けるように痛む。
息を吸うたび、胸の奥が軋んだ。
『立つな』
ガレスの声が響く。
『もう勝負はついている』
アルトは震える腕で床を押した。
「勝負なんか……してねぇよ」
『何?』
「オレは……この子を助けるって決めただけだ」
膝をつく。
それでも立ち上がる。
額から流れた血が、片目へ入り込んだ。
「だから……まだ終わってねぇ」
《タイタン》が一歩踏み出す。
大盾がアルトの胸へ叩きつけられた。
鈍い音。
身体が再び宙を舞う。
「ギィィ!」
エーテルの叫びが響いた。
アルトは容器のすぐ前へ落ちた。
《砕》が手を離れ、遠くへ転がる。
もう指一本動かすことさえ苦しい。
それでも。
アルトは容器の前へ這い戻り、エーテルを庇うように両腕を広げた。
「……来るな」
ガレスへ向けた言葉ではない。
容器の中で怯えるエーテルへ向けた声だった。
「大丈夫だから」
血に濡れた顔で、無理やり笑う。
「オレが……絶対、助けるから」
《タイタン》は動きを止めた。
ガレスは、倒れてもなお精霊の前へ立とうとする姿を、無言で見下ろしていた。




