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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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不落の意思

 アーヴェルが《不落》を構え直す。


 カイルも《裂兎》を肩へ担ぎ、風を纏う。


 互いに一歩踏み込もうとした、その時だった。


 ──ピッ。


 カイルの腰へ提げられた通信魔具が小さく光る。


「……あ?」


 舌打ちしながら取り出す。


「今忙しいんだが。」


 通信魔具から聞こえてきたのは、怒りに震えるバルドゥルの声だった。


『カイル!』


『作戦を変更する!』


『直ちに研究施設最深部へ向かえ!』


 カイルは眉をひそめる。


「……何があった。」


『《レイス》撃破!』


『《アルケミア》も戦闘不能!』


『計画に支障が出る!』


『急げ!』


 通信が途切れる。


 カイルは深く息を吐いた。


「……面倒なことになったな。」


 アーヴェルは《不落》を構えたまま動かない。


「逃げるのか。」


 カイルは鼻で笑う。


「勘違いするな。鈍亀。」


「お前を殺すのは後回しになっただけだ。」


 《裂兎》を肩へ担ぐ。


「次に会う時は。」


「もっとマシになっておけ。」


 風が吹く。


 カイルの姿が掻き消えた。


 アーヴェルは追おうと一歩踏み出す。


 しかし。


「ぐっ……!」


 傷口が開き、膝をつく。


 《不落》を地面へ突き立て、何とか倒れるのだけは堪えた。


「……逃がしたか。」

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