灼獅
ドゴォォォン!!
ドクターの身体は壁へ叩きつけられ、そのまま瓦礫の中へ埋もれた。
《アルケミア》は膝をつき、各部から白い蒸気を噴き上げている。
動かない。
ガオンはゆっくりと白銀の巨体へ歩み寄った。
赤熱していた《サーマルコンバーター》へ手を伸ばす。
ガコン。
固定具を外し、そのまま片腕へ装着する。
ギギギ……
形状変換装置が自動で作動する。
巨大だった籠手は音を立てながら縮み、人の腕に合う大きさへ変形した。
ガオンは何度か拳を握る。
違和感はない。
むしろ身体へ吸い付くように馴染む。
「……。」
右腕を軽く前へ突き出す。
《活火》で身体へ残っていた熱が《サーマルコンバーター》へ流れ込む。
籠手の隙間から赤い光が漏れた。
「はっ。」
ガオンは満足そうに笑う。
「使える。」
そのまま瓦礫へ目を向ける。
「約束通り。」
「もらっていく。」
瓦礫の中から、か細い声が聞こえた。
「……サ、サマール……。」
ガオンは籠手を見つめる。
「いや。」
「《灼獅》だ。」
「ち、違……。」
ドクターは最後まで言い切れず、そのまま白目を剥いて気絶した。
静寂が訪れる。
ユノは肩の力を抜き、小さく息を吐く。
「……ようやく終わった。」
肩へ乗るキュウの頭を優しく撫でる。
「キュウ、お疲れ様です。」
「キュ。」
キュウは気持ちよさそうに目を細めた。
ガオンは《灼獅》を一度だけ見つめると、そのまま腕を下ろした。
「行くぞ。」
「まだ終わってねぇ。」
ユノも頷く。
「はい。」
二人は煙立ち込める通路の奥へ駆け出した。




