吹き飛べ②
ミシッ。
小さな亀裂が、配管の付け根を走る。
次の瞬間。
ボンッ!!
配管の継ぎ目が弾け、灼熱の蒸気が《アルケミア》の背中から噴き上がった。
「……。」
ドクターの笑みが止まる。
「圧力異常……?」
計器へ視線を落とす。
赤い警告灯が一斉に点滅を始めた。
『熱量循環異常』
『排熱機構異常』
『内部温度上昇』
「んーーー?」
「……あれ?」
《アルケミア》の内部から嫌な振動が伝わってくる。
《サーマルコンバーター》は正常。
熱も吸収できている。
だが。
吸収した熱を機体へ循環させる経路が壊れた。
行き場を失った熱が、《アルケミア》の内部へ蓄積され始める。
「ちょっ……。」
「ちょっと待ってください。」
「これ……まずいですねぇ。」
機体の隙間から白い蒸気が吹き出す。
白銀の装甲が赤熱し始めた。
ガオンは静かに見つめる。
「ユノ。」
「はい。」
「終わりだ。」
ユノも《火眼》で内部を見る。
「……!」
「熱が逃げません!」
「全部、中へ溜まっています!」
「あと少しで暴走します!」
ドクターは慌てて操作レバーを倒した。
「緊急排熱!」
「排熱!」
「……あれ?」
何も起きない。
「んーーー!?」
「排熱弁が開きません!」
警報音が鳴り響く。
『危険』
『危険』
『内部温度限界接近』
『緊急脱出を推奨』
ドクターの顔から笑みが消えた。
「……。」
「いやです。」
「この子を失うわけにはいきません。」
『五』
『四』
『三』
「仕方ありませんねぇぇぇぇ!!」
ガコンッ!!
《アルケミア》の胸部装甲が勢いよく開く。
座席ごとドクターが射出される。
「んーーーーー!!」
「また会いましょう!《アルケミア》ぁぁぁぁ!!」
空中へ放り出されたその瞬間。
ガオンは地面を蹴った。
ドンッ!!
一瞬でドクターの懐へ潜り込む。
空中で身体を捻り。
右拳を握る。
ドクターが目を見開く。
「ん?」
「……吹き飛べ。」
ドゴォォォォォンッ!!
拳がドクターの腹へめり込む。
ドクターは白目を剥き、そのまま弾丸のように壁へ突っ込んだ。
ドガァァァン!!
壁が砕け、瓦礫が崩れ落ちる。
ガオンは静かに着地する。
背後では。
熱を抱え込んだ《アルケミア》が、限界を迎えようとしていた。




