熱帯びる共闘
ガオンは地面を強く蹴った。
ドンッ!!
石床が砕け、爆発するような踏み込みで《アルケミア》の懐へ飛び込む。
「近っ!?」
ドクターが驚きの声を上げる。
「ですがぁ!」
「近距離戦も当然想定済みです!」
《アルケミア》の右腕が唸りを上げる。
《サーマルコンバーター》が赤熱し、そのまま巨大な拳が振り下ろされた。
ゴォォッ!!
空気が焼ける。
ガオンは身体を半歩だけ捻る。
拳は頬を掠め、そのまま床へ叩きつけられた。
ドゴォォン!!
石畳が弾け飛び、熱で溶けた破片が周囲へ降り注ぐ。
「そこだ。」
ガオンは踏み込み、そのまま右拳を《アルケミア》の脇腹へ叩き込んだ。
ドゴッ!!
鈍い衝撃が響く。
だが白銀の装甲は僅かに軋むだけだった。
「んーーー!」
「素晴らしい!」
「衝撃吸収装甲も正常!」
「耐久試験も大成功です!」
《アルケミア》の左拳が横薙ぎに迫る。
ガオンは腕で受け流し、その勢いを利用して後方へ跳ぶ。
その動きを見ていたユノが《燈環》を握り締めた。
「ガオンさん!」
ガオンは視線を向けることなく答える。
「見えるか。」
「はい!」
ユノは静かに息を吸い込んだ。
「《火眼》。」
赤い霊素がユノの瞳へ宿る。
細められた瞳が燃えるような紅へ染まった。
《アルケミア》を見据える。
「……!」
装甲の内側。
熱の流れが赤い線となって浮かび上がる。
《サーマルコンバーター》へ流れ込む膨大な熱。
それを全身へ循環させる配管。
さらに、その熱を逃がす排熱経路。
「ガオンさん!」
「右肩の後ろ!」
「サーマルなんちゃらへ繋がる配管です!」
「そこだけ熱が集中しています!」
ガオンは小さく笑う。
「なるほど。」
「そこが弱点か。」
「ですが!」
ユノは首を振る。
「配管自体じゃありません!」
「付け根です!」
「熱が一点に集まりすぎています!」
「そこを壊せば……!」
ガオンは頷いた。
「十分だ。」
その瞬間。
「んーーー!」
ドクターが満面の笑みを浮かべる。
「戦闘中に弱点探しですかぁ!」
「いいですねぇ!」
「実に研究熱心です!」
《アルケミア》の肩部装甲が展開する。
ギギギギ……
左右の肩から連装砲身がせり出した。
「《フェルバルカン》!」
「霊素弾、発射ぁ!」
ダダダダダダダッ!!
無数の霊素弾が豪雨のようにガオンへ降り注ぐ。
ガオンは地を蹴り、霊素弾の隙間を縫うように駆け抜ける。
避けきれなかった数発が肩を掠め、火花とともに鮮血が散った。
それでも速度は落ちない。
「ガオンさん!」
「そのまま真っ直ぐ!」
「付け根を狙ってください!」
ガオンは口元を吊り上げた。
「任せろ。」
その瞳は、すでに《アルケミア》の右肩後方――熱の集まる一点だけを捉えていた。




