サーマルコンバーター
ドクターは肩を震わせ、次の瞬間、満面の笑みを浮かべた。
「いいでしょう!」
「ならば、その身体で!」
「その熱で!」
「《サーマルコンバーター》の性能を証明して差し上げます!」
《アルケミア》の両籠手がゆっくりとガオンへ向けられる。
内部の赤い光が脈打ち始めた。
「《サーマルコンバーター》!」
「熱量吸収開始ぃ!」
掌が開く。
中心部から赤い光が溢れ、ガオンを包む熱が目に見えるほどの粒子となって吸い寄せられていく。
ブゥゥゥン……
低い駆動音が地下へ響いた。
「んーーー!」
「吸収成功!」
「実に順調!」
「実に美しい!」
籠手へ流れ込む熱量に比例するように、赤い光はどんどん強さを増していく。
ガオンは拳を握った。
身体を満たしていた熱が確かに奪われている。
だが、まだ動ける。
「ユノ。」
「はい。」
「もう一回だ。」
ユノは思わず耳を疑う。
「まだですか!?」
「早く。」
短い返事。
ユノはため息を吐き、《燈環》を掲げる。
「……本当に無茶な人ですね。」
肩の上でキュウが鳴いた。
「キュ!」
「《活火》!」
炎が再びガオンの身体へ流れ込む。
ゴォッ――。
先ほど以上の熱気が噴き上がった。
石床が赤く焼け、空気が陽炎のように揺らぐ。
「んーーーー!」
ドクターが歓喜の声を上げた。
「素晴らしい!」
「入力熱量急上昇!」
「まだ吸えます!」
「もっと!」
「もっと熱をください!」
《サーマルコンバーター》は唸りを上げながら、熱を貪るように吸収していく。
ガオンはその様子を見つめ、小さく呟いた。
「……なるほど。」
次の瞬間。
ドンッ!
床を砕きながら、一気に踏み込む。
「近っ!?」
ドクターが思わず声を上げた。
熱を纏った拳が《アルケミア》の胸部へ迫る。
しかし。
ガギィィン!
巨大な籠手が拳を受け止めた。
衝撃で《アルケミア》の巨体が数歩後退する。
だが倒れない。
「んーーー!」
「耐久試験も良好!」
「最高です!」
《アルケミア》の左籠手が開いた。
「お返しですよぉ!」
ドォン!
吸収した熱が爆発的に放出される。
ガオンは咄嗟に後方へ飛び退いた。
灼熱が通路を薙ぎ払い、石床が一瞬で赤熱する。
壁は溶け、鉄骨が飴のように垂れ下がった。
「危なっ!」
ユノが目を見開く。
「だから言ったじゃないですか!」
「熱を返してくるって!」
ガオンは焼け落ちた床を見つめる。
「吸うだけじゃねぇか。」
「返してくる。」
「んーーー!」
ドクターは嬉しそうに指を鳴らした。
「その通り!」
「吸収!」
「蓄積!」
「放出!」
「これこそ《サーマルコンバーター》!」
ガオンは静かに笑う。
「面白ぇ。」
ユノは呆れたように肩を落とす。
「その感想になるんですか……。」
ガオンは再び腰を落とした。
「ユノ。」
「はい。」
「もう少し上げられるか。」
「……本気ですか?」
「ああ。」
ガオンは《アルケミア》を真っ直ぐ見据える。
「限界を見たい。」
その言葉を聞いたドクターの目が輝く。
「んーーーーー!!」
「素晴らしい!」
「その心意気!」
「受けて立ちますよぉ!」
《アルケミア》の両籠手が真紅に輝く。
「《サーマルコンバーター》!」
「熱量充填完了!」
赤い光が両掌へ集束していく。
地下施設全体が紅く染まり始めた。
「さぁ!」
「受け取ってください!」
「《ヒートバースト》――発射ぁぁぁ!!」




