完成
レイス》の大鎌が振り下ろされる。
「死ね。」
その瞬間だった。
ログと、腐食液によって溶け落ちた《崩槌》を包むように、柔らかな茶色の光が溢れ始める。
「……なんだ?」
ゼインが眉をひそめた。
《崩槌》は完全に溶けたはずだった。
柄だけを残し、鉄塊は原形を留めていない。
だが、その鉄が動く。
茶色い霊素に導かれるように、溶けた鉄が宙へ浮かび上がった。
「モォォ……」
アルゴスが静かに鳴く。
その声に呼応するように、鉄はゆっくりと形を変えていく。
不純物が剥がれ落ちる。
砕けた金属が混ざり合う。
溶けた鉄は何度も折り重なり、何度も鍛え直されるように、その姿を変えていった。
まるで、目の前で鍛冶が行われているかのようだった。
「まさか……」
ゼインの笑みが消える。
茶色い光が一際強く輝く。
やがて光が収まると、そこには一本の大槌があった。
以前よりも一回り大きな槌頭。
茶色い紋様が金属全体を駆け巡り、打撃面にはアルゴスの角を思わせる意匠が刻まれている。
柄には土色の霊素が淡く流れ続けていた。
ログは静かにその柄を握る。
握った瞬間、不思議と手に馴染む。
まるで、初めからこの形だったかのように。
「……悪いな。」
ログは小さく笑う。
「完成まで、待たせちまった。」
「モォ。」
アルゴスも嬉しそうに鼻を鳴らした。
ゼインは舌打ちする。
「クソが……!」
「それは溶けたはずだろ!」
ログは新たな《崩槌》を肩へ担ぐ。
「違う。」
静かな声だった。
「あれは壊れたんじゃねぇ。」
一歩、前へ出る。
「アルゴスが、鍛え直してくれた。」
《崩槌》から茶色い霊素が溢れ出す。
ログはゼインを真っ直ぐ見据えた。
「これが――俺たちの霊器だ。」
ゼインの額に、一筋の汗が伝った。
先ほどまでの余裕は、もうそこにはなかった。




