教えといてやるよ
ログは口元から流れる血を拭い、小さく笑った。
「……二つ、教えといてやるよ。」
「……あ?」
ゼインが怪訝そうに眉をひそめる。
ログは床へ転がる《崩槌》へ視線を向けた。
「まず一つ。」
「これは――」
《崩槌》を見据え、静かに言う。
「俺が作った魔器だ。」
「クックク……。」
ゼインは鼻で笑う。
「そうか。んで、あともう一――」
「もう一つ。」
ログが遮る。
「鉄人形が、俺に触れたら駄目だろうが。」
「……あ?」
ゼインは眉をひそめる。
「何言って――」
その瞬間。
脳裏に、先ほどの戦いが蘇る。
《レイス》がログへ触れた直後。
脚部装甲が急激に脆くなった光景。
「……!」
「そういえばこいつ……!」
「触れたものを脆くする術を――!」
「《脆化》」
ログが静かに呟く。
茶色い光が《レイス》の右脚を駆け抜けた。
鈍い音を立て、装甲が一気に脆くなっていく。
「チッ! このクソガキ!」
「アルゴス!」
「モォォー!」
アルゴスが力強く鳴いた。
地面が隆起し、《レイス》の足元を大きく揺らす。
バランスを崩した《レイス》がよろめき、ログとの距離が開いた。
ゼインは舌打ちしながら機体を立て直す。
「……野郎。」
「ぶち殺す。」
《レイス》の左腕が持ち上がる。
照準はログではない。
アルゴスだった。
「死ね。」
腐食液が勢いよく放たれる。
「モォ!?」
アルゴスは思わず目を閉じた。
だが――。
腐食液は届かない。
ログがその前へ飛び込み、《崩槌》を盾のように構えていた。
ジュゥゥゥ……
腐食液が《崩槌》へ降り注ぐ。
鍛え上げられた魔器が、音を立てながら溶け始める。
飛び散った腐食液はログの肩や腕にも降りかかり、白い煙を上げた。
「ぐぅぅぅぅっ!」
激痛が全身を駆け巡る。
それでもログは退かなかった。
アルゴスを守るように、前へ立ち続ける。
「クッククッククックク!」
ゼインが腹を抱えて笑う。
「見ろよ!」
「自慢の魔器は溶ける!」
「テメェの身体もボロボロじゃねぇか!」
「最高だ!」
《レイス》が大鎌を高く掲げる。
「死ね。」
振り下ろされる刃。
その瞬間だった。
溶け崩れた《崩槌》と、ログの身体を包み込むように、柔らかな茶色の光が静かに溢れ始めた。




