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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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フェルギア:タイタン


  ガレスは静かに胸元へ手を置いた。


「その覚悟は認めよう」


「だったら、どけ」


「それはできん」


 短い返答だった。


 迷いも、言い訳もない。


 ガレスは白い装甲板の中央へ手を伸ばす。


 円形に空いた穴へ腕を差し込んだ瞬間、低い駆動音が部屋全体へ響いた。


「なんだ……?」


 アルトは《砕》を構えたまま、周囲へ視線を走らせる。


 ガレスの背後。


 これまで壁だと思っていた鉄板が、重々しい音を立てながら左右へ開いていく。


 その奥に、一体の鉄人形が立っていた。


 深い茶色の装甲。


 他の機体よりも一回り大きい。


 肩も、胸も、腕も、全てが分厚い。


 人の形をしているというより、巨大な鉄塊を無理やり立たせたような姿だった。


 左腕には、機体の半身を覆えるほどの大盾。


 右手には、幅広の刃を持つ巨大な戦斧。


 どちらも重さだけで人を押し潰せそうなほどだった。


「また鉄人形かよ」


「鉄人形ではない」


 ガレスは機体へ歩み寄る。


「フェルギアだ」


 胸部装甲が開く。


 ガレスがその中へ乗り込むと、装甲が重い音を立てて閉じた。


 次の瞬間。


 機体の両眼に光が灯る。


「俺の専用機――《タイタン》」


 ズン。


 《タイタン》が一歩踏み出す。


 ただそれだけで床が軋み、部屋全体へ振動が広がった。


 アルトは背後を振り返る。


 容器の中で、小さな精霊が怯えるように身を縮めていた。


「ギィ……」


「大丈夫だ」


 アルトは《砕》を握り直し、《タイタン》の前へ立つ。


「絶対、助けるからな」


 小さな精霊は不安そうに鳴きながらも、アルトから目を逸らさなかった。


 《タイタン》が大盾を持ち上げる。


 分厚い盾が床を擦り、低い音を響かせた。


「どけ」


 アルトはガレスを睨む。


「この子は連れていく」


「断る」


「なんでだ!」


「俺が、この場所を守ると決めたからだ」


 それだけだった。


 アルトは《砕》を握る手に力を込めた。


「この子が苦しんでるのが見えててもか」


「ああ」


「それでも止めるのか」


「ああ」


 迷いのない返事に、アルトの表情が歪む。


「ふざけんな……」


 容器の中の小さな精霊が、びくりと身体を震わせた。


 アルトは一歩前へ出る。


「苦しんでる奴を、そのままにしておけるかよ!」


 《砕》の石突きを床へ叩きつける。


「どかないなら、オレがぶっ飛ばす!」


 ガレスは大盾を正面へ構えた。


 右手の大斧が、ゆっくりと持ち上がる。


「来い、アルト」


 低い声が機体の中から響く。


「貴様が選んだものを、俺に示してみろ」


 《タイタン》が地面を踏み締める。


 重い振動。


 アルトも《砕》を構えた。


 背後には、助けると決めた精霊。


 目の前には、自らの選択を曲げない軍人。


 二人の視線がぶつかる。


 次の瞬間。


 《タイタン》の大盾が床を砕きながら、アルトへ迫った。

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