ガレス・グラント
「誰だ!」
アルトが勢いよく振り返る。
部屋の入口には、一人の男が立っていた。
身長は二メートル近い。
年の頃は三十代半ばだろうか。
鍛え上げられた大柄な体躯に、深い緑色の軍服。
その上から胸の中央が円形にくり抜かれた白い装甲板を身に着けている。
短く刈り込まれた髪。
鋭い眼光。
無駄のない立ち姿からは、長年戦場を渡り歩いてきた軍人の風格が漂っていた。
男はすぐにアルトへ向かうことはしなかった。
まず部屋の外へ目を向ける。
通路には、何機ものフェルギアが転がっていた。
腕を砕かれたもの。
胴体が大きく陥没したもの。
頭部を叩き潰され、完全に沈黙したもの。
その一機一機へ視線を走らせる。
「……」
やがて男はしゃがみ込み、一体のフェルギアへ触れた。
砕けた装甲。
ひしゃげた内部骨格。
刃物で斬られた跡はない。
爆発でもない。
純粋な破壊力だけで叩き潰されている。
男はゆっくりと立ち上がり、アルトを見る。
「この部屋の前にいたフェルギアは……」
一拍置く。
「貴様、一人で倒したのか。」
アルトは《砕》を肩へ担いだ。
「ああ。」
「仲間はいないのか。」
「いない。」
「そうか。」
男はそれ以上は聞かなかった。
短い受け答えだけで十分だった。
目の前の少年は嘘をついていない。
そして、外の惨状を見れば答えは一つしかない。
男は静かに息を吐いた。
「量産型とはいえ、あれだけの数を一人で相手にするのは容易ではない。」
「そして守護者まで…」
その言葉に驚きはない。
ただ事実を評価しているだけだった。
「子どもだと思って加減しようと思っていたが……その必要はなさそうだ。」
アルトは《砕》を構え直す。
「最初からそのつもりだ。」
二人の視線が交差する。
互いに一歩も譲らない。
重い沈黙が部屋を包んだ。
やがて男は胸へ軽く手を当てる。
「名乗っていなかったな。」
「俺はガレス・グラント。」
「ヴォルグ軍少将だ。」
アルトも視線を逸らさない。
「オレはアルト。」
「この子を助けに来た。」
ガレス・グラントは容器の中のエーテルへ視線を向け、小さく目を細めた。
「……そうか。」




