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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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大男


 ――少し、時は遡る。


「ライの奴……何しやがった?」


 突然響いた轟音。


 施設全体が大きく揺れ、天井から砂埃が舞い落ちる。


 しばらくして揺れは収まる。


 代わりに施設中へ甲高い警戒音が鳴り響いた。


 赤い警告灯が点滅し、無機質な警報が通路を埋め尽くす。


「……今なら」


 アルトは辺りを見回した。


 あれだけ派手に暴れたのだ。


 警備はライのいる方へ向かっているはず。


 今なら、この部屋には誰も来ない。


 アルトは容器へ駆け寄る。


 透明なガラスの向こうでは、小さな精霊――エーテルが不安そうにこちらを見つめていた。


「少し離れてくれ。」


 アルトは魔器《砕》を構える。


「今から、これぶっ壊すから。」


「ギィ?」


 エーテルは首を傾げる。


「ギィギィ!」


 意味が伝わったのか、小さく鳴くと、容器の奥へと下がった。


「よし。」


 アルトは《砕》を握り直す。


「砕牙!」


 《砕》を勢いよく振り抜く。


 鈍い衝撃音が部屋へ響く。


 しかし、ガラスには傷一つ入らない。


「……硬ぇ。」


 アルトは目を丸くする。


「なら!」


「砕円!」


 回転を加えた一撃。


 それでも容器は揺れるだけだった。


「かってーな!」


 アルトは一歩下がる。


「砕牙!」


 ドンッ!


「砕衝!」


 ドォン!


「砕円!」


 ゴンッ!


「砕撃!」


「砕連!」


 次々と《砕》を叩き込む。


 重い衝撃が部屋中へ響き渡る。


 それでも超硬化ガラスは、わずかに震えるだけだった。


 アルトは荒く息を吐く。


「……だったら!」


 《砕》を両手で握る。


 全身の力を柄へ乗せ、深く踏み込む。


 一瞬、静寂が訪れた。


「砕砲ッ!!」


 轟音。


 爆発のような衝撃が部屋中へ駆け抜ける。


 容器の周囲へ衝撃波が広がり、床に置かれた器具が吹き飛ぶ。


 だが――


 ガラスは砕けない。


「はぁ……はぁ……」


 アルトは《砕》を肩へ担ぎ、小さく息を吐いた。


「砕砲でもダメなのかよ……」


「やめておけ。」


 低い声が部屋へ響く。


「それはDr.ヴェルナーが作った超硬化ガラスだ。」


 アルトが勢いよく振り返る。


「誰だ!」


 入口には、一人の大男が静かに立っていた。

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