化け物が….
エリナが小さく呟く。
「もし本当に、奪わずに力を借りる道があるのなら……」
その先は続かなかった。
その時。
《ヴァルキリー》の通信機から、激しい雑音が走る。
『――エリナ中尉! 応答してください!』
エリナは慌てて通信を開いた。
「こちらエリナ・ステイツ。何がありました?」
『ブラム隊が……壊滅しました!』
「……何ですって?」
◇
時は、少しだけ遡る。
「化け物が……」
ブラムは、掠れた声を漏らした。
緑の専用フェルギア《コマンダー》の周囲には、無数の機体が転がっている。
腕を斬り落とされたもの。
脚部を砕かれたもの。
武器を失い、沈黙したもの。
ブラムが率いていた無人フェルギア部隊は、すでに一機も動いていなかった。
その中心に、一人の男が立っている。
金色の髪。
澄んだ蒼い瞳。
右手には騎士剣。
左腕には、蒼い円形の盾。
男は青ざめた顔で、口元を押さえた。
「うっ……まだ、揺れている気がしますね」
「貴様……何者だ」
男は静かに顔を上げる。
「英雄国家スパーナ、リオネル・アクアリス」
蒼い瞳が、《コマンダー》を捉えた。
「降伏を勧めます」
ブラムは周囲を見渡す。
動く機体は、もう一機もない。
数で囲み、射撃を浴びせ、死角から襲わせた。
それでも、この男には届かなかった。
「この私が……たった一人に……」
「まだ戦いますか?」
リオネルは騎士剣を構える。
ブラムは操縦桿を強く握った。
「舐めるな!」
《コマンダー》が拳を振り上げる。
次の瞬間。
蒼い盾が、その拳を弾いた。
騎士剣が閃く。
《コマンダー》の巨体が、大きく傾いた。
「化け物が……」
ブラムの呟きに、リオネルは少しだけ眉を下げる。
「失礼ですね」
そう言った直後、再び口元を押さえた。
「うっ……」




