↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
119/470

違う道

 《ヴァルキリー》は片膝をついたまま、動かなかった。


 レテも《水凪》を突きつけたまま、追撃はしない。


 しばらくの沈黙の後、操縦席からエリナの声が漏れた。


「……なぜですか」


「何がですか?」


「なぜ、その精霊はあなたに従うのです」


 レテの隣で、ディーネが静かに尾を振る。


「従っているわけではありません」


「ですが、あなたのために戦った」


「私もディーネのために戦っています」


「同じことでしょう」


「違います」


 レテはきっぱりと言った。


「私が命令して、ディーネがそれに従っているわけではありません。私が気づけなかったことをディーネが教えてくれて、ディーネにできないことを私が補うんです」


「精霊と、人間が……」


「一緒に戦っているだけです」


 エリナは言葉を失った。


 目の前で見せつけられた連携を、否定することができない。


 拘束もされていない。


 力を無理やり引き出されてもいない。


 それでも精霊は、自らレテを助けていた。


「そんなことが……可能なのですか」


「できています」


「あなたたちだからでしょう」


 エリナの声が強くなる。


「ヴォルグには、あなたたちのように精霊と契約できる者ばかりではありません。精霊の力を使わなければ、工場は止まり、軍は弱まり、民の暮らしは崩れる」


「だから、捨てるんですか?」


「……」


「ここへ来るまで、何度も見ました」


 レテの声が低くなる。


「まだ消えていないのに、壊れたランタンと一緒に捨てられていた子たちを」


 エリナは目を伏せた。


「私は……あの施設の管理には関わっていません」


「それで、知らなかったことになりますか?」


「ならば、どうしろと言うのです!」


 エリナが顔を上げる。


「今すぐ全てを捨てろと? 精霊を解放して、国が滅びるのを黙って見ていろと?」


「そんなことは言っていません」


「では、何を!」


「探してください」


 レテは静かに答えた。


「奪う以外の方法を」


 エリナの表情が止まる。


「精霊は道具ではありません。話を聞くことも、信じてもらうこともできます」


「精霊が……ヴォルグを信じると?」


「今のままでは、難しいと思います」


 レテの言葉に、エリナは唇を噛んだ。


「でも、変わろうとすることはできます」


「簡単に言わないでください」


「簡単ではありません」


 レテは《水凪》を下ろした。


「私だって、ディーネのことを全部分かっているわけではありません。今でも間違えることがあります」


 ディーネがレテの頬へ寄り添う。


「それでも、分かろうとすることはやめません」


 エリナは、その様子を黙って見つめていた。


「……もし」


 やがて、小さく口を開く。


「もし本当に、奪わずに力を借りる道があるのなら……」


 その先を、エリナは言えなかった。


 レテも答えを急かさない。


 ただ、《水凪》を鞘へ収めた。


「あなたがその道を探すなら、今日見たものを忘れないでください」


「私を見逃すのですか?」


「もう、戦うつもりはないでしょう?」


 エリナは拳を握る。


 それでも、《ヴァルキリー》を立ち上がらせることはなかった。


「……エリナ・ステイツ中尉」


 レテは背を向ける。


「次に会う時は、違う道を選んでいることを願っています」


 エリナは何も答えなかった。


 ただ、レテとディーネが並んで去っていく姿を、いつまでも見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。