↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
117/469

武器ではありません

 二本の刃が、左右からレテの首を狙う。


 レテは一歩だけ踏み込んだ。


 《水凪》を立て、右の刃を受ける。


 甲高い音。


 そのまま剣を滑らせ、もう一方の軌道へ押し込んだ。


 二本の長剣がぶつかり合う。


「なっ……!」


 エリナが息を呑む。


 レテは《ヴァルキリー》の懐へ入っていた。


 振り抜かれた《水凪》が、胸部装甲を斬りつける。


 火花が散った。


 だが、刃は浅い傷を残しただけで止まる。


「硬い……!」


「その程度で、《ヴァルキリー》を斬れると思わないことです!」


 機体が身体を捻る。


 肘と同時に、逆手へ持ち替えた長剣が迫った。


 レテは身を沈めて躱す。


 頭上を刃が通り過ぎた直後、もう一本が地面すれすれを薙いできた。


 避けきれない。


 そう判断した瞬間。


 足元を流れていた水が、レテの身体を押し上げた。


「ありがとう、ディーネ!」


 空中で身体を反転させる。


 長剣を飛び越え、その刃の腹へ《水凪》を叩きつけた。


 エリナの腕に重い衝撃が伝わる。


「精霊術……!」


 《ヴァルキリー》が後退する。


 レテは着地すると同時に踏み込んだ。


 一閃。


 二閃。


 三閃。


 機体の関節だけを狙い、迷いなく刃を振るう。


 エリナは二本の剣で受け続ける。


 速い。


 フェルギアの力に振り回されているわけではない。


 左右の剣を使い分け、攻めと守りを途切れさせない。


 エリナ自身も、相当な訓練を積んでいる。


 けれど。


「見えています」


 レテは左の刃を受け流し、半歩横へずれた。


 続く右の突きが空を切る。


 その動きを先に知っていたかのように。


「どうして……!」


 エリナが追撃する。


 二本の刃が、息つく暇もなくレテへ襲いかかった。


 レテは受け、弾き、躱す。


 視界の外から迫る一撃には、水滴が頬へ触れた。


 背後から来る斬撃には、足元の水面が揺れた。


 ディーネからの合図だった。


 言葉はない。


 振り返る必要もない。


 レテはその全てを信じ、剣を振るう。


「二人で……戦っている?」


 エリナが呟いた。


 レテの剣だけを見れば、追いつけないほどではない。


 精霊術だけなら、機体の出力で押し切れる。


 だが、その二つが重なった瞬間、隙がなくなる。


 剣士が精霊術を操っているのではない。


 精霊が剣士に従っているのでもない。


 互いの足りない部分を、互いが埋めている。


「精霊を武器として使っているのは、あなたも同じでしょう!」


 エリナが叫ぶ。


 《ヴァルキリー》が二本の長剣を振りかぶった。


「自分だけが正しいような顔をしないでください!」


「違います」


 レテは静かに答えた。


 ディーネが、その肩の横を泳ぐ。


「ディーネは、私の武器ではありません」


 振り下ろされた二本の刃へ、《水凪》を向ける。


「私の大切な仲間です」


 刃がぶつかる寸前。


 床一面の水が、一斉に跳ね上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。