再開②
「久しぶりだな」
男の声が、演習場に響く。
その声を聞いた瞬間、アーヴェルの表情が変わる。
「……カイル」
レテは男の姿を見つめ、息を呑んだ。
「……颶風」
ガイストでも名を知らぬ者はいない精霊術師。
そして、アーヴェルと同期だった男。
カイルは肩を竦めるように笑った。
「隊長直々に来るとはな」
「人材不足か?」
アーヴェルは答えず、一歩前へ出る。
「……オーズィラ」
「はい」
「先に行け」
レテは思わず声を上げた。
「危険です!」
「心配するな。私が一人で抑え――」
「一人で戦うのが危険なんです!」
レテの叫びが演習場に響く。
アーヴェルは黙ってレテを見つめた。
その横で、カイルが笑う。
「ハハハ」
「お前の隊のガキどもは威勢がいいな」
笑みを浮かべたまま、《裂兎》へ手を掛ける。
次の瞬間。
その場の空気が一変した。
「……貴様一人増えたところで、どうにかなるのか」
低く押し殺した声。
凄まじい殺気が、レテの身体を貫く。
(すごい殺気……)
(ヒルトは……こんな相手と戦っていたのですか……)
知らず知らず、《水凪》を握る手に力が入る。
アーヴェルは振り返らない。
「オーズィラ」
「行け。命令だ」
「でも……!」
「命令だ!」
強い口調だった。
レテは唇を噛み締める。
「……はい」
悔しさを押し殺し、カイルの横を駆け抜ける。
しかし、カイルは追わなかった。
その背中を見送りながら、小さく笑う。
「随分とお優しいな、アーヴェル」
アーヴェルも鼻で笑う。
「貴様もな」
「簡単に通してくれるとは」
「後から何とでもなる」
《裂兎》を静かに抜く。
「貴様を斬った後にな」
その言葉に、アーヴェルの口元が緩んだ。
「フッ」
やがて笑い声へ変わる。
「ハハハハハ」
「貴様にできるのか」
「ピョン吉」
カイルも吹き出した。
「ハハハ」
「懐かしい名前だな」
「鈍亀」
笑い合う二人。
昔を懐かしむような穏やかな空気が、一瞬だけ流れる。
だが、その目は互いから一瞬たりとも逸らさない。
次の瞬間。
二人が同時に地を蹴った。
カイルの《裂兎》が鋭く閃く。
アーヴェルも《不落》を横薙ぎに振るう。
激突。
甲高い金属音と共に火花が散る。
刃が噛み合った至近距離。
二人は相手の目を見据えたまま、小さく呟いた。
「殺す」




