再開
ドォォン――!!
工場内に轟音が響き渡る。
床が震え、天井から細かな砂埃が舞い落ちた。
レテは思わず足を止める。
「今の音……ログ達の方から……」
「……スミスマンがいる」
アーヴェルは前を向いたまま呟く。
「問題はないはずだ」
その言葉には、不思議と迷いがなかった。
レテも小さく頷く。
「はい!」
二人は再び歩き始めた。
薄暗い通路を進んでいくと、その先に上へ続く鉄階段が現れる。
アーヴェルは《不落》へ手を添え、周囲を警戒しながら一段ずつ階段を上がっていく。
レテも≪水凪≫の柄へ手を添え、その背中に続いた。
やがて最上段へ辿り着く。
重厚な鉄扉。
アーヴェルは耳を澄ませる。
物音はない。
ゆっくりと扉を押し開けた。
眩しい光が差し込む。
「……っ」
レテは目を細めた。
そこは屋外だった。
青空が広がり、見渡す限り平らな大地が続いている。
周囲には壊れた標的や訓練用と思われる障害物が点在していた。
「ここは……?」
「演習場だろうな」
アーヴェルは静かに周囲を見渡す。
気配はない。
だが、それがかえって不自然だった。
「玄甲」
呼びかけに応えるように、契約精霊・玄甲がゆっくりと姿を現す。
巨大な亀は静かに周囲を見回すと、尻尾で地面を叩いた。
トン――。
低い音が演習場へ響く。
玄甲はじっと一点を見つめたまま動かない。
アーヴェルが僅かに眉をひそめる。
「問題なさ――」
その瞬間だった。
「――っ⁉」
風を切る鋭い音。
透明な刃が、一直線に二人へ襲いかかる。
「くっ……!」
アーヴェルは反射的にレテの前へ飛び出した。
「隊長!」
精霊術を発動する時間はない。
《不落》を抜く暇すらなく、アーヴェルはその身で風刃を受け止める。
ズバッ!
肩口から鮮血が舞う。
衝撃で数歩後退するも、アーヴェルは倒れない。
「隊長!」
レテが駆け寄ろうとする。
しかし、アーヴェルは片手を上げて制した。
「……問題ない」
その鋭い視線は、風刃が飛んできた先を真っ直ぐ見据えていた。




