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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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独りぼっち③


 振り下ろされる大鎌。


 ログは踏み込む足を止めず、《崩槌》を下から振り上げた。


 ガァンッ!


 火花が散り、大鎌が大きく跳ね上がる。


「なに?」


 空いた懐へ潜り込む。


 ログは槌を短く持ち替え、柄尻をレイスの胴へ叩き込んだ。


 ゴンッ!


 紫色の巨体が僅かに揺れる。


「おらぁ!」


 続けて横薙ぎ。


 レイスは大鎌の柄で受け止めた。


 だが、重い一撃を殺しきれず、足元の鉄板を削りながら後退する。


「ほう……」


「余所見してんじゃねぇ!」


 ログは《崩槌》を床へ叩きつけた。


「《岩穿》!」


 アルゴスから受け取った霊素が、槌を通して床下へ走る。


 直後。


 鉄板を突き破り、鋭い岩杭が次々と隆起した。


「小細工を!」


 レイスが大鎌を振るう。


 岩杭がまとめて砕かれ、無数の破片が格納庫へ飛び散った。


 ゼインの視界が、一瞬だけ塞がれる。


「そこだ!」


 砕けた岩の陰から、ログが飛び出した。


 全身を捻り、《崩槌》をレイスの肩へ叩き込む。


 ゴォンッ!


 装甲が大きく揺れた。


 紫色の表面に、初めて浅いへこみが生まれる。


「……私のレイスに傷を?」


「随分と頑丈だな」


 ログは槌を担ぎ直す。


「あと何発で潰れるか、試してやるよ」


 ゼインの笑い声が止まった。


 レイスが大鎌を両手で握り、低く構える。


「少々、評価を改めましょう」


「最初からそうしろ」


 レイスが床を蹴った。


 先ほどまでとは比べものにならない速度で大鎌を振り抜く。


 ログは身を沈め、頭上を通過する刃をかわした。


 続く返しの一撃。


 《崩槌》の柄で受ける。


 ギィィンッ!


 強烈な衝撃に両腕が痺れ、ログの身体が横へ弾かれた。


「ちっ……!」


 床を転がりながら体勢を立て直す。


 その眼前に、毒液銃の銃口が迫っていた。


「やはり、人間の身体では限界がありますねぇ」


 引き金が引かれる。


 ログは横へ飛び退いた。


 毒液が脇腹すれすれを通り抜け、背後の床を溶かす。


 着地と同時に《崩槌》を床へ突き立てる。


「《岩壁》!」


 鉄板の下から岩壁がせり上がった。


 続けて放たれた毒液が岩壁へ浴びせられ、白煙を上げる。


 表面が瞬く間に崩れていく。


「その壁が、いつまで耐えられますかねぇ!」


「十分だ」


 ログは岩壁の陰で、再びアルゴスへ魔素を渡す。


 返された霊素が《崩槌》へ集まり、その周囲で低い音を立てた。


「壁を作ったのは、隠れるためじゃねぇ」


 ログが《崩槌》を大きく振りかぶる。


「ぶち抜くためだ!」


 槌が岩壁へ叩き込まれた。


「《岩砕》!」


 岩壁が内側から爆ぜる。


 巨大な岩塊が、凄まじい勢いでレイスへ襲いかかった。

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