異端の来訪者④
アーヴェルの確認が一通り終わった後。
白衣の女性が、ゆっくりと立ち上がった。
「……さて。」
その目は、先ほどまでとは明らかに違っていた。
警戒ではない。
興味。
純粋な研究者の目だった。
そして、アルトの前まで歩み寄る。
「私からもいくつか質問していいかしら?」
アルトは頷く。
「いいぞ。」
女性はすぐに資料を開いた。
「精霊が近づかない人間。」
「精霊との契約歴なし。」
「なのに、高い身体能力と戦闘能力を持つ。」
「興味深い……。」
ぶつぶつと呟きながら、さらに距離を詰める。
「先生。」
アーヴェルが低い声で呼ぶ。
「まずは名前くらい名乗ってください。」
「あ。」
女性の動きが止まる。
「……そうだったわ。」
彼女は少し気まずそうに笑った。
「ごめんなさい。」
そして姿勢を正す。
「私はミレイア・ヴァルナ。」
「精霊研究院の主任研究員をしています。」
「よろしくね、アルト。」
「よろしく。」
アルトは素直に返す。
その様子を見て、アーヴェルは小さく息を吐いた。
変わっていない。
昔からそうだ。
興味を引かれるものを見つけると、周囲が見えなくなる。
優秀な研究者であることは間違いない。
だが、時々こうなる。
「先生。」
「分かっています。」
アーヴェルの視線を受け、彼女は苦笑する。
「研究者としての前に、人として接するべきでしたね。」
「そういうことです。」
「反省します。」
そう言いながらも。
彼女の瞳は、やはり楽しそうに輝いていた。
「でも。」
ミレイアはアルトを見る。
「こんな存在を前にして、興味を持つなという方が無理でしょう?」
アーヴェルは返事をしなかった。
否定できない部分があったからだ。
目の前の青年は。
精霊術師の歴史の中でも、前例のない存在なのだから。




