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エーテルコード  作者: エトコッコ
エピローグ

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81/82

蒼天の朝へ


司令室。


トーマスは、総帥代理ではなく、正式にオルフェ研究機関の総帥となっていた。


「トーマス、久々の休暇はどこ行くの?」


松永は笑顔で尋ねる。


松永自身は、変わらず副総帥だった。


しかし、本人曰く“慣れないし呼びづらい”とのことで、身内の間ではこれまで通り“主任”と呼ばれている。


「美味しい天ぷら屋さんを見つけてね」


トーマスは穏やかに笑った。


「まずは、そこに家族で食べに行くんだ」


「それから先は……まぁ、その時に決めるよ」


その表情は、どこか肩の力が抜けていた。


長く張り詰めていたものが、ようやく解けたように。


どうやらトーマスは、久しぶりの家族との時間を満喫するようだ。



食堂。


「へぇー……あんだけ引っ張っといて、結局彼と別れたんだ」


カリンは呆れ半分、面白がるように言った。


「だってさー……」


リオはコーヒーを片手に、気だるそうに肩をすくめる。


「“アドハミ”の幸せそうな関係、あんな間近で見せられたらさぁ」


“アドハミ”とは、アドルとハミルのことだった。


「なんか、私って何やってんだろってなっちゃって」


そう言って苦笑した。


「気づくの遅すぎ」


カリンはくすくす笑う。


「まぁでも……いいんじゃない?」


「リオなりに、新しい一歩踏み出したってことで」


「そうねっ!!」


リオはすぐに表情を明るくした。


「ていうかさ、一緒に街コン行かない?」


「えぇー?」


カリンは露骨に嫌そうな顔をする。


「ねっ? お願い!」


リオは身を乗り出した。


「……考えとく」


カリンは呆れたように言った。



教室。


加藤の授業を受ける訓練生の姿があった。


「さて、この辺りで少し休憩にしましょうか」


加藤は穏やかに言った。


「あ〜……卒業できる気がせん……」


光井が机に突っ伏しながら呟く。


「アンタが寝てばっかだからでしょ」


アンジュがすかさずツッコむ。


「でもさ……実際、卒業試験ってかなり大変だよ」


みのりが真面目な顔で言う。


「グンジン、マジすげーよ……」


光井は感心したように東を見た。


「い、いえ……そんな」


東は少し照れたように頭をかく。


東は、3人より一足先に卒業試験を受ける予定だった。


「東くんと一緒に卒業試験受けるのって、あと怜先輩だよね?」


みのりが聞く。


「そうですね」


加藤が頷いた。


「……うわーなんか焦ってきた」


光井は不安そうに呟く。


だが加藤は、優しく微笑んだ。


「焦る必要なんてありませんよ」


「皆さんには、皆さんのペースがありますから」


その言葉に、教室の空気が少し和らぐ。


そして加藤は、ぱんっと軽く手を叩いた。


「……さて、そろそろ再開しましょうか」



メルの保護観察は、すでに解除されていた。


そして——


あの戦いの後、彼女はリーアの死を知らされた。


だが、メルは泣き崩れることも、取り乱すこともなかった。


ただ、少し笑って——


“最高にリーアらしい”


そう言っただけだった。


現在メルは、オルフェの防衛隊——本人曰く“用心棒”になるため、試験を受けている。


理由は“ヒマだから”と、いつもの調子で答えていた。



烈とクレアは、テツの散歩をしていた。


いつもの道を、テツが駆け回っている。


「ねぇ、烈くん」


クレアがふと口を開いた。


「私が、ももの汁好きだって知ってたの?それとも、たまたま?」


烈は少し考え、答えた。


「いや、だっていつも飲んでんじゃん」


「デスクの上、空き缶めっちゃ置いてあるし」


「しかも、箱で注文したやつ、よく届いてるだろ?」


「あれで気づかない方が変だって」


烈は肩をすくめながら笑った。


「……なるほど、そういうことね」


どうやら、自分ではそこまで分かりやすいと思っていなかったらしい。


テツが、烈の周りをぐるぐる回る。


その様子を見ながら、クレアは小さく微笑んだ。


(……でも、嬉しかったな)


そんなことを、静かに思っていた。



談話室。


「いやぁ……やっぱりこれ、どっかの出版社に持ち込んでみにゃい?」


閃は、音の描いた4コマ漫画を見ながら、しみじみと言った。


「えぇ……やっぱ恥ずかしい……」


音は顔を赤くしながら答える。


「れーにゃんも、そう思うよな゛?」


閃はなぜか語尾を強調し、怜へ話を振った。


「え……」


突然話を振られた怜は、一瞬固まる。


そして、4コマ漫画を見つめ——少し悩んだ末に口を開いた。


「あ、うん……なんというか……とても、独特……というか……うん」


かなり言葉を選んだ感想だった。


「閃くん、怜……ありがと……」


音は照れながらも、どこか嬉しそうに微笑んでいた。



とある海辺。


静かな波音が響く、その近くのコテージ。


そこには、ナンシーの姿があった。


窓の外では、アガレスが砂浜にしゃがみ込み、無邪気に砂山を作って遊んでいる。


その時——


ナンシーの横に置かれていたスマカから、声が響く。


『さて……そろそろ、ワシらも再起しちゃう?』


ヨハンだった。


「総帥がお望みなら」


ナンシーは静かに答える。


(エドワード……お前は本当に凄いやつだったよ)


ヨハンは心の中で呟く。


(だからこそ——)


その瞳に、狂気にも似た執念が宿る。


(私は、“アレ”を超える悪魔を作りたい)


静かな海辺に、不穏な気配だけが残っていた。



「よしっ!そろそろパトロール行くか」


閃は談話室の椅子から立ち上がった。


「ええ」


怜も静かに立ち上がる。


「ふたりとも、行ってらっしゃい」


音は柔らかく微笑みながら言った。


2人は笑顔で頷き、談話室を後にする。


外へ出ると——


空には、澄み渡るような青空が広がっていた。


どこまでも高く、穏やかな空。


「めっちゃいい天気……」


閃は思わず呟く。


「そうね」


怜も同じことを思っていたようだった。


「なーんか、デート日和って感じ?」


閃はアホ毛をくるりとカールさせ、イタズラっぽく笑う。


「あほ」


怜は呆れたように返したが、その表情には笑みがこぼれていた。



あれから——まるで止まっていた世界は、再び動き始めていた。


各地では、再び争いの火種が生まれている。


天華連盟では、残党勢力が動き出していた。


ヨハンもまた、必ず再び現れるだろう。


世界は、結局ほとんど変わっていない。


争い。


憎しみ。


人の愚かさも、何ひとつ。


しかし——


変わらないものは、他にもある。


ファクターズは、これからも守り続ける。


誰かの笑顔を。


誰かの居場所を。


そして、仲間との絆を。


どれだけ世界が変わろうと、その想いだけは——決して変わることはない。


~エーテルコード fin~

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