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エーテルコード  作者: エトコッコ
第10章:いつでも、誰かが

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第7話「集まる力」


ファクターズとファイの激しい攻防は続いていた。


氷の大地は幾重にもひび割れ、巨大な氷山すら、一瞬で消し飛んでいく。


凄まじい轟音と閃光が南極を揺らした。


(キリがないな……もっとも、それはあちらも同じだろうが)


エドワードは静かに思う。


「ねぇ、パパ」


アリスが、不意に口を開いた。


「あのロボットたちの光……なんだか、私が出す光に似てるね」


アリスは、4機のEDが纏う粒子を見つめながら言った。


「……確かに、そうだね」


エドワードは静かに答える。


完全同調と、光のエーテル。


そこに何か因果関係があるのか——。


エドワードの脳裏に一瞬その考えがよぎる。


だが、今それを考察している場合ではない。


(あのフォーメーション……あれを崩せば、何か変わるのか?)


エドワードは、依然として固まって戦い続ける4機へ視線を向けた。


「アリス。あのロボットたちを見て、何か見えたりしなかったかい?」


「んー……」


アリスは首を傾げる。


そして、ふと何かに気づいたように声を上げた。


「あ!あのツノのロボットから、“線”みたいなのが伸びてて——」


「それが、他のロボットと繋がってるの、ちょっとだけ見えたかな?」


アリスはそう言った。


ツノのロボット——バサラヲのことだ。


(バサラヲを中心に線……?そして、あの戦い方……)


エドワードの目が鋭く細まる。


(そうか……!)


ついに、彼はファクターズの戦術の核心へ辿り着こうとしていた。



「アリス、戦い方を変えよう」


エドワードは静かに言った。


「あのロボットたちを引き離すんだ」


「うん!わかったわ」


アリスは素直に頷く。


(アリスが見た“線”……間違いなく限界がある)


エドワードは思考を巡らせる。


(だからこそ、あの4機は常に固まって戦っていた)


(そして——あの線こそが、完全同調の条件のひとつ)


エドワードは確信に近いものを感じていた。


次の瞬間、ファイの手に巨大な《光の剣》が出現する。


そして——


ファイは目にも止まらぬ速度で4機へ突撃する。


だが、その瞬間——閃の《雷化瞬来》が発動。


4機は雷光と共に、その場から瞬時に姿を消した。



「戦い方、変わったな」


閃が鋭く言った。


それまでの遠距離主体とは違う。


ファイは、明らかに接近戦を中心とした動きへ切り替えていた。


「完全同調さえ切れなければ……何とか持ちこたえられる!」


烈が叫ぶ。


だが、その時——


ファイが突然、動きを止めた。


「……止まった?」


怜が警戒するように呟く。


次の瞬間、ファイの全身が膨大な光のエーテルに包まれていく。


嫌な予感が走る。


そして——


《テレポート》で4機の目前へ出現した。


直後、《光の爆発》が発生する。


かつて、天華連盟の本拠地、そしてアメリカ第4支部を消し去った、あの光。


その爆発規模は凄まじく、1つの大陸さえ飲み込み、消滅させるほどだった。


しかし——


音の《風命守護》が、その爆発を真正面から受け止める。


風の障壁が、破滅の光を押し返していた。


だが——


ファイは間髪入れず、《光の剣》を振り下ろす。


(破られる!!)


音は直感した。


次の瞬間、《光の剣》が《風命守護》を切り裂き——巨大な斬撃がツムギへ迫った。


「させるかっ!!」


バサラヲが瞬時に前へ飛び出す。


ツムギを庇うように立ち塞がり、刀で斬撃を受け止めた。


しかし、その圧倒的な力に、刀身はヒビ割れていき、ついに折れてしまった。


そしてファイは、さらに追撃するように再び《光の爆発》を発動する。


光が、4機を飲み込んだ。



やがて、光が消えていく。


そこに立っていたのは——ファイのみだった。


4機のEDは、それぞれ大きく吹き飛ばされ、氷原の各所へ叩きつけられていた。


「——おいっ!!みんな大丈夫か!!」


最初に立ち上がったのは烈だった。


烈の叫びに応えるように、離れた場所にいた3人も次々と意識を取り戻していく。


各機の損傷は、驚くほど少なかった。


完全同調時に纏っている光の粒子が、4機を守っていた。


もし、これが通常状態だったら——4機は、跡形もなく消し飛ばされていただろう。


「閃!!テザリングが……!!」


烈が焦った声を上げた。


その言葉に、閃はハッとする。


《ソウル・テザリング》は、完全に断ち切られていた。


こうなれば、完全同調を維持できる時間は、残り僅かしかない。


閃はすぐにモニターへ視線を向ける。


そこに表示されていた数字は——残り15秒。


(……っ!!)


閃の表情が強張る。


最も懸念していた事態が、ついに現実となっていた。



こうなってしまった時のための“最終手段”は、考えてあった。


だが、それはあまりにも運任せな方法だった。


残された時間の中で、再び《電繋》を4機へ繋ぎ直し、その場から離脱する。


それも選択肢の1つではあった。


しかし——


たとえ逃げ切れたとしても、アリスの《テレポート》から逃れることはできない。


逃げた先で、再び追いつかれる。


そんな未来が、容易に想像できた。


「閃!!行けっ!!」


烈が叫ぶ。


時間がない。


その声と同時に、閃は《雷化瞬来》を発動する。


その場から瞬時に姿を消した。


残された3人も、即座に動く。


「《アイスヴェール》」

「《エアマスター》!」

「《火炎装》!!」


それぞれが自身の強化スキルを重ね掛けし、限界まで力を引き上げる。


氷、風、炎——3つのエーテルが荒れ狂い、周囲の氷原を震わせた。


「踏ん張るぞ!!」


烈は叫ぶ。


「ええ……!」

「うん!!」


2人も強く応えた。


レンゴク、シラユキ、ツムギ。


3機は武器を構え直し、迫り来るファイへ再び突撃していく。


残された時間は、もう僅かだった。



砂浜。


そこには、イノとエンプティアの姿があった。


かつて、サムを見送った場所。


静かな波の音だけが響いている。


(……ん?この感覚……)


イノは、不意に何かを感じ取った。


次の瞬間——


目の前に、突如バサラヲが現れる。


「……閃!!」


イノは目を見開いた。


「イノ!!説明は後で!! ついてきて!!」


閃の声は、これまでにないほど切羽詰まっていた。


「わかった!」


イノは一瞬で状況を察する。


「サンキュ!!」


迷うことなく、エンプティアへ駆け込む。


その間に、閃は《電繋》を発動し、バサラヲとエンプティアを繋いでいた。


そして——


イノが搭乗を終えた瞬間、2機は、その場から消えた。


残り7秒。



上空。


そこには、リーアの駆るレギオンΩの姿があった。


どこかへ移動している最中なのか、機体は高速で空を滑空している。


すると、次の瞬間——


突如、目の前にバサラヲとエンプティアが現れた。


「わぁぁ!!?」


あまりにも突然の出現に、リーアは大声を上げる。


手にしていたチョコレートが、ぽろっと落ちた。


「ちょ!!アンタらどこから——」


「リーア!!時間が無い!!ついてきて!!」


閃は、リーアの言葉を遮るように叫ぶ。


「はぁ!?どこに——」


リーアが言い終えるより早く、《電繋》が発動。


レギオンΩを一瞬で繋いだ。


そして——


3機は、その場から消失する。


残り2秒。



南極。


エンプティアとレギオンΩを連れたバサラヲは、再び激戦の地へと帰還した。


その直後——


バサラヲを包んでいた光が消えた。


それは、シラユキ、レンゴク、ツムギも同じだった。


エーテル切れにより、各EDは自動的にオートモードへ切り替わる。


静まり返った空気の中、烈が小さく呟いた。


「……閃、間に合ったか……」


最終手段——それは、イノとリーアを連れてくること。


つまり、ファクターズだけではなく、“共闘”という形へ持ち込むことだった。


だが当然、イノもリーアも、そんな事情など知るはずがない。


タイミングが少しでもズレていれば——


あまりにも綱渡り。


あまりにも運任せ。


それでも——


ファイに対抗できる可能性がある存在を考えた時、ファクターズ全員の頭に浮かんだのは、この2人しかいなかった。



「あれは……イノくんとエンプティア!?それに、天華の赤いレギオン!!」


エドワードは驚きの声を漏らした。


(なるほど……閃くんがあのスキルで連れてきたのか)


エドワードはすぐに状況を理解する。


そして同時に、自身の推測が正しかったことも確信した。


(やはり……アリスの言っていた“線”を断てば、完全同調は維持できない)


4機から完全同調の光は、すでに消えている。


(あれほどの力だ。再びあの状態になるには、何か大きな条件が必要なはず)


(つまり——この戦闘中に、再び完全同調へ至るのは、ほぼ不可能……!)


エドワードの分析は的確だった。


そんな中、アリスはふと、レギオンΩへ視線を向ける。


「あれ?あの赤いロボット……前に見たのだよね?」


アリスは首を傾げながら言った。


「そうだね」


エドワードは静かに頷く。


「あれが、一応リーダーのロボットだよ」


そう言って、赤く染まったレギオンΩを見つめた。



「閃たちの状況、わかったよ」


イノが静かに言った。


「え?」


閃は目を瞬かせる。


まだ何も説明していない。


ましてや、イノにとってファイは初めて見る存在のはずだった。


「なんか、不思議なんだけどさ」


イノは続ける。


「閃がエンプティアに、レーザーみたいなケーブル繋いだよね?」


「あれを通して、ボクの《テレパス》が反応したんだ」


「閃たちがここまでどう戦ってきたのか、ボク達に何をしてほしいのか……」


「全部、なんとなく流れ込んできた」


イノはそう説明した。


つまり——


閃の《電繋》と、イノの《テレパス》。


2つの能力が偶然にも相互作用を起こした結果だった。


「マジか……そりゃ助かる……」


閃は安堵したように呟く。


「はぁ〜……」


横で、リーアが盛大なため息をついた。


「あ、リーア。ごめん……」


閃は申し訳なさそうに言う。


「いやさ、ウチだってそこまで鈍感じゃないから」


リーアはファイへ視線を向けた。


「この状況見れば、アンタがウチに何求めてるかくらい分かるよ」


赤いレギオンΩのモノアイが、静かに光る。


「——つまり、ウチに“アイツ”と戦えってことでしょ?」


「……時間稼ぎをしてほしい」


閃は真っ直ぐ言った。


「時間稼ぎ、ね……」


リーアは小さく呟く。


そして、ふっと笑った。


「……ま、しゃーないね」


「リーア、ありがとう。お礼なら何でもする」


閃が言うと、リーアは呆れたように笑った。


「いーよ。メルの面倒見てくれてんだし」


そう言って、操縦桿を握り直す。


「そーと決まれば」


リーアは口角を上げた。


「——行きますか」

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