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エーテルコード  作者: エトコッコ
第10章:いつでも、誰かが

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第6話「不屈」


ファイから放たれた光——《ビーム》は4つに分かれ、4機のEDへと襲いかかった。


4機は、それぞれ最小限の動きで回避する。


しかし、《ビーム》は空中で軌道を変え、再び4機へ向かった。


(追尾型か……!)


閃は息を呑む。


だが——


閃は《雷撃》、烈は《火炎波》を放ち、《ビーム》を相殺。


怜は《アイスシールド》、音は《エアフィールド》で、それぞれの攻撃を防ぎ切った。


次の瞬間、ファイは無数の《ビーム》を一斉に放出する。


先ほどとは比べ物にならない圧倒的な物量。


怜のシラユキが前へ出る。


「《アイスウォール》」


4機を包み込むように、巨大かつ分厚い氷壁が出現する。


無数の《ビーム》が、激しい閃光と轟音を撒き散らしたが、《アイスウォール》はそれらを完全に防ぎ切った。


(ファイの攻撃を防いでいる……スキルによる防御力が、想像以上に上がっているな)


エドワードは静かに思う。


すると——


ファイは片手をかざし、巨大な《ビーム》を放った。


極太の閃光が、《アイスウォール》を一瞬で消し飛ばす。


その瞬間——


バサラヲの《雷刃波斬》

シラユキの《氷槍》

レンゴクの《火炎弾》

ツムギの《風刃波斬》が、全く異なる方向から同時に放たれた。


アリスは即座に《バリア》を展開し、すべての攻撃を無効化する。


「一瞬で、あんな位置に……!?」


エドワードは目を見開いた。


4機のEDは、先ほどまでいた場所から、一瞬で別の位置へ移動していた。



「やっぱり、通常のスキルじゃ歯が立たねぇな……!!」


烈は言った。


完全同調状態では、通常時のエーテルスキルですら桁違いの威力へと強化されている。


だが、相手はファイ。


そして、あの《バリア》。


リーアの話によれば、天華のフレアⅢすら防ぎ切ったという。


最大照射ではなかったとはいえ、その事実はあまりにも重い。


仮に最大照射だったとして、破れていたのか。


いくら強化されているとはいえ、通常のエーテルスキルだけで突破できる相手ではない。


そのことは、全員が理解していた。


「怜、烈!“あれ”の準備を!」


閃が叫ぶ。


「ええ」

「わかった!」


2人は頷き、完全同調スキル発動のため、膨大なエーテルを集中させ始めた。


「音!作戦通り行こう!」


閃は続けて言う。


「うん!」


音は力強く答えた。



(妙な動きだな……)


ファクターズの戦い方に、エドワードは違和感を覚えていた。


今のEDは圧倒的な力を得ている上、周囲は遮蔽物ひとつない氷の大地。


ならば、本来は縦横無尽に駆け回り、強力なスキルを次々と叩き込んできてもおかしくない。


だが、固まったまま動いている。


ファイは再び4機へ向け、両手から極太の《ビーム》を放った。


しかし——


次の瞬間、4機の姿は消えていた。


「あ、私と同じ力持ってる」


アリスが不意に呟く。


その言葉に、エドワードは目を見開いた。


「そうか……!《テレポート》か!」


ファクターズが突如として南極に現れた理由も、それで説明がつく。


気づけば、周囲に4機の姿はない。


先ほどまでいた場所から、遥か離れた位置へ移動していた。


——だが、その直後。


4機の眼前に、突如ファイが現れる。


アリスも《テレポート》で、一瞬にして距離を詰めてきたのだ。


「わ!来た!」


閃が叫ぶ。


その瞬間、《雷化瞬来》を発動。


4機は再びその場から姿を消した。


「あ、またいなくなっちゃった」


アリスは再び《テレポート》を発動する。


そして次の瞬間には、再び4機の目前へ現れていた。


4機が消え、アリスが追いつく。


南極の氷原で、まるでいたちごっこのような攻防が繰り返されていた。



「そろそろ行けるか!?」


閃は怜と烈へ叫ぶ。


「いける!」

「大丈夫だ!!」


2人はすでに、完全同調スキル発動の準備を終えていた。


その瞬間——


ファイが再び姿を現す。


だが今度は、少し距離を取った位置へ《雷化瞬来》で移動した。


(エーテル切れか……!?)


エドワードは眉をひそめる。


わざわざスキルを使用し、至近距離への移動。


その急な変化から、エーテル消費が限界に近づいているのではないか?と考えた。


ファイは、両手を静かにかざし——先ほど以上の《ビーム》が放たれた。


圧倒的な光の奔流が、4機を一瞬で飲み込む。


「さすがに、あの状態でも——」


エドワードがそう呟いた、その時だった。


光の中から、ツムギが現れた。


そして——


巨大な“風のバリア”が展開されていた。


輝きを帯びた風が幾重にも渦を巻き、ファイの《ビーム》を真正面から受け止めていた。


音のもうひとつの完全同調スキル——《風命守護ふうめいしゅご》。


「あ、あれを防いだだと……!?」


エドワードは驚愕した。


ファイの攻撃を、真正面から完全に防ぎ切ったのだ。


◆◆◆


時は、少し遡る。


「完全同調スキル……!いいこと思いついた!」


閃は勢いよく立ち上がった。


「上手くいけば、《ソウル・テザリング》の弱点、カバーできるかもしんない!」


「お!どんなアイデアだ?」


烈が身を乗り出す。


「《ソウル・テザリング》と同じだよ。つまり“役割分担”!」


閃はそう言って、続けた。


「俺の完全同調スキル、実はなんとなくイメージ出来てるんだけど……ほら、ファイの瞬間移動、見たろ?」


「あれ、多分さ……俺も出来そうな気がする」


「んで、もし出来たら、移動制限っていう弱点をカバーできる」


閃の言葉に、3人は頷く。


「で、音はもう完全同調スキル持ってるけど、もうひとつ作ってほしい」


「うん!もちろん、そのつもりだよ!」


音は迷いなく答えた。


「音に作ってほしいのは、防御スキル」


閃が言う。


「防御スキルなら、もう持ってんじゃねーか」


烈が不思議そうに首を傾げた。


「いや、完全同調スキルとしての防御スキルってこと」


「多分、それくらいじゃないと、ファイの攻撃は防げない」


閃は言った。


「たしかにな……」


烈も納得する。


「うん!わかった!」


音は力強く頷いた。


「そして、怜と烈は——攻撃スキル担当」


「それはもう……ものすごいやつを!」


閃は自信満々に言い切る。


(語彙力……)


怜は内心で静かにツッコんだ。


「おう!得意分野だ!任せとけ!」


烈は豪快に笑う。


「わかったわ」


怜も静かに頷いた。


つまり——


閃が“移動”。


音が“防御”。


そして、怜と烈が“攻撃”。


ファクターズは、それぞれの役割に特化した完全同調スキルで、ファイへ挑もうとしていた。



一瞬で移動可能とはいえ、閃の《雷化瞬来》の移動先は、閃自身にしか分からない。


そして、怜と烈は攻撃の際、狙いを定める必要がある。


つまり、《雷化瞬来》で移動を繰り返しながら、怜と烈がファイを狙うのは不可能に近い。


少しでも、その場に留まる必要があった。


だが、その僅かな隙こそが、最大の弱点。


ファイほどの相手なら、その隙を逃さず攻撃してくるだろう。


《風命守護》は、そのための防御——相手の攻撃を防ぎ、こちらの攻撃を狙うためのスキルだった。


そして——


左右から、シラユキとレンゴクが前へ出る。


レンゴクの両手には、赤黒く脈動する巨大な球体が生成されていた。


まるで、太陽そのものを圧縮したかのような禍々しい熱量。


「喰らえェェェ!! 《炎獄煉弩えんごくれんど》ォォォ!!」


烈の咆哮と共に、《炎獄煉弩》が放たれる。


超高密度の炎が一直線にファイへ襲いかかった。


アリスは即座に《バリア》を展開する。


しかし——


《炎獄煉弩》は、あっさりと《バリア》を破壊した。


「なっ……!?」


エドワードは目を見開く。


アリスは即座に《バリア》を張り直す。


だが、それすらも再び砕かれた。


しかし同時に、《炎獄煉弩》もまた、その場で消滅する。


拮抗——そう思われた瞬間だった。


アリスは《テレポート》で距離を取ろうとする。


だが、その瞬間——


無数の巨大な氷柱が、ファイの全身を貫いた。


「《氷千無双ひせんむそう》……」


怜が静かに呟く。


それは、刺さった瞬間に実体化する“絶対不可避”の氷柱。


回避も、防御もまるで意味を成さない。


アリスが《テレポート》を発動するより前に——すでに貫いていた。



傍から見れば、生きているとは到底思えない光景だった。


しかし、ファイはゆっくりと動き出した。


次の瞬間、全身に突き刺さっていた氷柱が一瞬で消滅する。


さらに、貫かれていた箇所までもが、まるで最初から傷など存在しなかったかのように修復されていった。


4人は言葉を失う。


『君たちの力……予想を遥かに超えていた。正直、驚いたよ』


エドワードは静かに言った。


『それでも——ファイには絶対に勝てない』


『アリスに“死”という概念は存在しない。それは、ファイとて同じ……』


『どれほどダメージを与えようと、瞬時に元へ戻る』


『そして……アリスのエーテル量が尽きることは決してない』


『つまり——“無限”』


エドワードの声が、冷たく南極の空気に響く。


『もう一度言う。ファイには絶対に勝てない』


いかに彼らでも、この現実を突きつけられたら、心が折れるはず——


エドワードはそう思った。


しかし——


「勝てなくても、いいんですよ……」


静かに口を開いたのは、閃。


「こちらの目的は、あなたを止めること」


怜が続ける。


「俺たちは、そんなんじゃ折れねぇよ!!」


烈は不敵に言い放った。


「わたし達は、やれることを最後までやります!!」


音の声にも、一切の迷いはない。


圧倒的な力の差、絶望的な現実——それを見せつけられてなお、ファクターズの心は折れていなかった。



エドワードは、不意に思い出していた。


閃、怜、烈、音——4人が、初めてオルフェへやって来た日のことを。


未熟でも、真っ直ぐだった少年少女たち。


(皆、本当に……成長したな……)


胸の奥に、言葉に出来ない痛みが走る。


エドワードはそっと胸元を押さえた。

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