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エーテルコード  作者: エトコッコ
第10章:いつでも、誰かが

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第5話「天啓」


(ファクターズ……なぜここに……!?それに、あれは完全同調……!?)


突如として現れたファクターズ。


そして、完全同調状態へ移行している4機のED。


あまりにも予想外の状況に、エドワードは動揺を隠せなかった。


『エドワードさん!そこにいるんですよね!?』


次の瞬間、閃からファイへ通信が入る。


ファイの頭部にあるコクピットは複座式となっており、前方にアリス、後方にエドワードが搭乗していた。


「一体、なぜここが——」


そう言いかけた瞬間、エドワードは自ら答えへ辿り着く。


「……なるほど。ヨハンか」


エドワードは低く呟いた。



「エドワードさん!一体、何をしようとしてるんすか!?」


烈が問いかける。


『……“世直し”だ』


エドワードは低い声で答えた。


「世直し……?」


音が小さく呟く。


『そうだ』


エドワードは静かに続けた。


「……エドワードさんの言う“世直し”って——」


「天華やヨハンみたいな、争いの火種になるような連中を消して……」


「犠牲になった人たちを、アリスの力で蘇らせる——そういうことですか?」


閃は真っ直ぐに問いかけた。


『その通りだよ、閃くん』


エドワードは迷いなく答える。


「トーマスさんと松永主任が言ってました。恐らく、そうなんじゃないかって……」


閃がそう言うと、エドワードは黙り込んだ。


「エドワードさん!!何で俺たちがここに来たか、分かりますか!?」


烈が強い口調で言う。


『止めに来た——だろ?烈くん』


エドワードは冷静な声で返した。


「その通りっすよ!!」


烈は即座に言い返す。


『止める……か』


エドワードは小さく呟いた。


「わたしたちは……!エドワードさん達と戦いたいわけじゃありません!」


音も声を上げる。


音の言う通りだった。


ファクターズは、ファイと戦うためにここへ来たわけではない。


あくまで、“止める”ために来たのだ。


戦いは最後の手段。


できることなら、戦わずに説得したかった。



『それは……私だって同じだよ、音くん』


エドワードは静かに言った。


『君たちとは戦いたくない』


『だが……今さら止める気もない』


その声は、どこまでも淡々としていた。


「エドワードさん……!」


音が悲しそうに声を漏らす。


「……僕らも、引く気はありませんよ?」


閃は真っ直ぐに言った。


『……そうか』


エドワードは短く返す。


「何でだよ!?大体、何で止めに来たか——」


『分かっているさ』


烈の言葉を遮るように、エドワードは口を開いた。


『ファイの……アリスの存在が世に知れ渡った時、世界の均衡は、間違いなく崩れる』


『そして、かつての世界大戦のような、大きな争いが再び起きる』


『さらに——これまでも研究対象にされてきたエーテルコードの存在は、今まで以上に研究や迫害の対象にもなるだろう……』


“古代より、エーテルコードは、いつの時代も争いの渦中にいた”——


その言葉は、争いが起きるたび、人々の間で繰り返されてきたものだった。


『それらを未然に防ぐために、君たちは来たんだろう?』


エドワードは、ファクターズへ静かに問いかけた。



「そこまで分かってて……!!」


烈は声を荒げた。


トーマスも松永も言っていた。


“エドワードほどの人間なら、この先に待つ結末など、理解できないはずがない”——と。


『確かに、私がやろうとしていることは、ある種……非人道的なのかもしれない』


『だが、いつの時代も、革命には大いなる犠牲が伴ってきた!』


『しかし、アリスがいれば——その犠牲すら、無くすことが出来る!』


エドワードの声に、徐々に熱が帯びていく。


『この世には、何の罪もない人々が犠牲となり——本来、死に値するようなクズ共が、のうのうと生きている!』


『もし、そんな間違った世界を、確実に変えられるとしたら!?』


『そして……この世界から、“死”そのものを無くせるとしたら!?』


『この世界は、今よりもっと、より良いものになる!!』


エドワードは強く言い切った。


「……“死”って、そんな簡単なもんなんすか……!!」


烈が低く呟く。


その脳裏には、亡くなった美晴の姿、そして散っていったクリスの姿が浮かんでいた。


「自分が悲しいから、嫌だからって、人を生き返らせるって……!そんなの、生きてる側のエゴじゃないんですか!?」


閃が言う。


『確かに、そう感じる人がいることも分かっている』


『もちろん、望まない者を無理に生き返らせるつもりはない』


『だが……選択肢は、あっていいはずだ』


エドワードは静かに返した。


「その基準って、何なんですか!!結局、それだって生きてる側の判断じゃないんですか!?」


閃はさらに問い詰めた。


『……そうかもしれないな』


エドワードは静かに認めた。


『それでも——私は、引く気はない』



「エドワードさん……本当のことを教えてください」


音が静かに言った。


「アリスちゃんが亡くなって……きっと、耐えきれないくらい悲しくて……」


「でも、アリスちゃんが“光のファクター”で、それで生き返って……」


「エドワードさんの本当の願いって……また、アリスちゃんに会いたかった……そうだったんじゃないんですか……?」


音は真っ直ぐに問いかけた。


しばしの沈黙。


『……ああ。最初は、そうだった』


エドワードは静かに答えた。


『アリスが最初に死んだ時……まるで、世界そのものが終わったような絶望だった』


『アリスさえ戻ってきてくれれば——その時の私は、そう思っていたよ』


その声には、かつての悲しみが滲んでいた。


『……だが、この世界には、私以上に苦しみ、理不尽な目に遭っている人々が、数え切れないほどいる……!!』


『私は、そういう人々を救いたい!!アリスの力で!!』


『……それが、私に課せられた運命だ』


エドワードは強く言い切る。


「エドワードさんの言ってること……正直、わかります」


音は小さく呟いた。


「でもっ……!それでも言わせてください!!」


音は顔を上げる。


「エドワードさんは、アリスちゃんと一緒に……平和に暮らしてください!!」


その言葉に、一瞬だけ空気が止まった。


『私だけが、幸せに暮らすなど……そんなこと出来ない……!!』


『出来るはずがない!!』


エドワードは、苦しむように言った。



「……アリスは、どう思ってる?」


それまで黙って話を聞いていた怜が、静かに口を開いた。


『んー、正直に言うと……どっちの言い分も、すごく分かるの』


アリスがゆっくりと答えた。


『どっちも間違ってるとは思えないし、私としては……半分半分って感じかな』


その声音には、迷いも、優しさも混ざっていた。


『だけどね——』


アリスは少しだけ微笑むように続ける。


『やっぱり私は、ずっとパパの味方でいたい』


『それが、私の答え』


アリスはそう言った。


「……そう」


怜は小さく呟いた。



『君たちの実力は、よく知っている。そして、その完全同調——』


『さらに力をつけてきたのだろう……』


エドワードは静かに言った。


『だが——ファイに勝つことは、“100パーセント”不可能だ』


その言葉には、一切の迷いがなかった。


『これは、挑発でも脅しでもない』


『同じファクターである君たちなら……分かるはずだ』


「……何が言いたいんですか?」


閃が問い返す。


『単刀直入に言おう』


エドワードは短く息を吐いた。


『ファクターズの諸君——頼む。引いてくれ』


『戦ったとしても……結果は、見えている』


エドワードの言葉が、決してハッタリなどではないことは、ファクターズも十分すぎるほど理解していた。


だが——


「引くわけないでしょう」


閃は即答した。


「そんなに言うなら、そっちが引いてくれよ!」


烈が言い放つ。


「エドワードさん!!」


音も声を上げた。


『お互いに、引けない……か』


エドワードは静かに呟く。


そして——


ゆっくりと空へ浮かび上がるファイ。


「リーダーより各機へ——これより戦闘に入る!!」


「了解!」


閃の号令と同時に、4機のEDがそれぞれ武器を構える。


その瞬間——


ファイから、眩い光が放たれた。

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