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エーテルコード  作者: エトコッコ
第8章:崩壊

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第8話「ファイ②」


天華連盟・本拠地。


深夜――それは、前触れもなく訪れた。


直後、ジョウの元へ緊急通信が入る。


そして、“それ”はモニターに映し出された。


黄金に輝く、巨大な人型兵器――ファイ。


兵士の報告によれば、それは文字通り“突然”現れたという。


出現の兆候は一切なく、ゆえに警報は何ひとつ作動していなかった。


モニター越しにそれを見つめながら、ジョウは静かに思考を巡らせていた。



「今すぐΩチームを呼び戻せ」


緊急警報が鳴り響き、兵士や職員が慌ただしく動き出す中、チャンは冷静に指示を下す。


複数の兵士を従え、ジョウの元へ向かうためエレベーターに乗り込んだ。


「……チャン様、アレは一体……」


兵士の1人が不安げに口を開く。


「さぁな」


別の兵士が続ける。


「地球外生命体……とする見方もあるようですが」


「フッ……お前はそれを信じるか?」


鼻で笑いながら、チャンが問い返す。


わずかな沈黙の後――


「……信じたくは、ないですね」


兵士はそう答えた。



日本へ向かっていたΩチームは、緊急帰還命令を受け、本拠地へと引き返していた。


通信兵から伝えられるのは、ただ一つ。


――未確認の存在が出現した。


「何?ウチュー人なの?それ」


リーアが軽い調子で問いかける。


「……その可能性も、十分にあります」


「へぇ〜」


リーアはむしろ、少し楽しげだった。


(……なんだ、このザワザワした感じは……)


サキはあくまで冷静ではあったが、胸の奥に“経験したことのない不快感”が静かに広がっていた。


「んもぉ〜!!せっかく久しぶりにアイツらと戦えると思ったのに!!ムカツキ!!」


メルは露骨に不機嫌だった。


「まぁまぁ、メル。もしかしたらファクターズより強いかもよ?」


リーアが軽くなだめる。


「ちーがーうーのっ!!メルはアイツらとヤリたいのっ!!」


あくまでメルの目的はファクターズ。


そんなやり取りを続けながら、3機は高速で本拠地へと向かっていた。



世界屈指の技術力と、圧倒的な軍事力を誇る天華。


突発的な事態にも関わらず、統率の取れた動きで瞬く間にファイを包囲した。


地上部隊、空中戦力、全防衛システムが一斉に展開される。


さらに――軌道衛星兵器、ギガ・レーザー砲『フレアⅢ』の照準も、すでにファイへと固定されていた。


その間、ファイは一切動かない。


ただ、そこに“在る”だけだった。


ジョウがスピーカー越しに対話を試みようとした、その瞬間――司令室に通信が入る。


ゆっくりと応答するジョウ。


映し出されたのは――エドワード。


「貴様……オルフェの……」


ジョウの目が鋭くなる。


「となると、アレはオルフェの機体か」


チャンが冷静に分析する。


『そうだ。確かに私がオルフェで作った……いや、“作らせた”』


その言葉に、チャンの目がわずかに細まる。


「その言い方……気に食わんな」


『“ファイ”を完成させるために、オルフェを利用していた――そう言えば分かるか?』


エドワードは、わずかに笑みを浮かべた。


「……証拠は?」


『アメリカ支部を見ろ』


モニターが切り替わる。


そこに映ったのは、存在していたはずのアメリカ支部が、完全に消失した光景だった。


「これは……」


ジョウが息を呑む。


『口封じだ』


あまりにも淡々とした一言。


「なるほど……」


チャンが低く呟く。


「そして……次はここを攻めるつもりか?たった1人で」


『そうだ』


「大国の戦力を持ってしても落とせぬ、この難攻不落の天華を……!!愚かにも程がある!!」


『……お前の目の前にいるのは、“神”であり、“女神”だ』


その言葉を聞いた瞬間、ジョウは全軍に攻撃準備を命じた。


「エドワード……ついに気でも触れたか。くだらん」


そう吐き捨てるチャン。


「愚かな男よ!!貴様を始末した後、オルフェは根絶やしにしてやる!!」


次の瞬間、夥しい銃弾と爆撃が、一斉にファイへと降り注ぐ。


しかし、ファイは黄金のバリアを展開し、その全てを“完全に”防ぎ切った。


それでも攻撃は止まらない。


数秒――いや、数十秒に及ぶ飽和攻撃。


やがてジョウは決断する。


「攻撃停止!!全隊、即時退却!!」


命令は瞬時に伝達され、部隊は一斉に後退。


同時に、本拠地は巨大地下シェルターへと移行を開始した。


『司令官!!準備完了です!!』


報告と同時に、ジョウは素早くパスワードを入力すると、二重ロックのスイッチが解放される。


「消えろ……化け物め」


ジョウがスイッチを押すと、フレアⅢから極太のレーザーが一直線に放たれた。



「え、ウソ!!フレアⅢ!?聞いてないんだけど!!」


天を裂く光を見て、リーアが声を上げる。


それも無理はなかった。


フレアⅢが実戦投入されるのは、前代未聞。


彼女たちが知るのは、低出力の実験照射のみ。


それですら規格外の威力だった。


「……!!」


サキの額に汗が滲む。


フレアⅢに対してではない——それを向けられている対象に対しての恐怖だった。


「ヤバくない?あれ……前が8%でしょ?今回、倍以上あるよね?」


メルの声にも、わずかな緊張が混じる。


夜を塗り潰すほどの閃光。


それは数分に渡り、途切れることなく照射され続けた。



「そんな……あり得ん……!!」


ジョウの声が震える。


光が消えたその先には——


無傷のまま、立ち続けるファイ。


(威力は抑えたとはいえ……長時間照射だぞ……!?)


チャンも言葉を失う。


(フレアⅢに耐える存在など……あり得ない……存在しない!!いくらエーテルファクターといえどっ……!!)


その時、チャンは何かを悟り、小さく呟いた。


「エーテル……ファクター……?」


『気は済んだか?』


エドワードの声に、2人は何も返せなかった。


『ならば――消えてもらおう』


一拍の静寂。


『貴様らのようなゴミ共は――永遠に』


ファイの身体が、光に包まれる。


溢れ出した光は静かに膨張し――


逃げ場も、抵抗も許さぬまま、周囲のすべてを、確実に飲み込んでいった。

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