表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第8章:崩壊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/63

第5話「とまどい」


深夜2時。


寝息をたてていた閃は、突然飛び起きた。


(イノ!?)


前と同じだ。


イノは《テレパス》を使い、閃の夢を通して“自身の追体験”を見せてきていた。


それは、イノがイシュタールを消滅させた、その一部始終。


当然、その情報はまだこちらには入っていない。


だが、閃には見えてしまった。


ただ事ではないと察した閃は、すぐに司令室へ向かった。



司令室のドアを開けると、そこには仮眠を取っていたリオの姿があった。


閃はオーキュラムを起動し、イシュタール基地の座標を呼び出す。


映し出されたのは——


巨大隕石が落ちたかのような、底の見えないクレーター。


基地は跡形もなく消え去っていた。


(イノがやったのか……)


あまりの光景に、閃は言葉を失う。


「ん……あれ……閃ちゃん?」


物音で目を覚ましたリオが、アイマスクを上げながら不思議そうに見る。


「あ、リオっち……起こしてごめん……」


明らかに様子がおかしい。


「どうしたの?」


リオは起き上がり、水を一口飲みながら問いかけた。


閃は深呼吸をし、モニターの映像を見せ、自分に起きたことをリオに説明した。


話し終えた頃には、リオも完全に言葉を失っていた。


「俺も……正直、何が何だか……」


閃自身も困惑している。


「とりあえず、連絡しなきゃ!」


リオが即座に判断する。


「俺がエドワードさんに直接話すよ」


「じゃあ私は副総帥と松永主任に連絡するわ!」


2人はすぐに、それぞれの連絡先へアクセスした。



エドワードは地下7階にいた。


大きなベッドには、ぬいぐるみに囲まれてアリスが眠っている。


その傍ら、デスクで仕事をしていたエドワードの胸ポケットで、スマカが静かに震えた。


この時間帯の着信は珍しくない。


だが、発信者は閃。


しかも深夜。


エドワード、何か妙な胸騒ぎを覚えた。


ベッドから少し離れ、電話を取る。


「閃くん、何があった?」


「夜分にすみません、エドワードさん。実は——」


閃は簡潔に状況を伝えた。


「な……!?わかった、すぐ向かう」


通話を切ると同時に、エドワードは立ち上がる。


「パパ、またお仕事?」


ベッドから、アリスの声がした。


「アリス、起こしてしまったね。すまない」


優しく頭を撫でた。


「すぐ戻るよ。愛してる」


額に軽くキスを落とす。


「うん。私も愛してる、パパ。いってらっしゃい」


「行ってくるよ」


エドワードは静かに部屋を後にした。



司令室には、エドワード、トーマス、松永が集まっていた。


閃が改めて説明を行う。


「これは……どう解釈すべきか」


トーマスが唸る。


「天華と並ぶ脅威だったイシュタールが、消滅……」


松永も低く呟いた。


「……ヨハンのことだ。“この展開”すら想定済みだろう」


エドワードは冷静に言い切る。


(そろそろ来るか……)


閃は“いつものパターン”を予感していた。


――その瞬間


『そのとーり!さっすがワシの親友』


モニターに浮かぶ、“GIGAS”の文字。


ヨハンだった。


(ほーら来た)


閃は内心で呟く。


『にしても、もう知ってたのかよー。せっかく驚かせようと思ってたのにー』


「残念だったな、ヨハン!」


トーマスが返す。


『残念?何が?私(GIGAS)も“右腕”も“左腕”も、ちゃんと残ってるけど?』


『それに世界中に“お友達”もたくさんいるしな。いやぁ、持つべきものはやっぱ友だよな!』


「ヨハン……お前の野望は私が終わらせる」


エドワードの声は静かだが、強い。


『おっ?その言い方……お前の“作品”も完成間近ってことか?』


どこか楽しげなヨハン。


(作品……?)


閃は引っかかりを覚えた。


『楽しみだよ、エド。お前の最高傑作を拝むのがな!!アッハハハ!!』


ヨハンの笑いが司令室内に響いた。


「……ところで、イノはどうする?」


閃が問う。


『あー、イノちゃん?もうイシュタールじゃないし、知らねー』


軽く言い放つヨハン。


『でもさ、ゼクストのおかげで、すっげー良いデータが取れたよ。彼らには本当に感謝してる』


『だから“エンプティア”はプレゼントってことで♡』


「ふぅん」


閃は短く返した。


『じゃ、またね〜 ♡』


通信は途切れた。


「……どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだ……!!」


トーマスが吐き捨てる。


「……総帥、今後の対応は」


松永が言った。


「……これから協議しよう」


エドワードは頷き、閃とリオに目を向ける。


「閃くん、宝生くん。ありがとう。あとは休んでくれ」


「はい」

「失礼します」


2人は司令室を後にした。


時刻はすでに4時を回っていた。



「閃ちゃん……お姉ちゃん、もう無理……おやすみ……」


「おやすみ、リオっち」


リオは談話室でそのまま眠りに落ちた。


閃も自室へ戻るが、眠れない。


(イノ……大丈夫なのか?)


結局、そのまま朝を迎えた。



閃はいつもより遅れて食堂へ向かった。


アホ毛はしなっと垂れ、完全な寝不足顔だった。


この時間、食堂はほとんど無人だ。


閃は軽くあくびをしながら、素うどんと浅漬けだけを取り席につく。


普段の彼からは考えられないほど簡素な朝食だった。


「いただきみゃ〜……」


気の抜けた声、あまり食欲もわかない。


箸を進めながらも、頭にあるのはイノのことばかりだった。


食べ終えて片付けていると、館内アナウンスが流れた。


『本日13時より、エドワード総帥による緊急集会を行います。つきましては——』


(イシュタールの件だな……)


閃はすぐに理解した。



13時、講義ホール。


全職員が集まっていた。


「閃くん、大丈夫……?」


音が心配そうに声をかける。


「ねみゅ……」


相変わらずのアホ毛。


「夜中までゲームでもやってたのか〜?」


烈が茶化す。


「ちがうわ」


閃も軽く返した。


隣に座っていた怜が静かに口を開いた。


「この説明会と関係あるの?」


「大正解……」


力なく答える閃。


そこへ、エドワードが現れた。



説明が終わる頃には、ホール中がざわめいていた。


閃の話も含め、すべてが共有された。


怜たちは、閃の疲労の理由を理解した。


その後、談話室にて音が閃に《安静のウィンド》をかけた。


「ふぅ……ありがと、音」


閃の表情が少し緩む。


「うふふ、どういたしまして」


「閃、もう今日は休めよ。パトロールは俺がやる」


烈が言う。


午後から閃と烈はパトロールの予定だった。


「……じゃあ、お言葉に甘えるにゃ……」


閃は、烈の好意に甘えることにした。



自室前、みのりが立っていた。


「みのりん、久しぶり!」


いつも通りの調子で声をかける閃。


だが、みのりの表情は不安でいっぱいだった。


「閃先輩……大丈夫ですか……?」


説明会で、閃のことが心配になったのだ。


「大丈夫。さっき音に回復してもらったし、今日は休むから」


「……よかった」


それでも、みのりの表情は晴れない。


閃はゆっくり近づき、そっと抱きしめた。


「ごめんな、心配かけて」


みのりも閃を抱きしめ、顔を胸に埋めた。


「先輩……好きです。大好きです……」


「俺も好きだよ、みのりん」


同じ言葉、違う意味。


みのりはそれをわかっていた。


少し抱き合ったのち、みのりは顔をパッと上げた。


「ありがとうございます、先輩!逆に元気もらっちゃいました!」


いつもの明るい笑顔に、閃は安心した。


「それならよかった」


「じゃあ任務行ってきます!」


元気に駆けていくみのり。


閃はそれを見送り、自室へ入っていった。


その一部始終を物陰から見ていた怜は、静かにその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ