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エーテルコード  作者: エトコッコ
第8章:崩壊

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第3話「ever free」


サムを見届けたあと、イノはイシュタールへ向かっていた。


目的は帰還ではなかった。


「うぅ……アーク、クリス、サム……」


ナンシーは3人の死に強いショックを受け、泣き崩れていた。


人体実験という倫理的な矛盾はある。


それでも彼女なりに、ゼクストを愛していた。


まるで、自分の子どものように。


「あー……ボクのプリン、食べる?」


アガレスなりに、ナンシーを慰めているようだった。


その時だった——


突如、爆発音が響いた。


同時に基地内に鳴り響くアラート。


「な、なんなの!?」


ナンシーは驚き、顔を上げた。


「爆発だねぇ」


アガレスは落ち着いた声で答えた。


2人は爆発音のした方向へ向かった。



そこには、エンプティアの姿があった。


「まさか……イノがやったの!?」


ナンシーは口元を押さえ、震えた声で言った。


「そうみたいだねぇ」


隣でアガレスが呟く。


エンプティアは2人を確認すると、ゆっくりと歩み寄り、手を伸ばした。


「イノ……!!まさか、私たちを……」


殺される——


ナンシーはそう思い、恐怖に震えた。


「かもねぇ」


アガレスは、いつも通りの調子だった。


エンプティアは2人を掴み上げる。


「い、いやっ……イノ、お願い……!!殺さないで!!」


ナンシーは必死に訴えた。


しかしイノは何も答えない。


そのまま上空へ飛び上がった。



イノは基地から離れた岩山へ移動すると、2人をそっと地面に下ろした。


殺すつもりがないと分かり、ナンシーは少し安堵したが、同時にイノの行動の真意を知りたかった。


「イノ……理由を聞かせて?」


ナンシーは静かに問いかけた。


イノは落ち着いた声で答える。


「僕は、イシュタール財団を抜けます」


「僕は……もう、戦いから降ります」


「だから……“僕たち”は自由になります」


その言葉は、静かだが強かった。


「マザー・フローレンス、Dr.アガレス。今までお世話になりました……」


2人を助けた理由——


それは、彼なりに情を感じていたからだった。


「ま、待ってイノ!!私から離れないで……あなたまで……失いたくない!!」


ナンシーは叫んだ。


「どうか、お元気で……さよなら……」


そう言い残し、イノは再びイシュタール基地へ飛び立った。


「待って……イノ!!イノーーー!!!」


ナンシーの声は、もう届かなかった。



イシュタール基地の上空。


エンプティアに通信が入る。


ヨハンだった。


『イノ……友達が死んでショックなのは分かるが、癇癪を起こすのは違うんじゃないか?』


ヨハンは、いつもと変わらない調子だった。


「そうかもしれませんね」


イノは冷静に答える。


『基地を壊しても意味はないぞ?ギガスはここ以外にもある』


『それに私を殺そうとしても無駄だ。もう肉体はない。量子世界で生きているからな』


「そうだったんですね」


イノの声は変わらない。


『それでもやるのか?その先に自由なんか無い。あるのは今より過酷な現実だけだぞ?』


「それを決めるのは……僕自身です……!!」


そう言うと、イノはエンプティアの左手を空へ掲げた。


エンプティアの掌にエーテルが集中し、やがて巨大な球体となり、膨れ上がっていく。


それは瞬く間に、隕石ほどの大きさになった。


離れた岩山から見ていたナンシーとアガレス。


「あ、あんなエーテルの塊を……!!」


ナンシーは息を呑んだ。


「あのまま基地、壊す感じだねぇ。あそこにはまだ、ボクのペットたちがいるんだけど……」


「イノ……」


2人はただ、その光景を見つめるしかなかった。



かつてアークは言っていた。


『もし、オメーら3人が先に死んだら、オレはまずココをブッ壊す』と——


(アーク……今なら、その気持ちよくわかるよ)


《カオスミーティア》。


イノはそれを、上空から基地へ放った。


巨大なエーテルの塊は基地を押し潰していく。


そして——


後に残ったのは、底の見えない巨大なクレーターだった。


『……ところでお前さん、エンプティアはどうすんの?』


ヨハンが聞いた。


「エンプティアは、“僕自身”です」


イノはそう答えた。


『ふーん。ま、好きにすれば〜』


通信は切れた。


イノはクレーターを少し見下ろしたあと、静かに飛び去っていった。



『やり直しだな!』


「あ、博士」


アガレスのスマカからヨハンの声が聞こえた。


『DDのデータもギガスも残ってる。なにより私がいる。ノープロ(ノープロブレム)よ』


「あぁ……ボクの可愛いペットたちが……」


アガレスは少し落ち込んだ様子だった。


『また作ればえーがな。それよりナンシー、キミはどうする?』


ヨハンが聞く。


「……総帥について行きます。最後まで」


ナンシーは涙を拭い、そう答えた。


『よし、さすが私の右腕!!』


ヨハンは相変わらずだった。


(フフ……エドワードよ、そっちは順調か?)

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