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推しとの激甘生活を目指していたら、塩対応攻略対象たちに溺愛されていました  作者: 水無月傾
赤の彼岸花の章 〜学園祭

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01-07 【好感度30】クッキーを作ったではなく焼いたです

白の百合―シエラ・リリーディアンSide


 入学してからほぼ一ヶ月。今日から10月に入ってすっかり秋めいてきた。

 ゴーランド殿下の一方的な学園祭の押し付けは取り消され学園内は落ち着いていたが、今は違う理由で少し殺伐としている。


 来週からの試験に備えて一週間の準備期間になるからだ。


 ステータス画面のパラメーターを確認しても入学初日と変わらないオール100が並んでいる。あれから勉強をしても数字が動いたのは見たことがないから、100がMAXなんだろう。

 しかし、今の私が勉強する意味ってあるのかな? 一応は油断はせず、試験前に試験範囲はさらうつもりはあるけどさ。……前世もこうなりたかった。


 朝、レグルスの鍛錬を見学したあと、戻ろうとしたらレグルスに引き留められた。

 振り返ると、未だかつて見たこともないモジモジしたレグルスがいた。なんか今までより距離が近いぞ。


 男らしい精悍な顔立ちの男性のモジモジって不気味なんだなと痛感したし、「トイレなら早めにいったほうが、お互いのためにいいと思います」と言おうかなと思っている間にレグルスは私に何かの包みを出してきた。


「なにこれ?」

「…………………………クッキー」

「あーなるほどね。女の子からもらって処分したいってことね。それなら誰かにあげるんじゃなくて、渡した子にバレたら傷つくし、初めから貰わないほうがいいと思うよ」

「違う! 俺が……作った……………お前に渡そうと思って」


 Why? 作った? お前に渡そうと思って?

 いや本当にあなた「寄るな、燃やすぞ」とか言ってたレグルスさんですか?


 彼はオーバーアクションを加えながら焦ったようにして畳み掛けてきた。

「俺は悔しいけど氷魔法よりも火魔法のほうが得意だし、お前のお陰で氷魔法は少し扱えるようになったのとゴーランドの一件の礼だ、それ以上の意味はない、勘違いするなよ、女は嫌いだが、筋を通さないといけないと思っただけだ」


 うん、早口すぎてよく聞き取れないな。こっちは少し放心してるから尚更。これ一口で言ってきたよ。

 要するに『筋を通すために礼を用意した、勘違いするなよ』ってことでいいんだよね。


「ふーん。それならありがたくいただくね。グウェンお兄様とティナお義姉様と分けて食べるね。……というよりレグルスがクッキーを作れることに驚いたのだけど」


「炎を操るのは得意だ。生地を作ったのは家のものだが焼いたのは俺だ」

 …………それは俺が『作った』ではなく、俺が『焼いた』ですね。でも確かに火加減は完璧に見える。

「……そうなんだね。美味しそう!」

 私は『焼いた』にはスルーして、ほほえみながら大事に鞄にしまう。お兄様もお義姉様も『あのレグルスが焼いた?』って驚くだろうし、反応が楽しみだわ。


「…………。それとさ。試験が終わるまでここで鍛錬は休むから、お前も来なくていい。……そういえばお前試験勉強してんの? やってる感じ全くしないけど」

「大図書館でたまにパーヴィス様に会ったときにたまに教わって……」

「は? パーヴィスと? お前ゴーランドだけじゃなくてパーヴィスともなんか関わりあんの?」


「たまに勉強教わるだけ。勉強自体は学園祭実行委員が忙しいからあんまりできてないかな。セイル様と一緒に組むことになったし」

「はあーーーーーーーーーーー?」

 あまりに驚きすぎでしょ、というか近い近い、女嫌いどこいった? 


「あ、そろそろ教室に行かないとだね、私たちは入る時間をずらさなきゃいけないし。私が先に行くね」

 なんか動揺しているレグルスを置いて私は一足先に教室に向かった。

 最近はなかったのに授業中も隣ですごい睨んでくるんだけど、ますます他の生徒たちから遠巻きにされるんでやめてください。

 推しはちゃんと空気わかってくれるんだけどなあ、レグルスには無理そう。



 学校が終わって邸に戻って夕食後、レグルスからもらったクッキーと侍女に出してもらった紅茶をお兄様とお義姉様に振る舞いつつ、今日あったことを話した。


「俺はなんていうかレグルスが不憫に思うよ」

「……ですが、この子にした振る舞いを私は許せませんよ」


 うん、火加減に絶対的な自信をもっているだけあって美味しいですね。勝利のクッキーです、堪能しましょう、もぐもぐ。うまー。


「不憫ってなぜですか? ただのお礼クッキーですよ。彼もそう言っていましたし、おまけに『勘違いするなよ』のお言葉付きです」

「…………グウェン様、私も不憫に思えてきました。――シエラ、あなたリコルディエ侯爵令息のことどう思っているの?」

「? 砂糖生活のために必要な攻略すべき砦の一つですね」


「「はい?」」

「向こうも 『女は嫌いだ』と言っていますし、私はどうあっても女性です。ですので私としては燃やさない程度に嫌わずにいてくれればそれでいいです」


「俺はこんなこと言われたら、立ち直れる自信ないぞ…ティナはそんなこと言わないよな?」

「言うわけないじゃないですか! グウェン様にそんなこと……」

 妹そっちのけでいちゃつき始めたので、目眩ましで光を散らして、その間にクッキーを持って退散ですね。

 私はそろっと動いて扉を閉めた。うっかり目に入れると潰れるので侍女たちを立ち入り禁止にして配慮をしておきますね、私は空気の読める妹なので!


 部屋に戻った私はクッキーを食べながら、クッキーイベントで好感度は上がったかもしれないと思ったのでステータス画面を確認した。


 彼岸花は……白。数字は…………………………30かな?


 はーーー。他の塩対応メンズたちも全く変わらないんだけど本当におかしいのでは? いい加減色は変わってもいいと思う。

 早く推しに癒されたいわ、この塩の中泳ぐヒロイン戦士に愛の手を! 今からでも隣国からそっとパワーを送ってくれないかしら。


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