01-06 憤怒幼馴染はキノコをむしって食べてはいない〈レグルス視点〉
赤の彼岸花―レグルス・リコルディエ Side
こいつが魔道具をメンテするのをそっと俺は眺める。
結構ひどい扱いをしている自覚はあるが、こいつはなかなかふてぶてしい。
こいつも女だ。女はヒステリー起こすし、すぐ泣くし、大嫌いだ。
でも、こいつはなんか調子が狂う。というかなんか飄々としてるし、泣かない。
……そんでもって笑ったり拗ねたり表情がくるくる変わる。
こいつに学園祭でなんかやるのかと聞かれたときも適当に流せばいいのに、関係ないと言い放っていた。まあ、そのうちわかるだろうと思っていたのだが、あいつがわかる前にゴーランドの傲慢が暴走した。
ゴーランドに何を言っても無駄だ。俺はあいつの側近候補で話す機会もそれなりに多いからわかる。あいつは自分の意見を変えない。
そして、側近のパーヴィスはゴーランドの頷き人形だ。『それは素晴らしいですね』とか言って全肯定してるはずだ。
その二人が決めたのであれば無理だ。
学園祭はあいつの決めたものとなるのだろう。
そんなやりきれない気持ちをシエラにぶつけた。こいつにぶつけても意味がないのは分かっていた。でも気持ちが軽くなるかもしれないという軽い気持ちだったんだが――。
その目論見は大きく崩れた。
は? なんでゴーランドに交渉? こいつゴーランドに脅されてんのか?
ゴーランドは整った顔だし、唯一の王位継承者だし、婚約者もいない。普通に女どもにモテるが、そばに近寄らせる女なんていなかったはずだ。
そのゴーランドとツテがある?
その翌日にシエラはゴーランドから通常の学園祭をもぎ取ってきた。いや、マジこいつなんなの? あの俺様ゴーランド様だぞ。
はっきり言って何が起こってそんなことになってるのかいくら考えてもわかんねぇ。
でも、俺はこいつに感謝しないといけない。
こいつの家が大穀倉地帯を治める公爵家の一つだと言っても相手は王族だ。分が悪いなんてものではない。
王太子のゴーランドは傲慢男だが、頭が切れる。他国との交渉の草案なんてもんもやってたりするし、そんな相手に一介の公爵令嬢が交渉なんてすげぇ大変だったはずだ。
これはきっちり誠意を見せないといけないと思った俺は、感謝の意味もこめてあいつに頭を下げた。
なのにこいつは素直な俺に本気で怯えて『その辺に生えてるキノコむしって食べた?』とか言い出す始末。
いや、まさかこんな事言われるとは夢にも思わなかったけど、こいつなんなの? すごいズレてないか?
普通の貴族の女ならそんなこと思わないぞ。しかも普段はこの国唯一の公爵令嬢然としてるのに。
だがこいつの慌てる姿を見て、なぜかわからないけど、普通の言葉遣いで俺に話す姿はいいと思った。
……女は嫌いだ、そしてこいつも近づいて欲しくはないけど……こいつ自体は嫌いでは……ない、と思う。
でも俺はこの気持ちをどうしても認めたくなかった。そうしたら俺は俺でなくなってしまうような気がした――。




