01-08 【好感度38】塩対応メンズ揃い踏み……脱出したい
今日は試験結果の発表日。
上位50人までが名前と点数つきで張り出されるので私はそれを見に行った。
一応魔力考査も受けているけど同点の場合は魔力考査で上の者が上位になるくらいの参考程度のもので筆記がほぼすべてである。
まあ、魔力は全員にあるわけではないので当然だわ。
めっちゃほかの人達に見られるんですが……ああ、きっと一位だったに違いない。
私は自信ないんですぅとかいうつもりはない、それは一位を狙っていた人たち全てに失礼だ。
私は早速一位からみていくことにした。
1位 シエラ・リリーディアン 筆記・600点 魔力・100点
2位 レグルス・リコルディエ 筆記・591点 魔力・82点
3位 エレオノーラ・プラヌス 筆記・576点 魔力・―
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うん、一位ですね。まあそうでしょう、入学試験はお兄様とお義姉様のいちゃつきに疲れて眠ってしまって全部埋められませんでしたから。今回は全部埋めたので満点は当然ですね。何と言っても全パラメーターMAXですから!
そういえばセイル様は順位に入っていないみたい。あの方が真面目に試験受けているとは思えないし、試験中もほとんど寝ていたのだろう。
でもなぜか要領がいいから補習は免れているんだろうな。
「――お前、全教科満点てマジかよ……。まぁ魔力考査は普段のお前見てれば納得だけど」
「あ、レグルス。筆記は全部埋めたから満点だね」
「………………は? なんで埋めると満点になんの? もしかして、入学試験は埋めてないから次席なのか?」
それはですねえ、と話し出そうとしたその時、突然後ろから声が聞こえてきた。
「入学試験の最後の教科は難問だけ解いて、残りはやらずに彼女は眠ってしまったそうですよ。私はそれを聞いた時は、愚かの極みだと思いましたけどね」
「はぁ、レグルス、あまりに浅はかで察しが悪すぎる。この私の側近となるのだからそれでは困る。彼女の言葉もわからないのか?」
出た、主従コンビ。慇懃無礼な発言がパーヴィス様、傲慢な発言がゴーランド殿下。
相変わらずお言葉がきついです。
「…………シエラ、お腹……すいた」
あ、セイル様も地上に出てきてしまったんですね。今は水底でシーラカンスをしていてほしかったです。
「なんでゴーランドたちが一年のフロアにいんの? 三年のフロアに帰れよ。あとセイルは出てこないで教室で寝てろ」
「お断りします。彼女の結果を見に来ました。私が多少でも教えたんです。一位を取ってもらわなければ困ります。まあ一位でしたので多少は努力は認めて差し上げましょう。努力なしの才能だけの人間は嫌いですからね」
「お前に指示されるまでもない。誰に物を言っているんだ? 思い上がるな」
「……シエラの、匂いした、からでてきた」
え? 私そんなに臭う? 嘘でしょ? 嘘だと言ってください、セイル様!
そしてこの四人全員集まると濃い、めちゃくちゃ濃いわ。濃すぎてここだけポッカリと空間が空いてるわ。私も遠ざかりたい。
レグルスはガリガリと頭をかきながらため息をついて言った。
「……お前らがここにいることはもう突っ込まねぇ、だるいし。でだ、シエラ。つまり入学試験で寝たから、次席だったってことか? だー! なんで俺だけ知らねーんだよ……あーくそ! 次は絶対に負けないからな! 首洗って待っとけ!」
え? これバッドエンドに向かってる? 焼死ではなく首切りですか? 没落いやー、死ぬのもいやー。なんで試験ごときで殺されそうになるの?
何か勝ち気発言しないと……! レグルスはきっと『勝ち気』が好き! 『攻略メモ』にあった!
「……ふ、ふふーん、そっちこそまた仕留めてあげますわ、オーホッホホホ!」
どう? どう? 私が思う勝ち気全開にしてみたんだけど……あれ? 四人とも引いてますね。匙加減間違えたかな? どんどん空気は冷たくなっていってるし、取り敢えず逃げよう。
「それではごめんあそばせ! オーホッホッホッホッホホホホ!」
私はお義姉様直伝の完璧カーテシーをかまして優雅にこの場を去った。
この四人がこのあと何を話し合ってたか私は知らないし、怖いから知りたくもない。
その後そっと好感度を確認してみたら相変わらず白で数字は28になっていた。昨日は30だったんだけどな。本当にこの数字はなんなのだろうか。
推しよ! 早く私を攫ってください!
♢ ♢ ♢
その翌日、レグルスの朝の鍛錬が再開されるのでいつもの裏庭に向かう。
なんか……物理的に火花だしてる修羅がいます。めちゃくちゃレグルス怒ってる。最近は私に対しては女嫌いを出していなかったんだけど、今は寄るなオーラ出てます。……そそっと離れましょう。
「あの三人なんなの? お前いつの間にあいつらに構い倒されてんの?」
「……色々ございまして。話せば長くなるのです」
話なんてできるわけない。「友好までの関係築こうとしてます★」なんて言った日にはアバズレ女確定で、推しとも会えず私はバッドエンドを迎えるのよ?
私は絶対に生き残るんだから!
「ふーん……まあ、いいや。お前には学園祭の魔法実演に一緒に出てもらうから。お前は助手な」
へ? 魔法実演に……レグルスの助手?
はっ! さてはこれですね。『攻略メモ』にあった学園祭での協力イベント! 私はサブカル好きの元喪女ですよ、このくらいは気づいてみせますとも。思わず前のめりになるってものよ。
「わかった! 何を手伝えばいい?」
「…お、おう。なんか馬鹿みたいに前向きだな、なんか調子狂う。学園祭実行委員の仕事はどんな感じなんだよ。二日目なんだが、お前できる?」
前向きなのに馬鹿と言われました。…理不尽。とりあえず気を取り直そう。
「うん! その日は問題ないよ。学園祭でゴーランド殿下がチェス大会を開くの知ってる? 学園祭実行員の仕事としてセイル様と一緒に事前に予選運営をするんだ。あのね、セイル様発案の私と早打ちで勝負して、ふるい落としをするの。で、学園祭初日はそのゴーランド殿下のチェス大会の司会。でも二日目は大丈夫!」
「……セイルとチェス予選? お前の早打ち? ゴーランドのチェス大会の司会?」
「そう! で、レグルスの手伝いは何すればいい?」
レグルスはなんか呆然として完全に動きを止めた。レグルスがポンコツすぎて不安になる。
「……いいたいことは山程あるけど、今はいい。多分お前理解できないし。……俺は当日デカい氷の華をつくるから、お前はそれを結晶にして会場に雪を降らせろ」
理解できないとな? なんか失礼だけどまぁいいか、レグルスだし。
その案は確かにそれが成功すれば、かなり見栄えいいし映えそうだけど……。チラリとレグルスを見る。
小さい氷の華ならできると思うけど、会場の後ろからでも見えるくらいのサイズの氷の華の作成は火属性のレグルスには厳しいんじゃないかしら。
でも今それを決めるのは早いか。できないって決めつけたらできないのは当然だもんね。
「わかった! じゃ一緒にがんばろう!」
「……お、おう。ありがと」
あの『寄るな、近づくな、うるさい』と言ってたレグルスが『ありがと』ですと! 今日はきっと前世にあった勤労感謝の日だわ。10月だけど。
「そういや、予選っていつやんの?」
「来週! よかったら見に来てよ」
「……暇だったらな」
そう言ってレグルスは教室棟の方を歩いていった。
レグルスと大分近づいたよね。……でも私は知ってる。きっと好感度の彼岸花は白なんだよ。
そして私は念のためと思いながら、なれた手つきでミリタリーチックなUIのステータス画面を開く。
彼岸花は………あれ? 色ついてる? ん? 気のせいかな。透過されててよく見えないんだよね、これ。んーーー、ちょっと別の角度から……これは白だな。バーコードの文字は……38かあ。
いい加減色ついてもいいと思うんだけどな。三段階表示だから全体を100とすると3で割って33・66・100みたいな区切りだと思うんだけど、なんか色がつく気がしないなあ。
私は一人、推しとの砂糖生活を思い浮かべながらため息をついた――。




