01-04 憤怒幼馴染は期待を何度も裏切られる〈レグルス視点〉
赤の彼岸花―レグルス・リコルディエ Side
入学式の日、グウェンさんに頼まれて彼の妹で俺の幼馴染のシエラを迎えに行った俺の目に飛び込んできたのはとびきりの美少女だった。
っていうかこいつ萎んだ? あの贅肉何処に行ったんだ? 贅肉は溶けるんだな。
俺は女の美醜はわかるが、どうでもいい。美しかろうとそうでなかろうと関係なく、寄ってほしくない存在だ。
……もちろん例に漏れず幼馴染のシエラもそうだったのだが――。
久々に会ったシエラはクソ生意気だった。何だこいつ!
以前のこいつは、食べることに執着して俺のことに見向きもしなかったし、眼中にもなかった。俺が女であるこいつを幼馴染と認められたのは、その辺りが理由だ。
あいつが『物質の結晶化』なんて100年に一度現れるか現れないかの珍しい固有魔法持ちなのは知ってた。でもこいつはなんにもしてこなかったから宝の持ち腐れ状態だったはずだ、なんで今さら。
どうにも収まらない怒りを周りの目を気にせずシエラにぶつけたが、あいつにきれいに流されるし、全く堪えてない。
あいつは泣いてないし、ヒスってないけどなぜかそれが異様に腹がたつ。
後からシエラの固有魔法の『物質の結晶化』について俺は調べて衝撃を受けた。
大抵の能力者は魔石を作れるだけだが、あまりに適性の高い人間はそれをストック、抽出、無力化、攻撃転化などできるあまりに有用な能力らしい。
確かあいつ覚醒させたっていってたよな。そんでもってS級って……。あのシエラが? 食ってばっかでぐうたらだったあいつが? ウソだろ。この俺でさえB級だ。B級合格最年少だったのを軽々と超えたということか。
S級なんてこの国に10人もいないはずだ。そのS級になるってことは希少性だけでなく、その使い手として高いスキルがあるということだ。
正直、シエラなんかに関わりたくなかったが、あいつが次席だったせいで隣の席だし嫌でも目に入って不快だ。なんかチラチラ見てくんのも腹立つ。
だが、ゴーランドの高い鼻をあの男が得意とするチェスで折ったのは気がすく思いだったし、やるじゃんと思った。
だが、なんでシエラは俺の鍛錬に毎日いるんだよ。遠くからならバレないとか思ってんのか?
俺は氷魔法が使えなければいけない人間だ。だが今は使えないから懸命に鍛錬して使えるようになる必要がある。そんな鍛錬を誰かに見られ続けるのは屈辱だったし、学園入学前とは違う公爵令嬢ぶりがまた腹がたつ。
この日の俺はなぜか怒りを抑え切れず、シエラに目障りだと怒鳴った。
あいつは怯えることもなく、俺の氷魔法の欠点をつきつけてきた。更に腹が立った俺はあいつに更に怒鳴りつけた。
なんか、こいつしれっと自分で冷気出して涼んでないか? なんか異様に腹が立つな。
その俺に対して、対処法として魔道具を持ってきた。今度はなんかふんぞり返ってきたんだが? なんだこいつ。あんまり覚えてないが、こいつはここまでふてぶてしくなかったような気がするんだが……。
魔道具については女でなかったら殴ってやりたいと思うほどの屈辱だったが、あいつはしれっと『努力は報われるべきだ』と言って魔道具を押し付けてきて俺は動揺した。
こいつはクソ生意気な女だがいいところが……あるのか?
そう一瞬でも思った俺が馬鹿だった。
シエラから渡された魔道具を使ったら体が大きくビリってくるくらいの電気が流れやがった! しかもあいつ『言ったし』みたいなしれっとした態度取ってやがる。
しかしできた。すっげーうれしかった。叶えてくれたのはシエラだ。
こいつはやっぱりいいやつ……なのか?
再びそう思った俺は馬鹿だ。またあいつは悪魔のように笑って俺を落として来た。
俺がシエラに頭を下げてメンテを依頼しろ……だと? 誰がするかっての。
足元見やがるし、よろしくとか言い出してきた。なんかさも自分が折れてやりますよと言った雰囲気だ。
率直に言うとこの女はふてぶてしい! そしてあいつのふんぞり返った姿は夢に出てきてうなされそうで、すごく嫌だ。これだから女は嫌なんだ。
……俺はやっぱり女は嫌いだ!




