03-08 怠惰兎は暗躍する《竜胆視点》
青の竜胆―セイル・ジェシアン Side
シエラが俺の隣で穏やかに眠ってる。
寝てるところは初めて見るけど猫みたいでかわいい。
彼女は俺が眠ったと思っていたんだろう。でも彼女の手を握っていて眠れるわけがない。
ゴーランドには感謝しないといけないな。あいつが傲慢をまき散らして暴走してくれたおかげで、シエラは俺を頼ってくれた。
それだけじゃない、彼女は俺と二人で頑張ろうといってくれた。そんなことを言ってくれた人はこの子だけだ。
彼女は、すごく便利だし、給餌器として有能だ。それに一緒にいると安心するし……そばにいたい。
どうやったら一緒にこれからもいられるだろうか。
とりあえず…………ずっと幼馴染ってだけで、彼女と一緒にいられるレグルスは邪魔、か。
どうやら、レグルスは彼女に魔法の鍛錬で頼り切りらしい。あれだけ入学式の日に罵倒していて、それをきっかけにしてシエラが、嫌がらせを受けているのに気づかないほどのおめでたい男だ。つきまといの可能性がある。
まぁ、シエラも鈍感すぎる。
俺も様々やってきたど、すべて受け流されたからね。
例えば学園祭実行委員の委員長を彼女が好意的な目で見てたのが気に入らなくて、シエラを睨んだのに飄々としてた。
それに、彼女に俺の顔に触れて欲しくて、わざと口に食べ物を入れてくれる時に逸らしたら、なんで動くんだという顔をしただけで、わざとなんて思っていない。
彼女は細かいところに気がつくのに、なぜか好意的な行動に関しては恐ろしく鈍い。……変だ、すごく変。
彼女に直接悪意をぶつけようとする人間は、ゴーランドの指示もあるが、俺の意思で排除済みだ。シエラは猫みたいに、好きにのびのびしてるのが合ってる。その猫の隣りに俺がいればいい。
そろそろ昼休みが終わる。俺も隣で寝よう。
風邪をひくといけないから、ジャケットを彼女にかけたから放課後まで大丈夫でしょ。
おやすみ、シエラ。
♢ ♢ ♢
あの後、眠ってしまったから、授業をサボらせてしまったと、シエラに謝られた。
俺がそうさせたのに全く気づいていない。
彼女はどうやら俺を子供やペットのように思っている気配がある。だから俺に邪気はないと思って謝ったのだろう。
そんな彼女には申し訳ないが、俺はそれを利用する。この小柄な容姿に初めて感謝した。
そう言えば、シエラは貴族の誇りも忘れて太った低脳猿とパーヴィスが馬鹿にしてたっけ?
うん、彼女が痩せてくれてよかった。もし太ったままだったら、俺はあの茶会の少女だって気づけなかったからね。
シエラは俺と一緒に頑張るというのをどんどん実行していった。とりあえず、選抜方法の発表だ。シエラは自分が前面に出ると素直に聞いてもらえないと言い出し、俺を矢面に立たせた。
確かに彼女が対戦するわけだし、ここで彼女に矢面に立たせると反感しかないから、適材適所だな。彼女はパーヴィスより合理的な人間みたいだ。
そんな感じで試験期間を迎え、今日は発表日だ。
興味はない。おれは試験は平均点しか取らないと決めている。だから順位として張り出されることはないから見に行く必要はなかった。
「今回主席はリリーディアン公爵令嬢みたいね」
「カンニングかな?」
「ありえる! レグルス様より上とかありえない」
……アホか。この学園は王家が管轄する学園だぞ。カンニングなんて絶対にありえない。むしろそんなことを言っていたと露呈すれば、王族に対する不敬罪で貴族牢行きの可能性もある。
――あれ? この匂いはシエラの匂いだ。彼女は香水がきついわけじゃなく、どこか優しい匂いがする。なんの匂いかはわからないが、彼女だけの匂いだ。なんか安心してお腹が空くな。
彼女のところに吸い寄せられるかのように向かった俺は、同学年のレグルスがここにいるのはわかるが、なぜフロアが違うパーヴィスとゴーランドがいるのかわからなかった。
邪魔だなと思った俺はシエラに「お腹が空いた」と伝えて、側に寄った。いつもの距離感だったけど、ほかの連中がうるさい。
その後シエラはレグルスに言われて、動転したのか「ごめんあそばせ」とか言って去ってしまった。
それにしても『次は負けねーぞ』って負け犬のセリフだが、レグルスはわかってるのか? 本当にこの男は色々小さい。
…………ああ、おなかすいた。
こいつらの顔をみていても腹も膨れないし、仕方ないから兵糧丸キャンディを舐めるか。
うん、まずい。
そういえば、これを口の中に放り込んだときのシエラは、やっぱり面白かったな。噛み砕いて平然としてるとは思わなかった。思い出し笑いしそうになる。
レグルスが特にうるさかったから、俺は自分の教室に戻った。
――シエラがいないなら、教室で寝てるふりしてるほうが楽だし、動かなくていいから。




