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推しとの激甘生活を目指していたら、塩対応攻略対象たちに溺愛されていました  作者: 水無月傾
赤の彼岸花の章 〜学園祭

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01-01 【好感度0】彼岸花の幼馴染は過激な発火装置

「女は寄るな。……近寄れば燃やすぞ」


 今日は9月3日で今まで必死に備えていた学園入学日だった。

 やっとステータス画面を開くことができると起きてすぐに意気揚々と開いてみた私の目に飛び込んできたのは、憤怒の赤の彼岸花の彼こと『レグルス・リコルディエ』の過激なキャッチコピーだった。


 え? 燃やす? 近づいただけで?

 私、燃えるの? あ、そういえばレグルスのバッドエンドは――焼死だったっけ……と少し遠い目をして考え込んだ。


 この人満員電車に乗せちゃいけない人ナンバーワンだわ。おお、怖い。


 普通なら『ハイ! 近づきません』となるところだけど、あなたに近寄らないと推しとの甘い生活が送れないので、友達までよろしくお願いします!


 そのほかの特記事項をみてみた。


『過去のトラウマから女性を毛嫌いしていてヒステリーだと思っている。火属性の魔法使いタイプ』


 あ、だから前世の記憶が戻る前に王都での幼馴染なのにも関わらず「寄るな」「近づくな」「うるさい」って言われていたのかと今腑に落ちた。


 その理由が女嫌い……かあ。昔の私はそんなことも知らずレグルスに話しかけに行っていたのね。なんて不憫なのかしら。


 女嫌いだとしても黙ってそっと離れればいいのに。何か言わずにはいられないのかな? せっかくの男性らしい凛々しい容姿なのに残念な人でかわいそうに。

 絶対結婚できない人ランキングでぶっちぎりでナンバーワンよ、というか近寄れないのでは物理的に無理ですね。


 そんなことを思いながら、ステータス画面にある『攻略メモ』を開いた。


 ……前世でも思っていたけど、このステータス画面はかなりおしゃれなんだよね。ミリタリーチックで洗練されててヨーロッパ風舞台の乙女ゲームではかなり珍しいタイプ。

 そう思いながら心の中のイメージでスイスイと動かしていく。


『とりあえず、勝気な女の子がタイプ。朝と放課後は裏庭で魔法の鍛錬してるから、なるべく会うとか? そしてたまに彼に寄り添ってあげるのがよき』


 なんか思ったのとちがって攻略メモは随分崩れた書き方で目が点になった。なんで疑問形なの? そして『よき』って……。とりあえずレグルスには「寄るな」って言われてるし、挨拶だけになるかな。

 話しかけたら私は燃やされるんだと思う。


 ああ、やだやだ。何で燃やされるために近寄らないといけないんだろう。……理不尽だわ。 

 というか誰かに寄られたくなけりゃ、広い侯爵家で鍛錬すればよくない? 構ってちゃんなのかな? 塩対応メンズの一人だけど。


 あと好感度のUIとして白い彼岸花があった。

 これは知ってる。ダウンロードコンテンツでの推しのステータス画面もそうなってた。

 好感度がその花の三段階の色づき具合でわかるというものだ。

 今はゲーム開始時だから白、感情が高まっていくと全体が淡く色がつき、最終的にそのキャラのカラーで濃く染まる。

 レグルスならこの彼岸花が赤く染まっていくのだろう。でも私は友好状態で止めたいから軽く色がつくくらいまでしか見れないんだろうな。

 そうしてレグルスだけでなく他の塩対応メンズもとい攻略対象たちの攻略メモを見ていく。

 

 うーん、取り敢えず公爵令嬢の仮面を被るのは決定。他の塩対応メンズの攻略に差し障りが出るから。

 レグルスについては朝は通ってひっそり見学するのは必須かな。放課後は他の塩対応メンズの攻略メモを見る感じでは、長居は厳しそうだから挨拶だけはしておこう。

   


♢ ♢ ♢



 部屋で方針を固めていると侍女が朝食を持ってきてくれて、完食後に身支度を手伝ってくれて、完璧な公爵令嬢が仕上がっていく。

 うん、今日もシエラはかわいいわね、と自画自賛していると慌てたように扉がノックされて侍女が扉を開いた。


 叩いていた人はお義姉様の侍女だった。かなり慌てていたけれどどうしたんでしょう? 後ろにお義姉様もいらっしゃるわ。


「おはよう、シエラ。あら、制服似合ってるわね。私もその制服着てみたかったわ」

 お義姉様は他国の出身だから、この制服は着てないのよね。今度二人で制服着て、邸の中でお茶でも楽しもうかしら。


「慌てたご様子でしたがどうなさったのですか?」

「あら! ごめんなさい。……実はリコルディエ侯爵令息が迎えにきているの。どうやら初登校に心配したグウェン様が極秘でお願いしたようで……」

「……え? なぜそんなありがた迷惑なことになってるんですか!?」

 本当になぜ? 『サプラーイズ!』なんて喜ぶのは、人と時と場合があるんですよ。今回は全てにおいてNG案件です。


 焼死させてくるような相手なんだし、心の準備くらいさせてください! 妹が燃えたらどうするの? 私しか知らない情報だから仕方ないけど……。恨みますよ、お兄様……!


「私にもわからないわ。ただかなり彼は不本意そうではあったわね」

 ……これは急ぐしかない。まだ攻略を始めてもいないのに、好感度が下がる! 

 それにしても、これから処刑される気分だ。レグルスをこの邸に呼ぶなんてお兄様は空気読めなすぎでしょう。お義姉様も顔に『なんで呼んだ?』って書いてあるような雰囲気よ。


 慌てて階下に降りて、エントランスでお兄様といるレグルスに燃やされないよう、あまり寄らないようにして向き合った。

 そんな私を見て、少し驚いた様子のレグルスがポツリと言ってきた。


「……シエラか? 少し、萎んだか?」

 ――萎んだ……まさか痩せて美少女になった幼馴染にそんないい方をするとは思わなかった。ええ! 萎みましたとも‼︎


「ええ! ええ! そうですね‼︎ ……ごほん。レグルスは……相変わらず赤いですね」

「馬鹿か、お前。それよりさっさといくぞ。お前を待ってて遅刻とか冗談じゃない」


 ムッキーーー。呆れた表情で馬鹿とか言ってきた。本当にいらつく。

 咳で誤魔化したけど思わず淑女の仮面がはがれそうになったから気をつけないといけないわ。

 そして紳士らしさの欠片もないレグルスは、私をおいてさっさと歩き始めた。


「あら? 紳士ならここでエスコートをするべきでは? リコルディエ侯爵令息。……それにまさか同じ馬車に乗るつもりですか? あなたが嫌がっていた『寄る』ことになりますけど」

「……それ以上生意気な口を叩けば燃やすぞ。同じ馬車だが、お前は最大限離れろ」


 でた、燃やす……! 本当に言うんだ……。そしてうん、寄るなとか狭い馬車で無茶言いますね。


 笑っているお兄様と心配そうに見るお義姉様に挨拶をしてから、淑女にあるまじき小走りにならないようにレグルスの後をついていった。

「自分の歩幅考えてよ」と声を大にしていいたい。

   


♢ ♢ ♢



 彼の言う『最大限』離れて馬車に乗り込んだ私たちだったが会話が弾むわけもない。

 この場は沈黙しかなく、すごく居心地が悪い。これならお兄様とお義姉様のイチャイチャを眺めている方が精神的にかなりいい。

 そんな空気の中、話し出したのは意外にもレグルスだった。


「お前、よく入学試験合格したな。あの馬鹿っぷりで」

「………………次席でした、どうせ主席はあなたなんでしょうけど」


 レグルスは間が抜けたような顔をして口をぽかんと開けた。おおう、男らしい迫力美形のこんな顔はレアだな。


「――嘘だろ? あの食ってばっかりのお前が? 確かお前も魔力考査もあったよな? お前魔力は多くてもろくに使えない最底辺で、固有魔法持ちでも、魔石作るしか能がない『物質の結晶化』だったよな。そっちは?」

「魔力考査は主席でした。学力考査は様々な要因から総合で次席になりましたけど」


 魔力持ちは魔力考査もあったのよね。全員が魔力を持ってるわけではないから、総合成績にはそこまで影響しないんだけど。寝たとか言ったらプライドを刺激しちゃうから、お口はチャック!

 ……それにしても最底辺、ねえ。あっ! そうだ。朝に自分のステータスを見忘れてた。

 目の前にレグルスがいて、なんかうんうん言ってるけど軽く無視をしてステータス画面を確認する。


 学力 100

 魔法 100

 マナー 100

 芸術 100

 容姿 100


 ぜ、全部……100⁉︎ これは……もしかすると100がMAXなのかな? あの前世を思い出してからの約七ヶ月は報われた! お母様、お兄様、鬼とか思っててごめんなさい。 

 これでステータスチート状態で始められるはず……!

 帰ったらお義姉様と久しぶりにケーキでも食べてお祝いしようと思わずにやける。


「何笑ってんだよ。俺を馬鹿にしてんのか? ――はっ! どんなイカサマやって魔力考査の主席取ったんだよ!」

 時と場所を考えずに、にやついた私が悪かったけどそんな言い方ないよね。……イカサマって。真っ先にそれを疑ってくるのが、器小さいな。


「……イカサマはしておりません。『物質の結晶化』能力が完全に開花し、現在S級を取得しています。開花でどうなるかというのはご自分でお調べください。結果的に上級以上程度の全属性魔法が扱えるようになり、領地でそれを磨きました。試験はその結果です」

「は? S級? 全属性? 上級?」

 さすがに魔力考査は寝れませんでしたしね。


 ……試験官としてレグルスパパが来たことは言わなかった。この男トラウマ持ちみたいだし、嫌な予感しかしなかったからね。ここで口を滑らしたら、バッドエンド直行でしょ。


 そういって、能力で大気中の水分を結晶化させてできた魔石をレグルスの手の上に乗せた。

 レグルスが私を凝視しながら完全に石化したかのように硬直している間に馬車は学園の馬車止めについた。


「……貴様! いい気になるなよ‼︎ これだから女は!」

 はっとしたように魔石を握りしめ、馬車を慌てて降りて大声で言い放って飛び出していった。

 なにあれ? お前を通り越して貴様とか呼ばれるの前世含めて初めてなんだけど。塩対応とかそういうレベルじゃなくない? 性別関係ないよね。本当に理不尽で腹が立ってくるな!

 しかし……勝気ってこれで合ってるのかな? 好感度0のまま進んでいそうで不安になる。

 

 レグルスに罵倒された私は多くの人に注目されていて『腫れ物』一歩手前状態になるなんて思ってもみなかったし、誰か他の人に自分のことを調べ尽くされるなんて想像もしていなかった――。


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