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推しとの激甘生活を目指していたら、塩対応攻略対象たちに溺愛されていました  作者: 水無月傾
白の百合の章  〜プロローグ

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2/24

00-02 推しを求めてガチ攻略目指す(ただし友好まで)

 とりあえず今はステータス画面がグレーアウトしているから『攻略メモ』は見られない。

 今できることから始めよう。まずは知っている情報整理からね。


 料理長特製のマドレーヌの九個目をつまみながら、机に向かって日記帳にまとめ始めた。



 ――シエラ・リリーディアン。ヒロイン。

 現在二月時点の今は15歳の白百合の花紋をもつリリーディアン公爵家の令嬢。家族や使用人たちに愛されて育ち、私が食べたいものを与えられた結果、八歳を過ぎたあたりから体重が増えてちょっとふくよかになった。あとついでに勉強はあまりしてこなかったから、あまり頭は良くない。

 ちなみに花紋っていうのはこの世界での家柄を示すもので、侯爵家以上の家柄と多大な功績のある家門にのみ与えられる栄誉みたいなものよ。

 乙女ゲームあるあるだよね。多分意味ありげに固有の花を持たせたかったんじゃないかなぁ。


 白銀の髪の毛、真っ白な肌、目は黒曜石のような黒の瞳で全体的に整っている。ちょっとふくよかかもしれないけど普通に美少女だわ。ん? ゲームでの瞳の色って黒だったっけ? まぁいいか。ちょっと……いやそれよりもうちょっとふくよかかもしれないけど、私は健康的でいいって思うけど、この世界ではモデルのような体型が貴族の嗜みで当然なのよね。


 このヒロインが9月に学園に入学して、恋に勉強に魔法にダイエットに励んで聖夜のダンスパーティで告白されちゃお★というシミュレーションゲームで、ジャンルは『自分磨きでキラキラな恋を掴むSLG』。でもその背後にあるのは攻略対象たちと学内での差別と嫌われ。……なんて理不尽。

 この育成が組み込まれているからか、ヒロインの初期の基礎パラメーターは初期は低いのよね。



 他の4人の塩対応メンズたちについても書き留める。


 ――レグルス・リコルディエ。メインヒーロー。攻略対象1。

 同い年のヒロイン・シエラの幼馴染の魔法研究家系の『彼岸花』の花紋を持つリコルディエ侯爵家の嫡男。

 キャラカラーは赤。燃える様な赤い髪、ルビーみたいな真っ赤な瞳の男らしく凛々しい感じの高身長の美形。大罪モチーフは憤怒。


 ……王都での幼馴染だというのにこのくらいしかわからないわ。私の顔をみると、「寄るな」「近づくな」「うるさい」くらいしか言わないから。

 レグルスはお兄様に親しみを持ってるから、私とも最低限のつきあいはあるんだけど、普通に睨まれる。侯爵家唯一の子息だし、婚約者がいてもおかしくないけど……うん色々難があるから無理ですね。一生独身でもおかしくないわ。


 ――パーヴィス・イステリア。攻略対象2。

 二つ年上の宰相を歴任している家系の『藤』の花紋を持つイステリア公爵家の嫡男。

 キャラカラーは紫。葡萄色をした紫紺の髪、アメジストのような紫の瞳の知性的な雰囲気のある眼鏡をした線の細い感じの美しいって感じの男性。大罪モチーフは嫉妬。


 この国にはうちとイステリア公爵家しか公爵家はないのに特に関わりないんだよね。別に王都での邸が近いわけでもないし、我が家は宮廷貴族ではなく領地貴族だからかしらね。あとは……うん、多分なにも関わりない。そもそも公爵家の嫡男がなんで婚約してないの? 本当に謎。


 ……なんか、理不尽だな。彼らに私は何もしてないよね。とりあえずあと二人も書き留めていこう。


 ――セイル・ジェシアン。攻略対象3。

 同い年の騎士の家系の『竜胆』の花紋を持つジェシアン伯爵家の嫡男。

 キャラカラーは青。霧がかったようなスモーキーブルーの髪、アクアマリンみたいな綺麗な水色の瞳の小柄だけど細マッチョの美少年。大罪モチーフは怠惰。


 本当に関わりなさすぎて彼について何もわからない。そもそも怠惰であれば私が閉じこもってなくても会えてないのでは? なぜに塩対応するの? 怠惰だから婚約者いないのね、それはわかる。



 ――ゴーランド・クリザンテーム。攻略対象4。

 二つ年上の自国であるクリザンテーム王国の王太子。『菊』の花紋を持つ唯一の王位継承者。

 キャラカラーは黄色。煌びやかなプラチナゴールドの髪、トパーズみたいな金色の瞳の彫像みたいなすべてのパーツが整った感じの高め身長の美形。大罪モチーフは傲慢。


 そもそもなんで王太子が婚約してない……以下割愛。私にも婚約の打診があったって我が家の侍女たちが噂してたのだけど、いつの間にか聞かなくなったわ。将来の王太子妃なんて嫌だし、無くなって本当によかった。ほかの関わりはゼロ。

   


♢ ♢ ♢



 ……ふう。こんなところかしらね。

 一気に書き込んで疲れた私は十二個目のマドレーヌをつまんで紅茶で流しながら、日記帳に書かれたプロフィールメモを端から端まで読んで考える。


 いや、なんで私嫌われてるの? なんで塩対応なの? レグルス以外は関わってないし本当に意味不明。頼むから普通に扱ってほしい。

 あら? この塩対応メンズどもに全員婚約者がいれば、そっちに夢中で私につっかかることもなく、何もしなくても『暴食』の推しが出てきたのでは? システムを恨む……。


 そういえばお兄様がゴーランド殿下の側近にパーヴィス様が決定していて、他の二人も内定していると言っていたわ。

 そんな方々から嫌われればいくら公爵令嬢でも確かに学園内で『腫れ物』扱いは分からなくもないわね。



 それにしても嫌われからどうやって友好まで攻略すればいいんだろう。

 とりあえずゲームが開始されてから色々励めばいいかしら、とぼんやり考える。


 色々……ねぇ。魔法に勉強にダイエット、それ以外にもあるかな?

 これに9月からの四ヶ月で間に合う? ……ってあれ?


 これを今の二月からゲーム開始の9月まで必死にパラメーター上げに取り組んでMAX近くまで上げたらどうなるのかしら?

 本編をやっていない私には何のパラメーターの項目があってどのくらいの数字が必要なのかわからないけど、令嬢に必要そうな項目全部をMAXまで上げればいいんじゃないかしら? 大は小を兼ねるというものね。

 つまり今から聖夜までの約十ヶ月死ぬ気でがんばれば、推しとの砂糖生活が待っているのよ。いける……いけるわ! 


 塩対応メンズども! 首を洗って待っていなさい!

 ふくよかさんが目のもの見せて、窮鼠猫を噛むを実現してあげるわ! 元喪女に刮目せよ!

 私は決意を固めて最後のマドレーヌをおもむろに掴んでそのまま咀嚼して飲み込んだ。


 あー、マドレーヌおいしい。しみるー。

 ……しかし、ダイエットかあ。私は食べるのが好きだし、これが地味に一番つらいな。

 料理長が作ってくれた渾身のマドレーヌがのっているはずの皿をチラリと見る。


 あれ? 確か最初はマドレーヌが山ほどあったよね。なんでカケラしか残っていないの? ……あ、そうか! 妖精が食べたのね。うんうんきっとそう。


 ……………………そんなわけない。食べたよ、私が食べた! おいしかったです!

 現実を直視した私はさぁって顔を青くさせて、慌てて自分のお腹をつまんだ。

 これで何キロカロリーになったの? それを燃焼させるのにどのくらいの運動が必要なの? 確実に後日この代償は払わされるわ。


 ふぅ、とりあえず落ち着こう。食べてしまったものはしょうがない。明日からダイエットに励めばいいわ。

 明日には明日の風が吹くわ。そう思いながら窓を全開にしてその日を過ごした。


 びゅうっと雪が吹き込んできて体が冷えたのか翌日風邪をひいた。両親とお兄様はまた激怒して、自分で窓を開けるのは禁止になったんだけど……。理不尽だと思う。

   


♢ ♢ ♢



 一週間後、風邪から全快した私は鏡を見て驚いた。

 ――痩せてる。たぶん、ちょっとだけ。

「風邪ダイエットね! 効果はてきめんよ!」とお母様に言ったらため息をつかれて一時間お説教された。


 そこから気を取り直して私は家庭教師と共に勉強のカリキュラムをくんだ。

 まずは、語学や文学、歴史や地理、政治などなど。

 ふふん! これでも女子大生やっていたわけだし、勉強のコツはわかってます!


 勉強おもしろいーーーー!


 ヒロイン脳は簡単に知識を吸収していくから、食事の時間を惜しんで勉強をしたわ。

 あっという間に家庭教師が教えることはないくらいの高水準となって家庭教師は度肝を抜かしていた。

 まさか二ヶ月で五ヶ国語を操りながら各国の情勢を話してくるとは思わなかったみたい。

「なんで今までやらなかったんですか!?」って涙目で言われてもね。没落や過酷な死の可能性があるなんて知らなかったし……しょうがないですね。


 そして一番の辛さを予想していたダイエットといえば、勉強に夢中になった結果かしらね。食事量が減ってバランスのいい食事と、ダンスや社交術のハードなレッスン、しっかりとした運動とストレッチでどんどん痩せていった。

 お菓子はやめるべきなんだろうけど無理だったので、料理長にお願いして砂糖控えめのゼリーに変えてもらった。


 マナー教育を受け持ってくれたのは淑女として社交界でも有名なお兄様の妻のお義姉様よ。

 この方は他国の元侯爵令嬢で、私が公爵令嬢なのに食べてばかりで何もしないって毛嫌いしていたの。そのせいで私を溺愛するお兄様との関係は最悪だったんだけど、お義姉様にマナーを教わり始めてから、お義姉様の完璧っぷりをお兄様に布教していたら、お二人は熱をおび出し始め、今ではお兄様はお義姉様ファーストになったわ。

 

 うん、家庭円満なほうがいいよね、それにお義姉様は素敵な方だし、妹の方を溺愛するほうが異常よ。

 そんなこんなでお義姉様とは何でも相談できる仲になった。

 最初は『クリスティナ様』って名前で呼んでいたのだけど愛称の『ティナお義姉様』ってお呼びしたら嬉しそうだったからそれが定着したのよ。

 追随するようにグウェンお兄様も『ティナ』って呼び始めたわ。


 最初はすぐ体勢を崩してしまってできなかったカーテシーは、今では体重も減って体幹も鍛えられたから完璧にできるし、お義姉様にも褒められる。

 そんな私たちを見てお兄様が私に嫉妬するのはいかがなものでしょうか。

 でもお義姉様が楽しそうだからいいか、いい笑顔で笑っていらっしゃるし。


 そしてダイエットよりも力を入れる必要があったのは、実は『魔法』だった。

魔法と恋と勉強……これはジャンルにも書いてあるし必須だと思う。多分魔法研究家系の赤のレグルスを攻略するのに必要になるはず。


 この世界の魔法は全ての人が使えるわけじゃないし、その中でも固有魔法を持つ人間はかなりレアだった。

 だけど、私は『物質の結晶化』という固有魔法持ち。

 この能力は適正が低ければ、あらゆる物質を凝縮して結晶化、つまりは魔石ができるってだけなんだけど。


 これがヒロイン……つまり私の場合は、適正がとんでもなく高いから、どんなものでも結晶化して無力化してしまうし、それを反転させて攻撃転化もできる。なんならその中の効果だけを抽出できたり、反対にストックもできるから、どんな時でも治癒もできちゃう。


 つまり、完全チート能力。

 あらゆる物質なところもキモで全属性として扱われるレア中のレア、大当たりよ。

 本来の属性は……なんだったかしら。


 でもサボりにサボってた私は、暴発の危険性もあるから超初級編から始めた。


 魔法って楽しいーーー!


 結果、ギュンギュン全属性魔法を習得していったわ。もうなんでもござれよ! 地味に雨や雪が振っても、結晶化で濡れなくなったのがうれしい。

 そして、この国で魔法を人前で使用するには資格がもとめられる。つまり私もこの資格を取得する必要があった。そうしないと魔法家系のレグルスを攻略できないからね。

 資格はS級が最上位で、A、B、Cとなり、Dが最下位クラス。一番下から受けるのではなく、本人の魔法スキルによって初めから上位クラスになることもあるが、その試験官が所有するクラス以上に認定されることはない。


 不正あるんじゃ?と思うけど、不正をすれば資格剥奪になるからそれはないんだって。魔法士は魔法を使うことに誇りをもつからありえないそう。うーん、すごい。


 認定試験受けたよね、もちろん。そして試験官はS級を持つ魔法師団長のリコルディエ侯爵が来たよ。つまりレグルスパパ。

 この人、昔から私の固有魔法が大好きな人で、本人が無理言って意気揚々とこんな遠い我がリリーディアン公爵家の領地にやってきたよ。

 

 結果、文句なしのS級取得。いつでもどこでも魔法を使えるようになったよ!

 レグルスパパは王都に来たら、我が家にも遊びに来てねと強く私の手を握りしめてから、王都に帰っていった。

 お兄様は「侯爵直々にくるとは思わなかったよ、せいぜい副団長かなぁと思ってた」といってましたが、絶対この人のことだからわかってたはずです。

 まぁ、でもいいです。レグルスパパのおかげでS級がとれましたし。

 

 その後この結晶化という能力と前世知識からの発想を掛け合わせて便利な魔道具を作り出していった。


 魔道具サイコーーーー!


 魔道具づくりは前世にドハマりしたミニ四駆みたいで本当に楽しい。これは今世での私の趣味として続けていきましょう。趣味と得意なことが一致するミラクルが起きたわ!


 それで、魔道具をポンポン作っていったので、ただでさえこの領地は潤っているのにさらに潤う結果となった。まぁ便利になることはいいことよね。

 でもお父様にはこれを機にって張り切って、領地経営のイロハを叩き込んできたので困ってしまう。「もはや令嬢教育ではなく後継者教育では?」と言いたい。

 

 お母様には芸術の造詣が深いお方なので、芸術方面の師事を仰いだ。

 いつもは穏やかで私を溺愛してくれるお母様なのだが、芸術に関しては全くの容赦もなく平たく言えば鬼だった。それについていくのが最初は精一杯だったけど、今では美術の講評を垂れながら超絶技巧曲だって軽く弾けるわ。


 時間が空いた時は気分転換としてお兄様にチェスに付き合ってもらった。

 お兄様はお母様似だと痛感した。彼はチェスの鬼だった。お義姉様の次に溺愛しているはずの私に容赦ないテクニックを伝授し要求してきた。

 お義姉様も「もうそのくらいで……」とおっしゃってくださったけれど、鬼は降臨したままだった。おかげで今ではお兄様を軽く凌駕するチェスマスターだ。


 結論……ヒロインチートはえげつなかった。

 何をやっても簡単に覚えられるし、実践できるし、体重が落ちる。しかも元々は美少女。


 そのおかげで私はいまや身長162センチ、48キロのかなりスタイルのいい、あらゆる教育は詰め込まれ、機知に富んだ会話もお手の物な銀髪色白の『完璧美少女』となっていた。


 攻略に必要なステータスが何なのかはわからないけれど、何が来ても大丈夫なんじゃないかしら。あとはゲームの開始を待つだけ……いえいえ慢心せず、ギリギリまでパラメーター上げよ。




 両親とお兄様、お義姉様に英才教育を詰め込まれた私は、9月の学園入学の受験のためお兄様夫妻とともに領地を旅立った――。

 気分は、小さな村を旅立つ勇者みたいな感じだ。

 公爵家の皆様! ヒロイン・シエラは実家の没落を防ぎつつ、将来のラブラブ砂糖生活のため頑張ります! いままでの苦労を思うと涙が出そうだった。


 お兄様とお義姉様は狭い馬車の中で、妹が目の前にいるのにも関わらずいちゃついてるけど、賢い妹は見ない振りが得意です。お任せあれ!

 とりあえず結晶化の魔法でロマンティックな光でも散らしておきましょう。背景に徹するのがここでの最適解です……!



 王都到着後――。

 午前中に到着して午後から受験した入学試験は、次席だった。

 あの二人を見ない振りで疲れ果て、途中で寝てしまったことが原因だろう。

 その次席という結果がこれからの学園生活において波乱を生み出すことを、このときの私は知らなかったのである。


 できることは全部してきたわ。

 あとは9月3日のゲーム開始の入学式からが勝負よ。

 推しの『暴食』解禁まで突き進むわ――。


ここでプロローグは終わり四人の攻略に入っていきます。

レグルス→パーヴィス→セイル→ゴーランドと順番にスポットを当てて個別ルートとして描いていきます。

時系列順ではないのでご了承ください。

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