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推しとの激甘生活を目指していたら、塩対応攻略対象たちに溺愛されていました  作者: 水無月傾
紫の藤の章   〜学園祭

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20/24

02-06 【好感度34】カルテットEXって何ですか?

 次の土曜日に大図書館で会ったこの人は、本当にイステリア公爵令息だろうか。

 少し高揚した様子の彼は開口一番にこう言ってきた。


「リリーディアン公爵令嬢。約束のものを持ってきましたよ。この私が一週間考え抜いたものです。いくらあなたでも難しいことでしょう」


 この人、本当に四色問題を持ってきたよ。私が持ってきた問題の三倍は細かいものを。

 暇人なの? いや、そんなことないわよね。


 先日まで生徒会長であるゴーランド殿下の『学園祭をチェス展示で盛り上げようぜ』な企画を立てたために学園内は意気消沈していた。

 私はゴーランド殿下の持つ『チェス馬鹿』スキルが暴走してると思っていたのだけど、それを私がなんとか諌めることに昨日成功した。


 そして本日、めでたくゴーランド殿下は撤回して普通の学園祭が開催できることとなったのだ。

 つまり、この人も殿下の側近で生徒会副会長として大いに巻き込まれたはずよね? なんで四色問題作ってるの? そんな暇あった? 本当にこの人謎すぎる。


「ありがとうございます。殿下の学園祭の企画に翻弄されてお忙しかったのでは? お体は大丈夫ですか?」

「――ああ、あれですか。問題ありませんよ。ゴーランド殿下が突拍子もないことを発言するのはいつものことです。その身勝手な言葉に行動が影響されることは多少ありますが、それを叶えるよう調整するのが私の仕事ですからね」


 なんか、この人すごいこと言ってない? 要するに間違ったことでもねじ曲げて、それか正しいかのようにゴリ押しするってことよね。

 バッドエンドで私は『餓死』を迎えるっていうのは確実に『獄中死』だわ。この人は絶対白いものでも黒いと判断させるはずよ。入学式の日は疑惑として思っていたけど、今は確信してるわ。理不尽過ぎる。


「ただ、今回は殿下が意見を翻すのが早かったですね。大抵において考えを曲げることなどされない方なのですが。あなたは理由をご存じですか?」

「……なぜ、私にそんなことを聞くのですか?」


「おや? 私はただ世間話をしているだけですよ。昨日は生徒会がない日、つまりはあなたとの放課後チェスの時間だった。そこで殿下になにか取引を持ち込んだと見るのが妥当でしょう。それでなぜそうされたんですか? お答えください、リリーディアン公爵令嬢」


 迂闊に話していたらボロが出そう。『あなたがたと友好を築いて推しを堪能するためです★』は危険ワードよ。ここは何か逃げる方法……四色問題に話題を逸らしてもこの人は誤魔化せない。


「……学園祭で努力を重ねて何かを披露しようとしている方はたくさんいらっしゃいます。そんな方たちの努力を無に返すのは、忍びなかったのです。あとは学園は小さな社交界ですので、そこで反感を買うのは未来の王となる殿下の治世のため非効率です」


 どう?どう? ここで引いてー。お願いします、心に響いてください! 何故か目を見開きつつ、神妙な顔をしているイステリア公爵令息の顔を私はチラチラみる。


「なるほど、あなたは努力を軽くは見ていないようだ。それこそが正しき道です」

 うん、言ってることはよくわからないけど、満面の笑顔だし、切り抜けたみたい。


 それに彼と話していて思ったけど、この人は天才が努力に勝つのは許せない人なんだろう。だから最初の私はこの人の逆鱗にふれたのでしょうね。


「さて、イステリア公爵令息作成の問題ですが、これでいいですかね。」

 そう言って、私は綺麗に塗り分けたものを彼に提出した。彼のメガネは思いっきりズレたのだった。


「なぜ、解けたんですか? 私のカルテットEXは完璧だったはずです!」

 カ、カルテットEXってなに? もしかして四色問題のこと? もしかして変な名前をつけるご趣味が?

「カルテットEXでなく、四色問題でいいと思います。これは絶対に四色で塗ることは可能だと信じた結果ですよ」

「信じる……ですか。何の理論もありませんね。精神論です」

「それでいいんですよ。あぁ、そうだ。この問題の解き方わかりますか? 数学の問題なのですが……時間に都合があれば教えていただけませんか?」


 なんというか、複雑な応用問題は解けるのだけど、単純な問題は苦手なのよね。複雑に考えすぎる癖があるからかしらね。彼は私が見せた問題と私の間を繰り返し見始めて、最終的に呆れだした。


「…………なんでこんな初歩がわからないのに、こちらの応用問題が解けているんですか? あなたが解けているこの問題は去年の王宮の文官採用試験の類似問題ですよ」

「苦手なんです。私は物事を複雑に考えすぎる癖があるので」


 彼は大きなため息をついて、半目で私を眇めてきた。

「これだから天才は嫌です。……まぁでもあなたは思ったよりも努力はされている。淘汰されるべき人間だと言ったことは多少は取り消してあげてもいいですよ」

 そう言って照れたようにメガネを触った。


 なんか、これいい感じじゃない? 友好になったんじゃない? 私は頭の中でパレードが鳴り響いたような浮かれ具合だったわけなんだけど、ステータス画面は残酷にも白い藤だった。

 ちなみにバーコード横の数字は………うーん、34、かな?

 はぁ、推し、推しがー。いい加減もう上がってもよくない? あと数日で9月も終わるんですが!


 こうして私とイステリア公爵令息の土曜の放課後の勉強会は始まった。ちなみに『カルテットEX』もとい、四色問題を彼はもう持ってこなくなったわ。

 ちなみにイステリア公爵令息は、教えるのがすごく下手だったために、私は全く理解できずに終わった。

 この辺は彼は合理的ではないみたい。


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