01-12 憤怒幼馴染は守ってあげたい〈レグルス視点〉
赤の彼岸花―レグルス・リコルディエ Side
俺はあいつに八つ当たりして顔を合わせづらくなった翌日から学園の裏庭ではなく、体育館裏に変えた。殺風景だが仕方ない。
必死になって氷の華を作ろうとした。でも以前は氷の塊はできていたのに、今ではさっぱり出せない。 邸でも一人黙々と隠れるように鍛錬したが駄目だった。
シエラがいたときにはできたものを今はできない。それが悔しくて無茶を重ねていた自覚がある。
学園祭初日。本番は明日だ。明日シエラに会って謝ろう。そして参加は諦めると伝えよう。
そう思いながら見学してたゴーランドのチェス大会。
あいつ、何やってんだ? 周りの男どもはシエラにのぼせてるような顔をしてやがるし、ゴーランドはやってもらって当然って感じのいつもの顔だ。
セイル、お前なんであいつの隣にいるだけなんだ? 本当にあいつは癇に触る。シエラに寄るな、甘えるな。
――あ、あそこにいるのはあいつの義姉のクリスティナ夫人だな。壇上を熱心に見てはいるが、ここから見てもわかるくらい扇に力を入れすぎてへし折れそうだ……あ、折れた。
あいつ終わったな。自業自得だ、怒られてこい。話したこともないあいつの義姉をそっと心のなかで応援した。
――そして、魔法実演当日。
シエラが来るまで時間があったから鍛錬を重ねていたら、後ろからあいつの叫びが聞こえてきたて、驚いて本当に暴発するかと思った。
暴発しても治すから問題ないって言ってるが問題しかないだろ。
あいつの心配が嬉しかった。
そんで『火魔法極めれば?』っていう言葉は氷魔法に囚われていた俺にとっての救いだったし、認める最初の人間になるって言われたときは雷が落ちたかと思った。
…………………そうか。俺はこいつを自分のテリトリーに入れることを認めてる、のか。
ずっと女だというフィルターで見てきたけど、こいつはただの女じゃない。大事な幼馴染だ。
大事な幼馴染のあいつに治癒してもらってからずっと握られている手。あいつが気づいて外されたけど、ずっと握っていたかった俺は、自分の手をじっと見た。
ああ、そうか。俺は、シエラのことを…………守りたいんだ。
俺はこいつを守る。悪意や敵意、負の感情のあらゆるものからだ。
だがあいつはいらねぇっていってきた。幼馴染なんだし遠慮はいらないのにな。
なんか方針が決まったらスッキリした。きっと実演でもうまくいくだろ。なんかシエラの顔をみていると心臓がうるさいから、言いすがるあいつをおいていった。それでいま本番10分前を迎えた。
そこであったあいつはぷりぷり怒っていた。曰く何とかするけど事前に説明しろとのことだった。確かにそれは一理あるが……お前なら大丈夫だ。失敗したら二人で笑い合えばいい。
結果、成功した。
俺は氷の華は出さず、制御して自分の花紋でもある彼岸花を火魔法で花火として出した。
打ち合わせなしでの方向転換に一瞬驚きをみせたシエラだったが、満足そうに頷いた。
俺の出した花火をそのまま光に転化させて流星群にしていた。
やっぱり、こいつすげぇ。とっさに判断して、俺が予想もしてなかったようなものを出してきた。
まぁ、終わったあと凄い睨まれたが……うん、怒ってる顔が可愛いとか思う俺は重症だな。
「レグルス様素敵ー」
「さすがのリコルディエ侯爵家の嫡男だ! 素晴らしい魔法ではないか」
「これ全てレグルス様の魔法よね! すごく綺麗」
なんか勘違いしてないか? 俺がやったのは半分だけだ。後始末は全部シエラだぞ。
「なんかリリーディアン公爵令嬢がやったようにも見えたけど間違ってたのか」
「周りが言ってるんだからそうなんだろ」
「ま、どっちでもいいよな」
最初の声に後押しされるように、きちんと見えていたやつらもなぜか印象操作されていく。なんでそうなるんだよ!
はっきり言って今回凄かったのはアドリブで完璧に決めてきたシエラだ。
冷静に考えれば花火を出して、万が一にでも周囲にけが人が出たかもしれなかったのに、あいつはそれを安全なものに変えながら、ショーとして最高の形にさせた。
だが、周囲はシエラが何をしたのか全く理解してなかったために俺一人だけが囲まれて凄いと言われまくった。
俺が「ちげーよ、凄いのはシエラだ」と言ったら全員黙り込んだのには笑いそうになったが。
そして、シエラがいた方向を見たらシエラは消えていた。
「……は? なんで? あいつさっきまでここにいた、よな」
後夜祭が始まるまでに今日の協力のお礼をいいたかったし、普通はここで喜び合うシーンだろ!
あとそのまま後夜祭でも一緒に過ごしたかった。一緒にいて冷やかされたらあいつも可哀想だから曲の聞こえるところで踊ったり、話したりすればいいなんて考えた。
そんなこと期待しながら、あいつのいた方を振り返ったらいないとかないだろ。せめて一声かけるだろうが。そしたら、こいつら全員無視して追いかけたよ。あーくそ、目を離したことを後悔してるわ。……あいつ、本当になんなの?
ああ、その後は必死に探してたし、11月だってのに走り回って汗だくだよ!
でも必死にあちこち探してる最中に、いつもは寝てばかりで動かないセイルと鉢合うなんて思わなかった。
「――セイル? もう自由解散の時間だろ? なんで、ここにいるんだよ。もう委員会の仕事はないんだし、帰れば?」
今思えば危機感を持っていたんだろう。なぜかセイルをこの場から遠ざけたかった。
そしてセイルは振り返ってこっちを見た。
「…………関係ない。……シエラ、探してる……」
「あ?」
俺は知らなかった。セイルもシエラを特別な目で見始めていることを――。
そして他にも虎視眈々と狙う男たちがいることに気づきもしなかった。
♢ ♢ ♢
――リンッ
―――赤の彼岸花/レグルス・リコルディエ
好感度 60+/100(現時点での限界突破)
11月4日 学園祭イベント成功
聖夜のダンスパーティーイベントまであと51日……
――……リリンッ
赤の彼岸花ことレグルス編ここで一旦終わりになります。お読みいただきありがとうございました!
次からは宰相子息の紫のパーヴィスの攻略に移ります。
この話は同じ時間枠で四人の攻略対象たちをヒロインのシエラは攻略していっているので、時間軸が入学式まで戻ります。
シエラは完全に孤立する原因となった曰く付きの男性に対してどう攻略していくことになりますので、読んでいただけると嬉しいです。
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