↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールで冷徹な『氷の令嬢』、なぜか俺の心の声(ダダ漏れ)だけは聞こえるらしい。  作者: わわわ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/43

第40話:氷の令嬢は言葉を信じたい

 「……今日、やる?」

 朝の昇降口で、上履きに履き替えながら美月が聞いてきた。


「やる。今日は、心の声に甘えない日」


 自分で提案したくせに、言ってから急に緊張する。

 普段なら内心で済ませることを、全部口に出す。

 思ったより難易度が高い。


 ◇


 一時間目の前。

 俺は席に着くなり、思ったことをそのまま言ってみた。


「えっと、美月。今日の髪、似合ってる」


 言えた。

 言えたけど、声が上ずってた。

 美月は耳まで赤くして、教科書で口元を隠す。


「……ありがとう」


 そのあと俺たちは、五分くらい目を合わせられなかった。


 昼休みには、逆パターンが起きる。

 弁当を開いた美月が、箸を持ったまま動かない。


「どうした?」

「……言う練習」


 美月は一度息を吸って、俺を見た。


「……今日、朝からちょっと寂しかった」

「……うまく話せるか、不安で」


 聞いた瞬間、胸が熱くなる。


「言ってくれてありがとう。俺も同じ」

「朝、変なこと言ったらどうしようって思ってた」


 美月は小さく頷いて、少し笑った。


「……じゃあ、成功」


 ◇


 午後。

 失敗もあった。


 俺が「平気」と言って全然平気じゃない顔をしたせいで、美月に即バレ。

 美月が「なんでもない」と言った五分後に、やっぱり「さっきの言い方、きつかったかも」と訂正。


 ぎこちない。

 でも、不思議と誤解は長引かなかった。

 その場で言葉にするから、修復が早い。


 放課後、駅までの道で俺は笑ってしまう。


「今日、会話量いつもの二倍じゃない?」

「……疲れた?」

「全然。むしろ、安心した」


 美月はマフラーを整えながら、ほっとした顔をした。


「……私も」


 ◇


 夜。

 通話をつないで、俺たちは“今日の良かった点”を一つずつ言い合った。


「俺から。美月が“寂しい”って言ってくれたの、すごく嬉しかった」

「……私は、春トくんが“ありがとう”をすぐ言ってくれたところ」


 数秒の沈黙。

 それは気まずい沈黙じゃなく、満足したあとに来る静かな間だった。


「心の声、今日はあんまり安定しなかったね」

 俺が言うと、美月はやわらかく返す。


「……うん。でも、前より怖くない」

「……聞こえなくても、言葉が届くって分かったから」


 通話を切る直前、美月が小さく付け足した。


「……明日も、続けよう」


「もちろん」


 超能力はまだ不安定だ。

 それでも、俺たちの関係は少しだけ安定した。

 頼る軸が、ひとつ増えたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。