↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールで冷徹な『氷の令嬢』、なぜか俺の心の声(ダダ漏れ)だけは聞こえるらしい。  作者: わわわ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/37

第23話:氷の令嬢は守られたい

 文化祭二日目。

 今日はコスプレ喫茶のシフトが午前中だけなので、午後は美月と二人で文化祭を回ることになっていた。

 一応、『秘密の交際』中なので、あまり派手に動かない予定だったが……。


「……目立つな」

「……うん」


 美月は昨日の『猫耳メイド』の余韻もあってか、私服に着替えても注目の的だった。

 廊下を歩くだけで、周囲の視線が突き刺さる。

 その視線には、羨望、憧れ、そして――不躾な欲望も混じっていた。


「ねえねえ、君! 2-3の猫耳の子だよね?」

「めっちゃ可愛かったよー! 写真撮ろうぜ!」


 渡り廊下で人気が少なくなった瞬間、他校の制服を着たチャラそうな男子グループに囲まれた。

 3人組。みんなピアスやらネックレスやらで着飾っている。


「……」


 美月は瞬時に『氷の令嬢』モードに入った。

 冷ややかな視線で彼らを一瞥し、無視して通り過ぎようとする。


「あ、逃げんの? 冷てーなー」

「ID交換だけでいいからさー」


 一人の男が、美月の腕を掴もうとした。

 スッと美月が身を引くが、男はしつこく距離を詰める。


「……やめて」


 美月が小さく拒絶するが、男たちはニヤニヤして聞く耳を持たない。

 美月の肩が、小さく震えた。

 怖いのだ。いくら気丈に振る舞っていても、彼女はか弱い女の子なのだ。


(ふざけるな)


 俺の中で、何かが切れる音がした。

 秘密? 目立たない?

 そんなこと、知ったことか。


「嫌がってるんで、やめてもらえますか」


 俺は美月と男たちの間に割って入った。

 男が不機嫌そうに俺を睨みつける。


「あ? なんだお前。関係ねーだろ。彼氏気取りかよ」


 嘲笑うような言葉。

 俺は、美月を背に庇いながら、はっきりと告げた。


「気取りじゃないです」

「……彼氏ですけど、何か?」


 シン……と、その場が静まり返った。

 男たちが目を丸くする。

 背後の美月が、息を呑む気配がした。


「は、はあ? こんな地味な奴が?」

「嘘だろ? 『氷の令嬢』だぞ?」


「嘘じゃないです。大事な彼女なんで、ちょっかい出すなら先生呼びますよ」


 俺がスマホを取り出すと、男たちは「チッ、しらけるわー」と捨て台詞を吐いて去っていった。

 彼らがいなくなると、再び静寂が戻る。

 いや、完全に静かではない。

 遠巻きに見ていたうちの学校の生徒たちが、ザワザワとし始めている。

 「聞いた?」「彼氏って言った?」「マジかよ……」


 やってしまった。

 完全に公開宣言してしまった。


「……春トくん」


 美月が俺の背中にしがみついてきた。

 振り返ると、彼女は目に涙を溜めて、俺を見上げていた。


「……怖かった。……守ってくれて、ありがとう」


「うん、遅くなってごめん」


 俺は彼女の頭をポンポンと撫でた。

 周囲の視線は痛いほど感じる。

 明日からどうなるか分からない。

 でも、彼女の震えが止まるなら、それでいいと思った。


「……バレちゃったけど、まあいいか」


 俺が苦笑すると、美月は俺の胸に顔を埋めて、小さく頷いた。


「……うん。……春トくんの彼女だって、みんなに知られるの……悪くない」


 その言葉は、どんなトラブルよりも俺を強くしてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。