第18話:氷の令嬢は水着を見せたい
夏休みの定番イベントといえば、プールだ。
俺と美月は、市民プールに来ていた。
とはいっても、ただ泳ぎに来たわけではない。
(やばい、緊張してきた……)
俺は更衣室の前で待機しながら、心臓のドラムを鳴らしていた。
水着だ。
彼女の水着姿を、これから拝むことになるのだ。
刺激強すぎて倒れないだろうか。
「……春トくん」
控えめな声に振り向いた瞬間、俺の視界は白に染まった。
純白のビキニに、腰にはパレオを巻いた美月さん。
元々色白な肌が、太陽の下で発光しているかのように眩しい。
スレンダーだけど出るところは出ている、完璧なスタイル。
濡れたように艶めく黒髪。
(ッッッ!!! 白水着!! 眩しい! まぶしすぎる! 夏よありがとう!!)
(何その透明感! 水の精霊かな!? 同じ人類とは思えん神々しさだわ!)
俺が心の中で五体投地して感謝を捧げていると、美月さんはパレオの裾を握りしめ、恥ずかしそうに身をよじった。
「……見すぎ」
「ご、ごめん! あまりにも綺麗すぎて……」
俺の心の声(と直球の褒め言葉)に、彼女は耳まで真っ赤になった。
しかし、周囲の反応は俺だけではなかった。
プールサイドにいる男たちの視線が、一斉に美月さんに集中しているのだ。
「うお、あの子可愛くね?」「モデルか?」「すげえ美人……」というヒソヒソ声が聞こえてくる。
(……なんか、嫌だな)
俺の中で、黒い感情――独占欲がムクムクと湧き上がってきた。
こんな無防備な姿、俺以外の男に見せたくない。
「……美月、何か羽織る? ラッシュガードとか」
「え?」
「いや、その……みんな見てるし。心配だから」
俺が渋い顔で言うと、美月さんはキョトンとした後、嬉しそうに微笑んだ。
「……妬いてるの?」
「う……」
「……平気。……春トくんに、見てほしいから。……脱いだのに」
小悪魔な台詞に、俺は撃沈した。
もう好きにしてくれ。俺が全力でガードするから。
プールに入ると、水の冷たさが心地よかった。
俺たちは浮き輪につかまって、プカプカと波のプールを漂った。
水の中だと、距離感がさらに縮まる気がする。
美月さんの足が、水中で俺の足に触れる。
「……冷たくて気持ちいい」
「だねー。来てよかった」
俺たちは手を繋いで、ただ流されるままに過ごした。
その後、ウォータースライダーにも挑戦した。
二人乗りのボートで滑り降りるやつだ。
密着度はMAX。
俺は絶叫し、美月さんは隣で楽しそうに笑っていた(意外と絶叫系いける口らしい)。
休憩時間。
プールサイドで並んでアイスを食べた。
少し冷えた体を寄せ合って、温め合う。
「……来年も、また来ようね」
美月さんが、アイスの棒を口にくわえたまま言った。
来年。
その言葉が、二人の未来を約束してくれているようで、俺は胸が温かくなった。
「うん、絶対来よう」
夕暮れのプールサイド。
俺たちは溶けかけたアイスよりも甘い時間を過ごした。




