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クールで冷徹な『氷の令嬢』、なぜか俺の心の声(ダダ漏れ)だけは聞こえるらしい。  作者: わわわ


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第15話:氷の令嬢は想いを伝えたい

 神社の裏手にある高台は、人気もなく静まり返っていた。

 眼下には祭りの明かりが広がり、遠くから太鼓の音が微かに聞こえる。

 俺と冬月さんは、古びたベンチに並んで座っていた。


「……静かだね」

「……ん」


 冬月さんの横顔が、月明かりに照らされて白い。

 その美しさに、俺は改めて息を呑む。

 彼女とこうして二人きりで、夏祭りに来ている。

 夢のような時間だ。


 ヒュルルル……ドン!


 夜空に大輪の花が咲いた。

 花火大会が始まったのだ。

 次々と打ち上がる色とりどりの光が、冬月さんの瞳に映り込む。


「……綺麗」


 冬月さんがぽつりと呟いた。

 俺は彼女の横顔を見つめたまま、心の中で思った。


(ああ、綺麗だ……。花火よりも、星空よりも。冬月さんの方が、ずっと綺麗だ)


 その想いは、自然と溢れ出て止まらなかった。


(好きだ。冬月さんが、大好きだ。初めて会った時からずっと、この気持ちは変わらない)

(冷たいって言われてても、本当は優しくて、可愛くて……そんな冬月さんが、誰よりも大切だ)


 俺の心臓がうるさいほど脈打つ。

 このまま、ただのクラスメイトとして隣にいるだけじゃ嫌だ。

 ちゃんと言葉にして、伝えたい。


(言いたい。声に出して、ちゃんと伝えたい。……好きですって)

(もし断られたら……なんて、今は考えたくない。この気持ちだけは、嘘偽りない本物だから)


 俺が心の中で決意を固めた、その時だった。

 隣の冬月さんが、ふと震えだした。

 そして、目元を手で拭いながら、小さな声を漏らした。


「……ずるい」


「え?」


 冬月さんはゆっくりとこちらを向いた。

 その瞳は潤んでいて、頬には涙が伝っていた。


「……そんなふうに、まっすぐ言われたら……私だって、我慢できないじゃない」


 彼女は俺の心の声を聞いていたのだ。

 全部、筒抜けだったのだ。


「……春トくん」


 冬月さんが、俺の名前を呼ぶ。

 真っ直ぐな瞳が、俺を捉える。


「……私、春トくんのことが……好き」


 ドーン! と大きな花火が打ち上がった。

 その轟音にかき消されることなく、彼女の声は俺の心に深く突き刺さった。


「!?」


 思考が停止する。

 え? 今、なんて?

 好き? 冬月さんが? 俺を?


 混乱する俺を見て、冬月さんは泣き笑いのような表情で続けた。


「……ずっと前から、好きだった。……心の声が聞こえる前から、ずっと」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の視界も滲んだ。

 両片思いだったんだ。

 ずっと、通じ合っていたんだ。


 俺は震える声で、必死に言葉を絞り出した。


「お、俺も! 俺も冬月さんが好きです! 大好きです!」


 俺の叫びに、冬月さんは花が咲いたように微笑んだ。

 それは今まで見た中で、一番美しい笑顔だった。


 空には、祝福するように連発花火が打ち上がっている。

 俺たちは自然と手を重ね合わせ、その光景を見上げた。

 繋いだ手の温もりだけが、これが夢ではないことを教えてくれていた。

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