↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールで冷徹な『氷の令嬢』、なぜか俺の心の声(ダダ漏れ)だけは聞こえるらしい。  作者: わわわ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/40

第13話:氷の令嬢は浴衣を選んでほしい

 夏休み初日。

 蝉の声がうるさいほど響く中、俺、春トはスマホの画面を凝視していた。

 そこには、信じられないメッセージが表示されていた。


『明日、暇? 付き合ってほしい場所があるの』


 送信者は、『冬月さん』。

 クラスの連絡網で交換しただけで、これまで一度も使われたことのなかったトークルームに、奇跡が舞い降りた。


「デートだ……! これ、デートの誘いだよね!?」


 俺はベッドの上でガッツポーズを決めた。


 ◇


 翌日。

 駅前のショッピングモールにある待ち合わせ場所。

 俺は15分前に到着していたが、ソワソワして落ち着かなかった。

 冬月さんはどんな格好で来るんだろう。

 普段は制服かジャージしか見たことないし……。


「……お待たせ」


 涼やかな声に振り向いた瞬間、俺は時が止まった感覚に陥った。

 そこにいたのは、淡いブルーのワンピースを着た冬月さんだった。

 ふわりとしたスカートの裾。

 頭には、白い麦わら帽子。

 制服の時とはまた違う、清楚で可憐なお嬢様スタイルだ。


(うわあああああ! 私服キターーー! ワンピース! 麦わら帽子! 似合いすぎでしょ!)

(何その避暑地の令嬢感! ここだけ軽井沢ですか!? 爽やかすぎて熱中症も治るわ!)


 俺が心の中で絶叫しながら拝んでいると、冬月さんは麦わら帽子の縁を指で押さえ、恥ずかしそうに頬を染めた。


「……変、かな?」


「全然! めちゃくちゃ似合ってる! むしろ可愛すぎて直視できないレベルだよ!」


 俺が本音をぶちまけると、彼女は「……そ。……なら、いいけど」と嬉しそうに微笑んだ。

 

 二人並んでモール内を歩く。

 周囲の視線が痛いほど刺さるが、今日の俺は誇らしい気分だった。

 目的地は、老舗の呉服屋だった。


「……浴衣。……選んで」


「え、俺が!?」


 冬月さんは陳列された色とりどりの浴衣を指差して言った。


「……春トくんが、いいと思うやつがいい」


(マジか……! 俺の好みで選んでいいのか!? 責任重大すぎるだろ!)

(でも、冬月さんが着る浴衣を選べるなんて……前世で国を救ったご褒美か何か?)


 俺は真剣な眼差しで浴衣を選び始めた。

 シックな紺色もいい。大人っぽさが引き立つ。

 可愛らしいピンクもいい。ギャップ萌えが狙える。

 白地に金魚も捨てがたい。


 いくつか当ててみて、最後に手に取ったのは、白地に淡い朝顔が描かれた涼しげな一着だった。


(これだ……。派手すぎず、でも華やかで。冬月さんの透明感を一番引き立てる気がする)


「……これ、どうかな。朝顔の柄。冬月さんの雰囲気にすごく合ってると思う」


 俺が差し出すと、冬月さんは鏡の前でそれを体に当てた。

 そして、鏡越しに俺と目を合わせ、ふわりと笑った。


(っっっ!! 鏡越しの上目遣いとか反則だって! 心臓止まる!)


「……うん。私も、これが好き」


 彼女は愛おしそうに布地を撫でた。


「……春トくんが選んでくれたから、これが一番」


 ボソッと言われたその言葉に、俺は完全にノックアウトされた。


 会計を済ませて店の外に出ると、夕暮れ時になっていた。

 別れ際、冬月さんは紙袋を大事そうに抱えながら言った。


「……これ着ていくから」


「え?」


「……来週の、夏祭り。……空けといて」


 それは、決定的な約束だった。

 俺は天にも昇る気持ちで、「喜んで!」と即答した。

 夏祭りが、待ち遠しくてたまらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。